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クッキーを食す / 呪文

幻魔大戦へのエクササイズ!?〜人狼天使 第1部 - Name: カナメ Mail - Home No.1517 - 2017/05/21(Sun) 12:14:38
宗教とカリスマとの出逢い。それは平井和正の作家人生にあって、必然であり宿命であったように思います。
シニカルを気取るのでなく、暗闇を彷徨うように「人類ダメ小説」を書いてきた平井和正にとり、「人類はダメじゃないかもしれない」という光明をそこに見出すのは、路上駐車を繰り返すドライバーがいつか反則キップを切られるのと同じぐらい、当然の成り行きであるからです。もともと宗教にハマるべくしてハマる性向の持ち主だったのです。
もっとも、関与した現実の宗教とカリスマに対しては、こんなものにどっぷり浸かってる人間はもっとダメだった、と思い知る苦い失意に終わり、自らの夢や理想を筆に託す作家稼業に再び戻ってきたことは、読者には幸いでした。作者たる己れの自我を切り取った血のしたたるレアステーキのような(“活け造り”とどちらがいいか迷いましたが、まあ多少は火を入れてるだろうとこちらにしました)小説をさらに読めることになったのですから。たとえ劇的な心境の変化があり、作家として変貌を遂げていたとしても。

おりしも、アダルトで『人狼戦線』('74年)を、ヤングで『狼のレクイエム』('75年)を書き上げており、作家的な転機でもありました。これらの作品はエンタメ小説としてのひとつの到達点であって、同じ路線を続けたとしても、これ以上のものを書くのは困難だったでしょう。
よく平井和正は宗教にハマっておかしくなったなどと云われます。確かに『人狼白書』に見られる、シリーズさなかの路線変更はいかにも唐突に過ぎ、小説としては不細工と云わざるを得ません。また、犬神明の口、小説の場を借りた著者のお説教じゃないかと思える部分も随所に見受けられます。特に『ウルフガイ・イン・ソドム』で大天使が説く――しかも話の筋とは直接関わりがない――宗教的な真実なんて、まさに平井和正著「大天使ガブリエルの言霊」(霊言ではない、注意!)そのもの。
リアルの宗教観をいかにフィクションへ昇華するか、その部分でまだまだ加減がわからず、キリスト教の天使や悪魔がその名もズバリで直截に描写される。のちの幻魔大戦では、天使とは云わず「宇宙意識」と称したりして、このあたり随分と洗練されるのですけどね。
ワタシなんかはこの原液そのまんまのフレーバー、水や果汁で割らないどストレートの味わいも嫌いではないのですが、当時のファンの多くはむせかえったことでしょう。

でも、もし仮にそれまでのエンタメ路線を継続し、何ら自己変革も遂げることもなく、自己模倣に終始していたとしたら、それはそれで早晩作品はマンネリ化し、飽きられた挙句、「平井和正はあの頃がピークだった」なんて云われるのがオチだったのではないかと思うのです。
作家としての変化は必然であり、不可避だった。ですが、その変化をウルフガイに反映させたのは、のちに平井和正自身が語っているように、失敗だったのかもしれません。云ったところで詮ない結果論、歴史にifではありますが、この作家的変革期にスッパリ第二次幻魔大戦に移行していれば、読者の動揺はずっと少なかったでしょう。違う作品であれば、単に「好きではない」「趣味ではない」で済ませられるのです。
読者というのは超保守的な生き物なので、好きな作品が好ましからざる変化をすることを極度に厭うのです。ワタシにとっては『幻魔大戦deep』以降の第三次幻魔大戦がそうです。まあでも、それが平井和正なのですけどね。

あるいは後期アダルトウルフガイは、第二次幻魔大戦へと至る試行錯誤の捨て石を引き受けたのかもしれません。
だが、やはり、おれには荷が重すぎると痛感せざるを得ない。真のエースが登板するまでの、ワンポイント・リリーフのつもりなのさ」
「あくまでも、真の主役が出てくるまでのツナギだがね。精いっぱいがんばりますよ。」

ワタシの妄想で、アダルト犬神明が東丈にタッチをする情景が思い浮かびます。

けれども、好きか嫌いかで云えば、やっぱりワタシは好きなんですよ。後期アダルトウルフガイ、『人狼白書』〜『人狼天使』が。宗教テイストには免疫のある幻魔フリークであることもありますが、それ以上に犬神明の犬神明たる魅力は、寸毫も損なわれていないとワタシには思えるからです。

男は殴り返せない相手を殴るべきではなく、侮辱に対して反撃できない人間を侮辱するべきではない。無抵抗の人間をいたぶるほど卑しく恥ずべきことはないのだ。

好きすぎて座右の銘になっている言葉です。過去幾度も取り上げたことがあります。いじめや暴力の問題を考える百万の弁舌よりも、このひと言ですよ。3年B組センセイ・イヌカミですよ。この名言は『人狼天使』において生まれたのでした。ニューヨークの獄舎での悪徳看守に対する犬神明の評です。
世界観は変わっても、犬神明(ウルフ)の魂(ソウル)に変わりはない。多少の反省があったのかはわかりませんが、『人狼天使』においては「白書」や「ソドム」のように暗黒の意識界を舞台にすることはなく、作品的にも狼男(ウルフガイ)らしさを幾分取り戻して現実世界で肉体労働に励みます。
若い弟子たちを集めて教えを説いたり、「光」を使って憑依した悪霊を払い、心霊治療を施したりする。そんな東丈的な振る舞いに、若干の違和感、ガラじゃない感を覚えはします。けれども、それは当の犬神明自身がそう思っているでしょう。悪漢ウルフも魔族との対決にあたっては、天の使いも果たさざるを得ない。そんな悪戦苦闘、奮闘ぶりは、やはりワタシにとり、好もしいものなのです。


Re: 幻魔大戦へのエクササイズ!?〜人狼天使 第1部 - Name: 幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1519 - 2017/05/22(Mon) 01:00:18
ちょっと先ほどの返信は作家さんの産みの苦しみに失礼でした。
反省しております。無視していただきますようお願いいたします。
ウルフガイは大学生の頃にかどたひろしさんの漫画を2巻までしか私は読んだことがないです。
私はジャンプ世代でドラゴンボールをリアルタイムで見た人間ですが、
高校時代に「犬神明」という単語をわかる人が周りにいなかったのを覚えています。
私、日創研のセミナー経験者なので、宗教的なのは大丈夫です。
今月の給料が入ったら、人狼天使から真面目に電車の中で読んでみたいと思います。
いつも、カナメさんの投稿楽しみにしております。
次回も何卒宜しくお願い致します。


Re: 幻魔大戦へのエクササイズ!?〜人狼天使 第1部 - Name: DONDEN Mail - Home No.1520 - 2017/05/24(Wed) 23:29:54
横レス失礼します。

幻魔大戦ジプシーさん、アダルトウルフガイをかどたひろし漫画版でしか読んでいないというのは、『あなたはまだ、アダルトウルフガイの本当の物語を知らない』と言って差し支えないかと思います。連載時に立ち読み(それすら途中で億劫になってやめましたが)した範囲の個人評価で言えば、まあケン月影版よりはまだまし、以上のものではありません。はっきり言って原作の持つ魅力が決定的に欠けた漫画にしか思えませんでした。、
人狼天使から、と言わず最初からお読みになることをお勧めします。


