久保陽子も犬神明もアダルトが先! ……これを書いてから、ずいぶんと時間が経ってしまいましたが、ようやっと『真幻魔大戦』(以下「真」)では「スリーピング・ビューティー」、『幻魔大戦』(以下「無印」)では3巻までを読み終えました。初出を以下に列記しておきます。例によっておかもとさんのヒライストライブラリーを参考にさせていただきました。毎度お世話になっております。◇ビッグ・プロローグ SFアドベンチャー1979年8月号◇サディスティック・サイキック・タイガー SFアドベンチャー1979年10月号◇スーパー・バロック・プリンセス SFアドベンチャー1979年12月号◆幻魔大戦 1 幻魔宇宙 野性時代1979年12月号◇ザ・ESPファミリー SFアドベンチャー1980年2月号◆幻魔大戦 2 超戦士 野性時代1980年2月号◇スリーピング・ビューティー SFアドベンチャー1980年4月号◆幻魔大戦 3 最初の戦闘 野性時代1980年4月号「スリーピング・ビューティー」で久保陽子が全幻魔シリーズを通じて初登場します。同じ頃、無印では、ニューヨークで幻魔との戦いを繰り広げていました。ワタシはこのことを以前に人づてに知ったのですが、驚きましたね。GENKENメンバーって、みんな無印で生まれたもの。それが大人になって、真に再登場したものと、もう頭から思い込んでいましたから。事実はそうではなく、真で生まれた久保陽子というキャラ、東丈の高校時代からの同窓生という設定を無印に反映することで、無印ワールドは漫画版『幻魔大戦』(以下「漫画版」)とは大きく軌道を変えた、というのがそもそもの順序だったのです。余談ですが、それ以前に無印に“クェーサー”を持ち込むことで、ザメディとの戦闘以後の展開は漫画版から一変します。そう、無印はなにも、4巻から急に変わったわけではないのです。真の存在が、無印を変えた――。これは皮肉というか、面白いですね。漫画版の「やり直し」が真だった、そもそもは。で、真が小説で、その話の起点が漫画のままじゃあアレだから、小説にしようと。それが『デスハンター』を小説化して『死霊狩り』にしたようなストレートなノベライズだったら、話はシンプルだった。ところが、小説の無印は質・量ともに真すら凌ぐ存在感をもった物語として、独自の成長を遂げてゆく。そのきっかけが、真の要素を持ち込んだ云わば化学反応にあったのですから。でも、こればっかりはオンタイムで掲載誌を読んでなくてよかったと、ちょっと胸をなでおろしています。だってもう完全に、無印での久保陽子のその後をカンニングするようなものじゃないですか。あの当時、掲載誌を出た順に読んだ読者は、無印に久保陽子が登場したとき、どういう気持ちを抱いたのでしょうね。そんな人にもし会えたら、ぜひお伺いしてみたいものです。もうあからさまと云っていい久保陽子の好意に気付かない青年・東丈の鈍感ぶりは犯罪レベルです。三千子姉さん、叱ってください。もちろん、自分に都合の良い関係を維持するために、無意識に気付かないフリをしているだけなのですが。東丈を前にしているだけで、連鎖的にヘマをやらかしてしまう。なんとも可愛らしい、いいコなのですよ。ただただ、恋した相手が悪かった。もっと普通の男を好きになっていれば、幸せな家庭を持ち、幸せな人生を送れるはずだったのですが。東丈のような特別な人間を自分だけのものにしようとした愚かさ、分不相応。そう云ってしまえば、それまでです。けれども、そうした成り行き、関係、ポジションそのものが、彼女のになう役割でもあります。それはおそらく、作者にさえはかり知れぬものなのでしょう。彼女もまた平凡な人間なんかでは決してありません。その存在の大きさは、井沢郁江すら凌ぐものです。云ってしまえば、彼女が無印を漫画版から変えた。――「妄想幻魔大戦」といった造語に見られる世間的「幻魔大戦」のイメージ――(無印)幻魔大戦を幻魔大戦たらしめたのが、久保陽子だと云っても過言ではありません。東丈を慕う可憐な娘は、やがて彼を呪う魔女へと変貌してゆく。怖い怖い女の妄執。しかし、この問題は(ワタシの記憶が正しければ)後期ゆるふわひらりんの第三次幻魔大戦でもついに触れることはありませんでした。そのことそのものが、久保陽子問題の難しさ、闇の深さを物語っているように思えてなりません。 言霊を引用 Re: 久保陽子が「幻魔」を変えた! 〜真幻魔大戦「スリーピング・ビューティー」 - Name: DONDEN No.1547 - 2017/12/29(Fri) 19:06:13 この件で一点指摘しておきますと、旧デジタル版の『幻魔大戦』4巻コメントに、以下のものがあります。東丈が中学生時代に、三島由紀夫ばりの習作を書いた、ということから真幻魔大戦においての青年作家東丈が存在することになった。才能はどの程度あったのか、定かではない。たぶんカルト作家ではなかっただろうか。これを読むと実際の執筆での初登場は、無印が先の可能性もあるのではないでしょうか。ただ4巻の久保陽子の諸々の描写(家系的にヤバ目な能力持ちで母親は某宗教団体所属など)の詳細さからすると、これは登場の後先云々というより、最初から“魔女化”して対峙する構想があって幻魔宇宙に投入された人物だったのでは、とも思います。その辺は4巻限りの“トンカチの郁江”という井沢郁江のあだ名が、後から読み返すと少々浮いた印象なのと対称的です。あと“魔女のカルマ”について新幻魔大戦のシルヴァーナとの関連を匂わせたことも、どこかの後書き(全集か?)で書いていたような覚えもあるのですが… Re: 久保陽子が「幻魔」を変えた! 〜真幻魔大戦「スリーピング・ビューティー」 - Name: カナメ No.1548 - 2017/12/31(Sun) 13:56:47 >おかもとさんトリオ・ザ・ヨーコさんですね。なんかヨーコさんにうらみでもあったんでしょうかね。>DONDENさん貴重なご指摘、ありがとうございます!実際の執筆時期は闇の中だと思っていたのですが、こういう明確な根拠は気持ちがいいですね。ワタシも旧版の電子書籍を確かめました。いい子ぶってあんなことを云いましたが、やはり新版電子書籍であとがき+コメントコンプリートをやめたことについては、e文庫のなかのひとにおうらみ申し上げたい。久保陽子が『真幻魔大戦』にも再登場することで、安堵した読者も多いようですが、ここでも彼女は淫霊幻魔に捕らえられてしまう。『幻魔大戦 第三集』(徳間書店) 東丈の失踪 あとがきIIIちょうど帰省してまして、蔵書を読み返していましたら、こんな記述も見つけました。無印幻魔大戦4巻パートの執筆が、真幻魔大戦・青年東丈の登場に先行していたとすると、“クェーサー”も“ジョン・カトー”も無印幻魔大戦発である可能性が高そうです。そうなると、無印幻魔大戦がザメディ戦以降、ああいう舵を切ったのは、まさに言霊使いとしての直観とでも云うほかなそうですなあ。
この件で一点指摘しておきますと、旧デジタル版の『幻魔大戦』4巻コメントに、以下のものがあります。東丈が中学生時代に、三島由紀夫ばりの習作を書いた、ということから真幻魔大戦においての青年作家東丈が存在することになった。才能はどの程度あったのか、定かではない。たぶんカルト作家ではなかっただろうか。これを読むと実際の執筆での初登場は、無印が先の可能性もあるのではないでしょうか。ただ4巻の久保陽子の諸々の描写(家系的にヤバ目な能力持ちで母親は某宗教団体所属など)の詳細さからすると、これは登場の後先云々というより、最初から“魔女化”して対峙する構想があって幻魔宇宙に投入された人物だったのでは、とも思います。その辺は4巻限りの“トンカチの郁江”という井沢郁江のあだ名が、後から読み返すと少々浮いた印象なのと対称的です。あと“魔女のカルマ”について新幻魔大戦のシルヴァーナとの関連を匂わせたことも、どこかの後書き(全集か?)で書いていたような覚えもあるのですが…
>おかもとさんトリオ・ザ・ヨーコさんですね。なんかヨーコさんにうらみでもあったんでしょうかね。>DONDENさん貴重なご指摘、ありがとうございます!実際の執筆時期は闇の中だと思っていたのですが、こういう明確な根拠は気持ちがいいですね。ワタシも旧版の電子書籍を確かめました。いい子ぶってあんなことを云いましたが、やはり新版電子書籍であとがき+コメントコンプリートをやめたことについては、e文庫のなかのひとにおうらみ申し上げたい。久保陽子が『真幻魔大戦』にも再登場することで、安堵した読者も多いようですが、ここでも彼女は淫霊幻魔に捕らえられてしまう。『幻魔大戦 第三集』(徳間書店) 東丈の失踪 あとがきIIIちょうど帰省してまして、蔵書を読み返していましたら、こんな記述も見つけました。無印幻魔大戦4巻パートの執筆が、真幻魔大戦・青年東丈の登場に先行していたとすると、“クェーサー”も“ジョン・カトー”も無印幻魔大戦発である可能性が高そうです。そうなると、無印幻魔大戦がザメディ戦以降、ああいう舵を切ったのは、まさに言霊使いとしての直観とでも云うほかなそうですなあ。