Re: 幻魔大戦へのエクササイズ!?〜人狼天使 第1部 - Name: 幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1521 - 2017/05/25(Thu) 00:45:23
ご助言ありがとうございます。
一瞬、子供のころに親にキン肉マンの第一巻を買ってもらって面白くなかった記憶がよぎりましたが、
やはり最初の狼男だよなのですね。
Amazon探すと2社から出ているのですね。
たぶん、どっちでも変わらないので、常磐線沿線に住む者としてe文庫版の方をポチってみたいと思います。


Re: 幻魔大戦へのエクササイズ!?〜人狼天使 第1部 - Name: 幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1522 - 2017/05/28(Sun) 14:07:48
夜と月と狼と読んでみました。
拷問にあっても減らず口を叩く強い男の詩。それがアダルトウルフガイなのですね。
改竄事件で干された平井和正が、池上遼一版スパイダーマンのシナリオを書かせると説教臭くなってしまったのが何かわかりました。
さて、ハルマゲドンの少女が、電子書籍として配信開始になりました。
カナメさんの評論を楽しみにしております。


「幻魔大戦は完結している」という噂について考える - Name: 幻魔はつらいよ 幻魔大戦ジプシーの告白 Mail - Home No.1515 - 2017/05/20(Sat) 12:24:31
私は時々職場の同僚と話をしていて、「昔、幻魔大戦にハマってしまったー」という話題になったときに、
だいたい訊かれるのですよ、「最後に幻魔に勝つの?」って。
私はそこで、「結局負けたままになって終わる」というと、なんじゃそりゃ?という感じで場の空気が沈んで話が盛り上がらずに気まずくなってしまいます。

で、9年前の2008年に俗に完結編と言われているdeepトルテックが出たわけですが、
ネットを見ていると「幻魔大戦は一応完結している」という旨の声が大きいように思います。

http://oookaworks.seesaa.net/article/412678863.html
http://oppincle.blog52.fc2.com/blog-entry-878.html
http://katakoriyoutu.blogspot.jp/2015/01/blog-post_21.html
http://www.thx-design.net/blog/?p=13153

ざっくり読むと、
・最後に少年マガジン版のラスボスである幻魔地球兵団の司令官シグが登場して、雛崎みちるに封印される。
・東丈はついに帰還し、幻魔大王と最終決戦に入る。
・東丈は幻魔大王だった。
・幻魔と戦うことはそれ自体が幻魔と化す、と東丈が言って、幻魔大戦は終結を遂げた。

と私は解釈しました。正直、これも、「なんじゃそりゃ?」という風に私は思いました。

平井和正が鬼籍に入られ、週刊新潮で次のような記事が出ます。

週刊新潮 2015年01月29日号 P35-36
==============ココカラ================================================
『平井和正 幻魔大戦2000万部作家が最後に書いた「ネット小説」』
 地球を滅ぼそうとする魔物と超能力者の終わりなき戦いを描いた「幻魔大戦」シリーズは、
累計2000万部以上という大ヒットを記録しただけでなく、多くの作家が影響を受けたものだ。
その作者・平井和正氏が晩年、情熱を傾けたのは「ネット小説」だった。

「父はここ3〜4年ほど、高齢のために気力が弱ってしまい、食もどんどん細くなっていました。
どこかが悪いのではなく老衰というのでしょうか。心臓が弱くなり血圧が低くなると、
体のあちこちが悪くなって昨年の夏から入退院を繰り返していたのです」
 そう話すのは長女で漫画家の摩利さんだ。年明けには意識も朦朧とするようになった平井氏は、
1月17日、鎌倉市内の病院で眠るように息を引き取ったという。享年76、心不全だった。
 平井氏といえば、人気漫画「8マン」の原作を手掛けたことから一躍脚光を浴び、
石ノ森章太郎氏との共著で生み出した「幻魔大戦」はあまりにも有名だ。
「当初のストーリーは、人類の破滅を予告していったん結末を迎えるのですが、
その後に続く作品は、いつの間にか平井さんの手による幻魔大戦(小説)、石ノ森さんによる幻魔大戦(漫画)と分裂し、
そして再び平井さんの単独作品に戻るという不思議な展開になるのです」(SF雑誌関係者)
「新幻魔大戦」、「真幻魔大戦」と続くうち、累計の発行部数は2000万部を超え、
日本のSF小説を代表する大作となったが、大友克洋氏などその世界観に影響を受けた作家は少なくない。
社会にも大きなインパクトを与えた。作品の中で語られた「ハルマゲドン(最終戦争)」は、
流行語となり、オウム真理教などのカルト教団にも影響を与えたと言われている。
 幻魔大戦は未完のまま
 宗教学者の島田裕巳氏も言うのだ。
「平井氏自身も、一時期、新興宗教のGLAの教えに影響を受けたことがあり、
幻魔大戦の主人公も神格化してゆきます。それもあって、幻魔大戦の世界観は、
新興宗教に帰依するような若者に大きな影響を与えたと言えるでしょう」
 幻魔大戦をライフワークとして書き続ける一方、平井氏は、いち早くネットを通じての作品発表に乗り出すようになる。
「もともとは80年代に、締め切りが重なって腱鞘炎にかかってしまい、
ペンの代わりに、売り出されたばかりの富士通のワープロ(親指シフト)で原稿を書くようになったのがきっかけでした。
まだ、誰もが原稿用紙を万年筆で書いていた時代からパソコン通信を使いこなし、
94年に発表した『ボヘミアンガラス・ストリート』は日本で初めてのオンラインノベルと言えます」(前出のSF雑誌関係者)
 10年ほど前から、平井氏は小説発表の場を主にネットに移すようになる。
だが、2008年に書下ろしの続編「幻魔大戦deepトルテック」などをネット上で発表しているものの、
近年は昔の作品をネットに掲載することが多かった。
「最近は目の衰えもあり、パソコンの画面を見ることが辛くなっていたようです。
それもあって、創作意欲も目に見えて落ちていました。
元気だったら今も新しい物語を書き続けていたはず」(摩利さん)
 かくて、幻魔大戦は未完のままシリーズの幕を閉じるのである。
==============ココマデ================================================
それにかぶせて、ウルフガイ・ドットコムの公式Twitterで
「ちなみに幻魔大戦は、『幻魔大戦deepトルテック』で完結しています。」
と明言されました。
http://www.bluelady.jp/post-12411/

なんか、もやもやするので、図書館に行ってみたら、幻魔大戦deepトルテックが置いてあったので、読んでみました。
期待を今まで裏切られ続けてきたので、面白くないことは織り込み済みのつもりで臨みましたが、
想定以上に期待外れで面白く無い上に、ネットで声の大きめの人たちが小説に書いていないことを微妙に書いていることを知りショックでした。

さらにネットサーフィン(死語だな・・・)していると、それに関しては、2009年に秋田書店から出版された秋田文庫版の幻魔大戦に
平井和正があとがきを書いているという情報を入手しました。
実は私、当時これ買ったのですが、読んでみて、宣伝文句の幻の未収録ページがたったの2ページでどうでも良いと思い捨ててしまいました。
慌てて買いなおして確認しました。
==============ココカラ================================================
 私は幸運な作家であり、「8マン」「ウルフガイ」「幻魔大戦」と立て続けに大ヒット作品に恵まれた。
そして四十数年間にわたり、作品が「生き続けた」からだ。この三作品はいずれもコミック作品と深い縁がある。
原作者として異常なほどの幸運に恵まれ、偉大な漫画家たちによって人々の記憶に残るほどのものとなった。
 特に「幻魔大戦」は四十数年に至るも新作を生み続けている。
最新の三千五百枚の「幻魔大戦deep トルテック」は奇しくも石森章太郎さんとのスタートラインに始まった『最初のコミック版「幻魔大戦」』に帰結を与えることになった。
地球大戦となった恐るべき敵幻魔シグを東丈が彼の弟子にして娘であるみちるによって退けることに成功したからである。
 しかし幻魔大戦はまだまだ終わりを告げる気配もない。
==============ココマデ================================================

作者、自らが公言していました!!!
幻魔大戦は未完なのです。しかも、「まだまだ終わりを告げる気配もない。」と続編への色気を匂わせてまでいます。
あと、このあとがきが、平井先生ウマいなーと思ったのは、
シグのことを「幻魔司令官」と言わず「敵幻魔」という表現にとどめています。

小説版の幻魔大戦シリーズが始まったときに、漫画幻魔大戦の設定は、
「ルーナ」は「ルナ」になり、
「サンボ」は「ソニー・リンクス」になり、
「矢頭四朗」は「江田四朗」になり、
「レオナード・タイガー」は「レオナード・タイガーマン」になり、
「フロイ」は「犬のような姿をした異星人」でなく「高次元の宇宙意識」になり、
「サメディ」は「ザメディ」になり、
「ゾンビー」は「ザンビ」になり、
という風にいくつか改訂されています。
この後書きから読めるのは、その改訂の一つとして、
シグは幻魔司令官という役職から幻魔偵察という役職に変更され、
中年っぽいデザインから美しい若者に変更されていたことです。

deepトルテックのエピローグでは、月が落ちてきた後に、東丈はその次元の記憶を保持したまま別の次元に移動したことも匂わせています(シグの封印は東丈がみちるにやらせたのではなくて、みちるが自発的にやったように読めたんだけど・・・)。

ウルフガイ・ドットコムの人は、なぜ作者が公言したこととは逆の内容を明言したのでしょうか。
私なりに考えてみました。ヒントはトルテックのハードカバーの奥付に書いてある住所です。
葛飾柴又の近くです。一駅上れば亀有(こち亀は昨年きれいに終わりましたね)です。
「男はつらいよ」は渥美清が鬼籍に入って、誰もが完結したと思っています。
松竹も48作+特別篇で全てだと公式サイトに書いています。
売る側として未完だと言ってしまうと、続きを書かせる人を見つけて来る義務が発生します。
松竹が男はつらいよが未完だと言ってしまうと、誰かほかの役者を連れてきて、
続編つくるんかい!?って話になります。だから松竹は特別篇作って、それでシリーズを締めている訳です。
だから、幻魔大戦はもうこれで全てだ。完結している。と言わざるを得なかったのではないでしょうか。
東丈は結局、幻魔のいない世界に生まれ変わったけど、ストーカーみたいな幻魔が趣味で執拗に追いかけてきたが、
東丈の弟子が女トルテックの秘術で封じ込めてしまった。そして、その世界を終の棲家とした。
でおしまい。
でも七月鏡一先生と早瀬マサト先生が師の夢を果たすべく続編を紡いでいる。
というのが、私のたどり着いた結論です。
あと、若干、違うなと思ったのがみちるがシグに仕掛けた幻影城。脱出するのに何千年もかかると言っていますが、
あれ、実はブラフで本当は無限に出られないようにつくっているのではないかと私は思います。
もしコンピュータの世界で何千年もかかって壊せるほどの仮想インスタンスを入れ子に構成する技術が確立されたとしても、
天文学的なメモリやCPUなどのリソースを食うことになるのではないかと思います。

シグが閉じ込められたのは、仮想(幻)のたまねぎ宇宙を並列で連ねた巧妙な片方向循環リストなのではないでしょうか。
シグがそれに認識できない限り、無限にその片方向循環リストをめぐり続けることになる。
シグは不死身でもそのうち脱出できると思い込んでいるので、永遠に循環し続けるが何億回・何兆回か巡回するうちに精神的に参って考えることをやめさせて、永遠にそこに閉じ込めておくという策ではないかと私は勝手に推察した次第です。


Re: 「幻魔大戦は完結している」という噂について考える - Name: カナメ Mail - Home No.1516 - 2017/05/21(Sun) 11:32:29
https://twitter.com/ebunko8/status/561000997057622016
記述のページのなかに公式ツイッターの件の発言が埋め込まれていたのですね。読み進めるまでそのことがわからなくて、一瞬あれ? と思ってしまいました。あわてん坊の方が「個人サイトじゃないか」で読むのをやめてしまってもいけませんので、コメントしておきます。
公式ツイッターの発言が重いのは確かですが、それでもあくまで本城さん個人の見解に過ぎません。「新」も「無印」も「真」も明らかな話の途中であって、包括的なエピソードをきれいに閉じることで「完結」というなら、『ハルマゲドンの少女』でも同じことが云えます。云わば解釈完結ですね。
幻魔シリーズは発表されたエピソードに限っても、全てを完成させるのはまず不可能です。なにをもって「完結」というのか? その言葉のニュアンスをすり合わせる必要を感じますが、そう仰った皆さんは少なくとも「スッキリ」されたのだろうなと思います。


Re: 「幻魔大戦は完結している」という噂について考える - Name: 初めて50以上のリツイートを獲得した幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1518 - 2017/05/21(Sun) 22:20:09
>記述のページのなかに公式ツイッターの件の発言が埋め込まれていたのですね。読み進めるまでそのことがわからなくて、一瞬あれ? と思ってしまいました。あわてん坊の方が「個人サイトじゃないか」で読むのをやめてしまってもいけませんので、コメントしておきます。
お手数おかけします。このBBSの制限に収まるように張り付けるURLを考えていたら紛らわしい感じになってしましました。

私、この歳になっても、平成ライダー見ているのですが(戦隊は起きられません)、
平成ライダーは結構、放りっぱなしにして未回収な伏線がいっぱいあります。
平井和正/庵野秀明なみに広げた風呂敷を畳んでいません(クウガとアギトと龍騎と555と響鬼と鎧武は、こんなんでええーんか!?と思いました)。
ただ、とりあえず、年度の変わり目にラスボスみたいなのを倒して、なんか無理やり終わらせています。
石川賢の5000光年の虎みたいに「俺たちの戦いはこれからだッ!」でも良いと思います。

ただ、テレビシリーズのエヴァンゲリオンとか、真のキールが異世界の断面に飲み込まれる所とか、
そういう作者が袋小路にぶち当たって思いつかなくなって、何も思いつかなくなって、なんか、「俺知ーらないッ」という感じで放り投げられた感じが嫌なのです。
なんかわかります。私プログラマなんですが、デスマーチという悪循環に陥って回らなくなった案件で、毎日矢継ぎ早にプログラム組んでて発狂しそうになることあります。
もういっぱいいっぱいで疲れ果てていて、「どう実装してええんか、全然わからへん、逃げたい、寝たい、家帰りたい」と思ったときとかあります。

そういうのわかるのですが、お金もらっている社会人として最低限の締めは区切りをつけるのがプロなのではないかと私は思います。


『エイトマンAFTER』ノベライズ二作 - Name: カナメ Mail - Home No.1504 - 2017/05/05(Fri) 20:12:33
■中原周『8マン after 永遠なる肉体』(1992年9月)
■ORCA『8マン ニュー・ジェネレーション』(1995年4月)
前述の『超犬リープ』の大貫健一氏がキャラクターデザインを務めたOVA『エイトマンAFTER』のノベライズ。読み比べてみても面白いかもしれません。つまらなかったらゴメンなさい。
同じアニメ作品で、すでにノベライズ小説があるにも関わらず、わざわざ後者が刊行されたのは、『エイトマンAFTER』の続編ないしシリーズ化の企画が進行していたからではないかと思われます。アニメが出たら、その小説版も続々出版する構想だったのではないかと。
アニメの続編については、『エイトマンAFTER』4巻に封入された予告チラシがありますので、そちらを写した画像を添付しておきます。残念ながら「希望」はかなわなかったようで。


Re: 『エイトマンAFTER』ノベライズ二作 - Name: カナメ Mail - Home No.1505 - 2017/05/05(Fri) 20:19:54
中原周『8マン after 永遠なる肉体』


Re: 『エイトマンAFTER』ノベライズ二作 - Name: カナメ Mail - Home No.1506 - 2017/05/05(Fri) 20:21:32
ORCA『8マン ニュー・ジェネレーション』


Re: 『エイトマンAFTER』ノベライズ二作 - Name: keep9 Mail - Home No.1513 - 2017/05/09(Tue) 22:11:07
「永遠なる肉体」版の主人公・羽座間逸郎はシリーズキャラクターらしさが良く出ていて、エンタメ志向が強い感じがしました。続編も実は読んでみたかったんですけどね。アニメ版はそもそもの羽座間8マンの誕生経緯が異なっていて、ストーリイそのものに密接に関連しているためによりシリアスさが増してしまった気がします。どっちが良かったかというと、私はニュー・ジェネレーション、アニメ版よりはこの小説版の方が好みでした。


Re: 『エイトマンAFTER』ノベライズ二作 - Name: 8マンを読んだことがない幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1514 - 2017/05/12(Fri) 22:26:13
羽座間逸郎という名前の意味が分からなかったのですが、
夢の中で閃いてしまいました。
AZUMA HATIROUの文字を入れ替えるとHAZAMA ITUROUになる。
東八郎のアナグラムなのですね。


末松正博の8マン - Name: カナメ Mail - Home No.1500 - 2017/05/05(Fri) 15:09:39
実家で発掘シリーズ第三弾は8マンです。
8マンの関連作はホントに多くて、全てあげろと云われたら、スマホなしにパーフェクトに正答する自信がありません。発掘シリーズですので『8マン インフィニティ』のようなメジャーどころは今回はスルーし、当時買ったひともいい加減忘れてそうな作品をチョイスしてみました。

■末松正博『8マン ANOTHER STORY 前編』(1992年12月)
「8MAN OFFICIAL BOOK VOL.1」に掲載。実写映画『8マン すべての寂しい夜のために』をベースに漫画化。一郎くんが「チーマー」だったりするあたり、当時の世相が反映されています。掲載誌の「VOL.2」以降が発刊されることはなく、後編が発表されることはありませんでした。おかげでこの作品に登場する8マンは、暗いシルエット越しのカットに終始し、はっきりとした姿さえ見せず終いでした。末松氏の8マンは、まとうムードをそのままに、舞台を百年後の未来に移した『エイトマン』に受け継がれることになります。

■末松正博『エイトマン』(1994年10月〜1995年4月)
「月刊MANGA BOYS」に『バチ▼ガミ』と同時期に連載されました。こちらは単行本化されています。もし電子書籍化されることがあるのなら、前述の『8マン ANOTHER STORY』を併録してもらいたいですね。
個人的にはこの作品のデーモン(出門)博士には違和感があります。デーモン博士の頼みとするところは徹頭徹尾己れの頭脳、自身の造り上げたテクノロジーであって、だからこそ「好敵手」でもあったのですが、生身の人間に細工して人間爆弾というのは、らしくない上にフラットな悪人に成り下がってしまった印象があります。


Re: 末松正博の8マン - Name: カナメ Mail - Home No.1501 - 2017/05/05(Fri) 15:15:38
8マンオフィシャルブックVOL.1


Re: 末松正博の8マン - Name: カナメ Mail - Home No.1502 - 2017/05/05(Fri) 15:21:24
末松正博『エイトマン』


Re: 末松正博の8マン - Name: カナメ Mail - Home No.1503 - 2017/05/05(Fri) 15:24:38
私がエイトマンだ!


Re: 末松正博の8マン - Name: おかもと Mail - Home No.1512 - 2017/05/07(Sun) 11:05:19
『8マン ANOTHER STORY 前編』は、末松さんの別の作品(「1973 KHIMAIRA」?)に、原稿を切り貼りして使われてしまったという黒歴史があります。
映画がコケてリム出版が倒産したため、原稿料もらえなかったんですかねぇ。
もし電子版で出すなら、「8MAN OFFICIAL BOOK VOL.1」から直接復刻するしかない?


大橋薫『狼のエンブレム』 - Name: カナメ Mail - Home No.1509 - 2017/05/07(Sun) 01:32:21
ゴールデンウィークも今日が最終日。実家で発掘シリーズもこれが最後。ラストを飾るのは、画・大橋薫、企画・ウルフガイ・プロジェクト、『狼のエンブレム』です。
ファンが書いた続編(※1)を原案にウルフガイ・プロジェクトスタッフがリライト、商業誌デビューとなる大橋薫の作画で「少年キャプテン」1985年2月号から7月号にかけて全6回にわたって連載されました。ちなみに「もともと6回の約束だった」(※2)そうです。

青鹿晶子の遺児・犬上真那はたった七年でハイティーンの容姿になり高校に通う、こちらは見た目は変わっていないらしい犬神明は彼女を見守るために同じ高校に転入する。こうしてウルフガイが再び学園を舞台に動き出す。西城の息子・沢恵一、虎4の双子の妹・虎9らを交え、物語は次第に国家的謀略戦へと雪崩れ込んでいく。

ストーリーについて云えば、ファンの模作の域を出ません。まあ、もともとが模作ですからね。(新)ウルフ会の発足や、映画「狼の紋章」の上映会などと並ぶ、当時のウルフガイ復活を祝うお祭り・企画の一環、と見るべきなんでしょう。

とは云え、肝心の本家『黄金の少女』のほうは、「ウルフガイ復活!」「少年犬神明が帰ってくる!」と派手にブチ上げておいて、実態は犬神明出る出るサギの朝鮮戦争帰りのアメリカ南部の警察署長の物語だったわけで、ファンの無聊を大いに慰めたことは間違いありません。
小説版が前述の「ウルフランド」に掲載されていて、漫画版が終了したその後の展開を読むことができます。

※1 丹下真弓・作『狼のレクイエム第三部』『新・狼の紋章』『新狼の紋章』。それぞれ「狼火」創刊号、第六号、第十号に掲載。
※2 「ファンロード」1985年7月号「FRマンガ家特集 大橋薫&真弓(楠桂)シスターズ」による。


Re: 大橋薫『狼のエンブレム』 - Name: カナメ Mail - Home No.1510 - 2017/05/07(Sun) 01:33:53
「少年キャプテン」1985年2月号


Re: 大橋薫『狼のエンブレム』 - Name: カナメ Mail - Home No.1511 - 2017/05/07(Sun) 01:35:32
小説版『狼のエンブレム』


ムック「ウルフランド」と『狼のレクイエム 番外篇』 - Name: カナメ Mail - Home No.1507 - 2017/05/06(Sat) 19:28:57
「平井和正の幻魔宇宙」「犬神」のことはしっかり覚えてましたが、もうひとつの平井和正ムック「ウルフランド」(1985年6月)のことをすっかり忘れておりました。書き下ろしの『真幻魔大戦 第三部』をどーんと掲載した「幻魔宇宙」と異なり、目玉の平井和正の小説がSFアドベンチャー誌で発表済みの『黄金の少女』の再録であったのは読者の評判芳しくなかったのか、その後継続して刊行されることはありませんでした。
その「ウルフランド」に掲載されたのが、鈴宮和由の『狼のレクイエム 番外篇』です。あの『『狼のレクイエム』改訂版』の漫画版です。
鈴宮和由さんも平井和正とはゆかりの深い漫画家で、商業誌デビューは「幻魔宇宙I」のイラストギャラリーです。そのきっかけは自分の描いた漫画を平井和正に送ったことでした。平井和正は「その絵のうまさは明らかにアマチュアのものではなかった」と語っています。その平井和正に送った漫画というのが、『『狼のレクイエム』改訂版』を題材にしたものでした。これらのエピソードも、「ウルフランド」に掲載されています。
「ウルフランド」に掲載された本作は、その漫画を全面的に描き直したものです。扉絵のみ鈴宮和由のコミックスに収録されているほかは、いまも単行本未収録です。鈴宮さんに封印の意志がないのなら、ぜひこちらも電子化してもらいたいなと思います。


Re: ムック「ウルフランド」と『狼のレクイエム 番外篇』 - Name: カナメ Mail - Home No.1508 - 2017/05/06(Sat) 19:32:17
ウルフランド


新作コミック『超犬リープ』 - Name: カナメ Mail - Home No.1496 - 2017/05/04(Thu) 15:08:39
実家で発掘シリーズ第二弾。画・大貫健一、ニューストーリー・風野真知雄。「コミックガンマ」1995年11月号から1996年6月号(4月号は休載)にかけて全6回にわたって連載されました。
原作を踏襲しているのはタイトルと、シェパード型のロボットという設定のみ。リープがもともと普通の飼い犬であることも含めて、続編でもリメイクでもない完全新作。
リープの主人は三芳野苺、小学5年生。その父、三芳野博士は世界的科学者で、彼の発明した画期的テクノロジーを手中にせんと、環境保護団体を謳う組織サイレント・リベンジャー協会からつけ狙われる。発砲までされ、リープが重症を負うに及んで、家族の身を案じた博士は、リープをサイボーグ化することを決意する。サイレント・リベンジャー協会の首魁は、同じ人間とは思えない不気味な外見をした未来人。彼のもといた未来世界は、三芳野博士の発明が戦争に用いられ、人類がそのような姿なってしまった。彼は三芳野博士の発明を葬り去り未来を変え、そして過去の人類に復讐するために、この世界にやってきたのだ。……という壮大なプロットが明らかにされたところで、掲載誌が事実上の廃刊となり、これからというところで幕を閉じてしまいます。最後のページに予告されていた単行本も、出ることはありませんでした。電子書籍化が望まれます。


Re: 新作コミック『超犬リープ』 - Name: カナメ Mail - Home No.1497 - 2017/05/04(Thu) 15:12:25
「コミックガンマ」1996年1月号


Re: 新作コミック『超犬リープ』 - Name: カナメ Mail - Home No.1498 - 2017/05/04(Thu) 15:13:56
「コミックガンマ」1995年11月号扉ページ


Re: 新作コミック『超犬リープ』 - Name: カナメ Mail - Home No.1499 - 2017/05/04(Thu) 15:17:59
「コミックガンマ」1996年6月号最終ページ


余湖ゆうき『転生』 - Name: カナメ Mail - Home No.1495 - 2017/05/04(Thu) 00:02:33
実家で発掘しました。「月刊少年マガジンGREAT」1993年1月号増刊号掲載。余湖裕輝幻のデビュー作。まだまだ未完成なフレッシュ感あふれまくりな絵柄と原作ストーリーの相性が絶妙。『バチ▼ガミ』が電子書籍化される際には、ぜひ収録してもらいたいなと思います。


幻魔大戦Rebirthの元ネタ紹介(5) - Name: ギルガメッシュがマイタイプの幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1494 - 2017/05/03(Wed) 13:50:53
幻魔大戦 Rebirth 5巻が発売されたので、元ネタのチェックをしてみました。

第25話 見知らぬ世界T
P24-26 ミュータント・サブのミイラ
イナズマン超人戦記のオマージュ

P36 東卓登場

第26話 見知らぬ世界U
三輪真名登場
デザインソースは、セクサドールのドール、イナズマンの小巻先生
https://twitter.com/PPPppppppQQQ/status/855912892733956096
平井和正作品としての元ネタは、「池上遼一版スパイダーマン」の『金色の目の魔女』や「魔女の標的」の三輪真名児、新幻魔大戦に登場する女賊 白蛇の真名児(真幻魔大戦では真名鬼と改名されている)

杉村遊奈登場
デザインソースは、千の目先生 千草カオル。
ちなみに「好き! すき!! 魔女先生」(主人公:月ひかる)は原作を千の目先生としているが、内容としては、主人公が超能力を持つ新任女性教師という部分のみが同じ名だけで、キャラクターデザインやストーリーはTVドラマ向けに新たに仕立てたもの。
https://twitter.com/FelipeOnodera/status/850984650591748096
野生時代版幻魔大戦の杉村由紀をGENKENの秘書としてではなく東丈の学校の先生として登場させたかったので、杉村遊奈でそれを実現させたらしいです。おそらく体のどこかに赤い不死蝶の痣があると思うのですが、杉村遊奈はどちらかというと杉村由紀の方に近い位置づけかもしれないです。先日、Kindleで「幻魔大戦スペシャル その日の午後、砲台山で」では、黒髪・黒目の千草カオルをイメージしながら読み進めました。

ちなみに、ミュータント・サブは千の目先生にスターシステム的に登場しています。
役どころは、千草カオルの兄・画家の坂本三郎。これはあくまでスターシステムで別の役(設定)で出ているだけなので、幻魔大戦Rebirthの風田三郎が杉村遊奈の兄というわけではないと思います。
https://twitter.com/FelipeOnodera/status/850993271237038081

レオナード・タイガーマン博士(a.k.a ドク・タイガー)登場

第27話 見知らぬ世界V

ドク・タイガーが不審者として学校に侵入してくるシーンは「池上遼一版スパイダーマン」の『金色の目の魔女』で同様のシーンがあり、それをリミックスしています。ちなみに金色の目の魔女に登場する不審者の名前はどうでも良いですが、坂本八郎です。
P94の老刑事 石ノ森章太郎の読み切り短編「追われる」に登場する老刑事。「追われる」は秋田書店Sunday comics版サイボーグ009第10巻天使編の巻末に収録の作品です。
P94の黒髪の若いほうの刑事 「怪人同盟」の団刑事。

第28話 見知らぬ世界W
三輪真名を中傷する他校の教師。前出の坂本八郎と『金色の目の魔女』に登場する私立探偵赤原をミックスさせた感じのキャラ。
ちなみに赤原の助手というのが池上遼一版スパイダーマンの同エピソードに出てきますが、デザインソースが水木しげる作品によく出てくるサラリーマン山田です(池上遼一は水木しげるの元アシスタント)。

P122の教頭先生が頭から落下するシーンは、イナズマンで小巻先生に教室の壁を破られて、風田サブロウが地面に落下するシーンのオマージュです。

第29話 見知らぬ世界X
杉村遊奈がかざす白銀に輝く釵。気になる人には、e文庫から出ている真幻魔大戦の第5巻/第7巻がおススメです。
P144 「敵意のベクトルを曲げただけ」。e文庫から出版される真幻魔大戦第13巻あたりに「わずかに干渉して、ベクトルを変えてやればよかったのだ。」という表現が出てきますが、それを踏襲した意味だと思います。

田崎忠登場。野生時代版幻魔大戦の田崎宏の関係者と思われます。

役行者の祠と洞窟の壁の彫像。e文庫で配信されている真幻魔大戦第8巻以降を参照。


第30話 見知らぬ世界Y
P168-176 東丈の前世については、細かく書くと、ネタバレになってしまいます。
下記の小説を参照先として書いておきます。
e文庫 新幻魔大戦。またそれの初出のコミック版は講談社の石ノ森章太郎デジタル大全 新幻魔大戦 1/2巻
※後者の石ノ森章太郎デジタル大全は、内容はほぼ小説と同じですが、巻末に早川書房SFマガジン1971年10月臨時増刊号に掲載されたコミック版「幻魔大戦」(少年マガジン版)のダイジェスト版 「幻魔大戦・抄」が前後編に分けて掲載されています。
e文庫 幻魔大戦 全20冊合本版
e文庫 真幻魔大戦

P168の2コマ目やP169の3コマ目の金髪の男性に関しては、できれば、「ハルマゲドンの少女」も読むほうが良いですが、まだe文庫から配信されていません。無理に古本で入手するのもアレなので、e文庫さんがリリースしてくれるのを待ちたいと思います(いずれ配信が開始されるe文庫 真幻魔大戦11巻以降を読んでもわかると思いますが)。

P191-192 雷撃で黒焦げになるシーンは、イナズマンで小巻先生に擬態した刺客が、お寺の鐘の中でイナズマンに雷撃されて黒焦げになるシーンか、新幻魔大戦のラストで由井正雪が真青な猛火に焼かれて黒焦げになるシーンのオマージュだと思います。

なんか1967年(昭和42年)4月15日発売の少年マガジン4月30日号に幻魔大戦の連載が始まってから50年たったらしいですね。
PCのカレンダーでチェックしたら、50年前は曜日が同じで、なんかこの号だけで土曜日発売みたいなんですよね(ちょっとそこが不思議に思う)。
幻魔大戦 50周年でググってみたら、こんなTwitterのモーメントを見つけました
https://twitter.com/i/moments/855637424084459520


夢も現も同じ 〜再読『その日の午後、砲台山で』(第二稿) - Name: カナメ Mail - Home No.1493 - 2017/05/01(Mon) 23:24:49
書き出しはエッセイ。どっこい語り手である平井和正の前に後藤由紀子が現れ、ストーリー仕立ての物語へと雪崩れ込む。さては『ビューティフル・ドリーマー』(『高橋留美子の優しい世界』収録)でやった「あとがき小説」か。いやいや、さにあらず。これは『地球樹の女神』『幻魔大戦』『ボヘミアンガラス・ストリート』『アブダクション』をまたに架けた、堂々たるスピンオフ小説なのです。

修羅くんにひっぱたかれて平井和正は幼児の四騎忍に変身、やがて地球樹本編と同じ中学生になって、東三千子や木村市枝と出逢い、作家・平井和正の知識を有する四騎忍として小説『幻魔大戦』の世界に介入する。そこで暴力団塚田組の凶漢・矢頭が杉村由紀を襲う、その歴史を変えてしまう。この展開がスリリングでね、本当にゾクゾクしました。
なんといっても常軌を逸したこの発想ですよ。まるで富野由悠季作品で地上人がバイストンウェルに召喚されるように、自らの創造した作品世界に作家・平井和正が引きずり込まれてしまうんですから。いや、念のために云っておきますが、その手の物語はありますよ、別段珍しくもない程度に。登場人物である「作家」が劇中劇である自身の創作世界に迷い込む、あるいは現実化する物語というのは。ワタシにも見た覚えがあります。しかし、仮にも有名人気作家が、リアルな自分自身をキャラにして、既存の自身の作品に手を加えるなどという例は、寡聞にして見聞きしたことがありません。つくづく、異常――常ならざることを旨とする作家なんだなと思います。これは小説という形式そのものをブチ壊す、新たな創造ですよ。

これは平井和正が見る夢の話です。夢だから、どんな不条理だって巻き起こる。けれど、それは小説世界の事実そのものです。夢オチで、なかったことになりはしません。なぜなら、これは作品世界の創造主・平井和正の夢であり、そして平井和正は“夢見る作家”なのですから。それを認めるか認めないかは、あなた次第です。

昔話をします。『幻魔大戦deep』で老齢で登場した東丈・三千子姉弟が、ともに何の脈絡もなく若返ってしまったことにドン引きしました。老境を迎えた東姉弟を描く、その新機軸に挑む冒険心、意気込みやよし。でも、結局は絵づらの良い年頃に若返ってしまう。脈絡なし、必然性なし、考えられる理由はひとつ、しんどなっただけですやん!――と。

自分で云うのも憚りながら、正論そのもの。東丈じいちゃん、三千子ばあちゃんで始めてみたけど、やっぱり若いほうがいいや、っていう邪推もたぶん正解。でも、平井和正読者としては、大事なことを見落としていました。『幻魔大戦deep』に着手したのは、まさにこの『その日の午後、砲台山で』を書いたあとであって、それを踏まえれば東姉弟の若返りなど、むべなるかな。夢も現(うつつ)も同じ。それが平井和正の認識、世界観そのものなのですから。

地球樹と幻魔は違う作品ですよ。夢見る作家・平井和正に、そんな常識を説いたって聞く耳はありません。彼のなかでは、それらは一如なのです。
異なる作品と作品のその境界線が揺らぎ、消え、融合する。そしてそれは、作品世界だけにどまらない。作者と登場人物、エッセイと小説、究極は現実と虚構にまで及ぶ。それらは不確かで、定形をとどめず、自在に変化する。キャラの年齢なんて、云うに及ばず。それは単に作家である自らが創作したファンタジーではなく、まさにそんなマジカルワールドを平井和正は生きていたのだと思います。
その認識を受け容れられないひとは、いきおいこの作品をウルフランド的セルフパロディとして遇するでしょう。かつてのワタシのように。※
もちろん、小説の解釈に正しいも間違いもありません。そういう解釈も、それはそれです。けれど、いまのワタシはこの作品、リアルに受け止めます。正編の『地球樹の女神』や『幻魔大戦』とは別の平行宇宙に、この世界も存在するのだと。そう思ったほうが絶対面白い。平井和正だって、そのつもりで書いたに違いないのです。

http://www1.rocketbbs.com/612/bbs.cgi?id=t_kaname&mode=pickup&no=829

夢だから何でもあり、どんな不条理も起こり得る。その法則の限定解除が、エンターテインメントとしてプラスに働くか、興醒めを招くかは、また別問題です。少なくともこの作品については、心の底から面白いとワタシは感じました。

初出時に一度だけ読んで、干支がひと回りして再読したのですが、こうも印象が変わるものかと吃驚しました。ひとは変わる、成長する。読みのレンジも、考えも、感性も。だから昔読んだ作品の印象も変わり得る。ああ、とうとうワタシの身にもヒライストあるあるの「お迎え」が来たのだなと(笑)、そんな風にがっかりした作品も、次に読めばまた違って見えるかもしれないと、あらためてそう思ったのでした。


再読『その日の午後、砲台山で』 - Name: カナメ Mail - Home No.1492 - 2017/04/30(Sun) 12:54:01
昔話をします。『幻魔大戦deep』で老齢で登場した東丈・三千子姉弟が、ともに何の脈絡もなく若返ってしまったことにドン引きしました。魔法、奇蹟って云や何でもありか? しんどなっただけですやん――と。前々作『インフィニティ・ブルー』から、心の底では感じていたこと。でも、熱烈一途な信者であったワタシが、無意識のうちに意識すまいとしていたこと。それが公式サイト掲示板等での一部言動に真面目にムカついて、ワタシの中でのカリスマ性が揺らいだことで、それまで心理的タブーであった批判的考察が解き放たれました。平井和正は作家として衰えたのではないか?――と。
冒険心は認める。これまでやらなかったことに挑む。インブルでマフィアの御曹司を主役に据え、deepでは老境を迎えた東姉弟を描く。その意気やよし。ところが、物語が進むにつれ、新機軸はどこへやら、『月光魔術團』でおなじみのノリになってゆく。deepでの三千子と丈の若返りがとどめを刺しました。脈絡なし、必然性なし。考えられる理由はひとつ。もう一度云います、しんどなっただけですやん!

『その日の午後、砲台山で』はエッセイ風の作者のひとり語りで始まります。その作者・平井和正の前に後藤由紀子が現れる。『地球樹の女神』には、もともと幕間のインターバルに作者が登場し、キャラクターと会話を交わします。だから、そこまでは別に驚くにはあたらないのですが。
しかし、その平井和正が四騎忍に変身――最初は幼児の、次に中学生に――し、さらには東三千子や木村市枝と出逢い、作家・平井和正の知識を有する四騎忍として小説『幻魔大戦』の世界に介入し、暴力団塚田組の凶漢・矢頭が杉村由紀を襲う、その歴史を変えてしまう。この展開がスリリングでね、本当にゾクゾクしました。
なんといっても、常軌を逸したこの発想ですよ。まるで富野由悠季作品で地上人がバイストンウェルに召喚されるように、自らの創造した作品世界に作家・平井和正が引きずり込まれてしまうんですから。いや、念のために云っておきますが、その手の物語はありますよ、別段珍しくもない程度に。登場人物である「作家」が劇中劇である自身の創作世界に迷い込む、あるいは現実化する物語というのは。ワタシにも見た覚えがあります。しかし、仮にも有名人気作家が、リアルな自分自身をキャラにして、既存の自身の作品に手を加えるなどという例は、寡聞にして見たことがありません。つくづく、異常――常ならざることを旨とする作家なんだなと思います、平井和正って。これは小説という形式そのものを破壊する、新たな創造ですよ。
冒頭でお話しした昔話、その見解がこれでコペ転したわけでは、さすがにありません。ですが、あらためてこの作品に触れたことで、なんか常識に囚われてたなとは思うようになりました。平井和正にはそういう常識の縛りが一切ない。限りなく自由。『地球樹の女神』と『幻魔大戦』は異なる作品である。その当たり前の認識がそもそも、ない。それらは一如なのだと。
異なる作品と作品のその境界線が揺らぎ、消え、融合する。そしてそれは、作品世界だけにどまらない。キャラの年齢はもとより、作者と登場人物、小説とエッセイ、究極は現実と虚構にまで及ぶ。それらが不確かで、定形をとどめず、自在に変化する。それは単に作家である自らが創造したファンタジーではなく、まさにそんなマジカルワールドを平井和正は生きていたのだと思います。
その認識を受け容れられないひとは、いきおいこの作品をウルフランド的セルフパロディとして片付けるでしょう。かつてのワタシのように。※
もちろん、小説の解釈に正しいも間違いもありません。そういう解釈も、それはそれです。けれど、いまのワタシはこの作品、リアルに受け止めます。正編の『地球樹の女神』や『幻魔大戦』とは別の平行宇宙に、この世界も存在するのだと。そう受け止めたほうが絶対面白い。平井和正だって、そのつもりで書いたに違いないのです。

http://www1.rocketbbs.com/612/bbs.cgi?id=t_kaname&mode=pickup&no=829

ここからは余談です。
アマゾンからキンドル版が発売されましたが、ワタシは『地球樹の女神 -最終版-』CD-ROMに収録されたドットブック版で読み返しました。ドットブックはKinoppyを使ってスマホでも読めるのですが、一部の文字が文字化けしてしまうのですよね。前後の文脈から見当はつくのですが、やだなあと思っていたら、これって修正パッチがあったんですね。すっかり忘れてました。修正パッチはいまもe文庫サイトにアップされていて、入手可能です。

間違いじゃないの? という気になる記述がありました。
杉村由紀は固く直哉の学生服をつかんだまま放そうとしなかった。
直哉なんてこのシーンにいないどころか登場しないし、どう考えたって由紀がつかんでいる学生服は四騎忍のそれのはずなんですが、でも校正で見逃すミスとも思えず、気になっていました。修正パッチを当てても、ここは変わりませんでした。
キンドル版で確かめたら、おれに修正されてました(笑)。生前の先生に確認したかは深く追及しませんが。

キンドル版の前サブには「幻魔大戦スペシャル」と銘打たれています。『地球樹の女神 -最終版-』CD-ROM収録分では秘されましたが、別個に販売する分には確かにこれは謳ったほうがいいでしょう。主人公こそ四騎忍=平井和正ですが、比重から云えば地球樹番外編というよりは幻魔大戦枝編なんですよ。特に『ハルマゲドンの少女』でさえ語られなかった、高鳥慶輔のその後の動向が語られていて、ファンには見逃せません。こんな重要なことも、すっかり忘れてました。

四騎忍相手にちょっぴり不良モードの木村市枝がいい。『幻魔大戦』の市枝って、生真面目な印象が強いですが、それは周囲の人々との関係性(東丈、三千子、田崎など)がそうさせるので、元黒バラ会(なぜか本作中では「黒百合会」でしたが)ヘッドの不良の地が消えたわけでは決してないのですよね。軽い不審や反撥を覚える忍に、親しい康夫とのタメ口以上に不良の地金を見せる市枝は素敵に新鮮でした。

『ボヘミアンガラス・ストリート』のパートは、本編のディティールをほとんど忘れていて、十全に愉しめなかったのが悔しい。ボヘガラを読み返したら(いったいいつになることやら)、あらためて味わい直してみたいと思います。

初出時に一度だけ読んで、干支がひと周りして再読したのですが、こうも印象が変わるものかと吃驚しました。ひとは変わる、成長する。読みのレンジも、考えも、感性も変わる。だから昔読んだ作品の印象も変わり得る。ああ、とうとうワタシの身にもヒライストあるあるの「お迎え」が来たのだなと(笑)、そんな風にがっかりした作品も、再び読み返せばまた違って見えるかもしれないと、あらためてそう思えました。


こじらせヒライストはなぜ平井和正を語りたがるのか - Name: カナメ Mail - Home No.1489 - 2017/04/15(Sat) 20:04:37
読書家――ことに特定作家のファンが因果なのは、自分の幸福を他者である作家に完全に依存している点につきます。
仕事であれ、家庭であれ、そうは自分の思い通りにはならないものです。ままならないのは何事もみな同じ。それでも自分の努力、働きかけが、より望ましい結果を結ぶ余地はゼロではありません。読書にはその余地がありません。望ましからざる作品に相対したとき、読者にできる選択は、渋々でもその作品を受け入れるか、拒絶するか、そのいずれかしかありません。

ワタシが平井和正を語るのは、それは世間の〇〇好きがそうであるように、平井和正という作家が好きだからです。でも、それだけでは説明のつかないことがある。ほかにも好きな作品の書き手はいます。井上雄彦、福本伸行、真鍋昌平、小林よしのり……でも、彼らの作品を語りたい、語らねばならないという衝動には、不思議と駆られませんでした。

それは不思議でも何でもありませんでした。彼らの作品には、読むだけで充足していたから。
平井和正の作品を読むことで、ワタシは無上の幸福感を味わいました。しかしその一方で、否定しがたい何か満たされない不満やフラストレーションを感じていたことも事実です。そんな負の感情を自ら語ることで心の隙間を埋め、慰謝してきたのでした。
魅力と欠陥がともにあり、単純に充足だけはさせてくれない。いっそ拒絶してしまえば幸せだとわかっていても、そうするには魅力に虜にされ過ぎている。飲めば飲むほどに渇き、喰らえば喰らうほどに飢える。ワタシにとり平井和正の作品とは、そんな厄介なシロモノです。その厄介さが、平井和正を語ることに駆り立ててきたのだと、ようやくわかりました。わざとやっていたとしたら、大したワルですよね。


Re: こじらせヒライストはなぜ平井和正を語りたがるのか - Name: にわかこじらせヒライストの幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1491 - 2017/04/15(Sat) 21:43:32
>否定しがたい何か満たされない不満やフラストレーションを感じていたことも事実です。

Twitterを覗いていて外国の方が平井和正作品について感想を述べられていました。
スパイダーマンについて
https://twitter.com/ZackDavisson/status/851524973613031424
The weird part is more the "psychedelic" vibe and drug plots. It's like ... totally trippy, maaannn ...
奇妙な部分はサイケデリックな雰囲気、辟易させる構想。全体的に頭がクラクラするようだ。ウーン...

新幻魔大戦について
https://twitter.com/FelipeOnodera/status/853152300927406080
Yeah, it's a very complicated story after Chinami time travels back to the Edo period. And then it ends abruptly.
そうだね、千波が江戸時代にタイムトラベルした後は、非常に複雑だ。その上それは不意に終わる。

国も時代も言葉も違う人たちでも同じような感想を抱く。
平井和正の普遍性の一つとして、このようなものがあるのかもしれません。

>魅力と欠陥がともにあり、単純に充足だけはさせてくれない。
彼の紡ぐ物語に期待した人は多かれ少なかれ苦しむのだと思います。
私もこじらせ系ヒライストなのですが、「これなんか変だね。」の次に「やーめた、知ーらない」と言えなかった。
どこか平井和正という人物に尊敬の念や憧れや自分との共通点を見出してしまっていたのだと思います。
私はこの前の新宿5丁目のトークライブに行って、なんかそう納得がいきました。

紙の本でサイボーグ・ブルースが出たら再読してみようと思います。
あと、「その日の午後、砲台山で」は読んだことがないので、Kindleで購入して読んでみようと思います。

気楽に安価で購入して、気楽に読むのが、なんだかんだ言って楽しい読書です。


躁、COOL!〜狼の世界(ウルフランド)≪おかわり≫ - Name: カナメ Mail - Home No.1490 - 2017/04/15(Sat) 21:41:14
前回の『狼の世界(ウルフランド)』評とは別のパートの所感です。

■あいつと私
躁状態がハンパない。愉快で楽しいコメディというよりは、作者の正気を疑ってしまう、そんな作品ですね。
我々アニメ幻魔世代には、角川文庫版『ウルフランド』の印象が強烈でしてね。NONノベルの別モードの生頼画伯も悪くないんですが、やっぱり向日葵淳子は鈴宮和由じゃなきゃって感じなのです。ここで添付の画像をご覧下さい。まあ可愛いですね。抱きしめたくなりますね。セーラー服趣味のいやらしいいやらしい中年男の人には目の毒ですね。ハイ、どうもありがとうございました。
この文庫本の装丁、少なからずウルフガイ読者を増やしたんじゃないかと思います。この本をジャケ買いならぬ表紙買いをして、内容がわからず悔しくしてウルフガイを読み始めたってひとを一人知っています。電子書籍のイラスト増補版がもし出るんなら、こちらはNONノベル版じゃなく、角川文庫版でお願いしたいなと思います。

■『狼のレクイエム』改訂版
電子書籍版に「のりしろ」はありません、あしからず。でも、切り取り線はあります。切り取れないですけど。

■8マン→サイボーグ・ブルース→ウルフガイ
豊田有恒はシナリオ書きに消耗し、一年半にわたり小説が一行も書けなくなって、苦悶のあまり号泣したそうだが、筆者も同様であった。唄いたくても唄えないカナリヤである。この辛さは、小説家でないとわからない。
シナリオ書きは小説家から文筆の詩想を奪ってしまうのですね。漫画『ウルフガイ』の原作は、小説『狼の紋章』〜『狼の怨歌』そのものだったといいますが、それは作家としての矜持だけではなく、こうした経験も経てのことだったんですね。


ここがヘンだよ「幻魔大戦シリーズの登場人物一覧」のWikipedia - Name: 国会図書館の複写カウンターの女の子にこ このおっちゃんは・・・・「キ・チ・ガ・イだ!」と笑われた幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1482 - 2017/04/15(Sat) 00:45:57
Wikipediaを読んでいると、あれ、変だな、そうだったけ?と思うことが私はしばしばあります。
幻魔大戦のWikipediaについて、前から思っている私の素朴な疑問を列挙させて頂きます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E9%AD%94%E5%A4%A7%E6%88%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E9.AD.94.E7.8E.8B
>【Rebirth】別世界(マガジン版)の東丈。怒りや恐怖を超能力発動のトリガーとしたために、幻魔と一体化してしまった姿。
3巻で、イワンや斉天大聖もとい丈のドッペルゲンガーや5巻のドク・タイガーがそう解釈できるようなことを言っていますが、そういうことなのでしょうか。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E9%AD%94%E5%A4%A7%E6%88%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E6.9D.89.E6.9D.91.E5.84.AA.E9.87.8C
>杉村優里
>母は杉村由紀、父は霊体の東丈。過去世はお時、クロノス。
>クロノス
>【真】お時、杉村優里の過去世。

お時ってすでにお亡くなりなって杉村優里に転生したという設定でしたでしょうか。仮に杉村優里の過去世がお時だったら、香川千波かお蝶の過去世がクロノスだという話になると思うのですが、それも何か違うんじゃないかなぁと思います。
お時の血統で、クロノスの霊統を得た個体が杉村優里ですよね。平井和正は魂はコピーできないという信念持ってるんですよね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E9%AD%94%E5%A4%A7%E6%88%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E3.81.8A.E6.99.82
>【小説】東三千子が見る幼い日の空襲の夢に登場する本当の母、東家の実母とは似ても似つかぬ三千子に極似した容姿を持つ。
野生時代版幻魔大戦7「浄化の時代」このシーンを読んだときは、空襲の夢に登場する本当の母はお時じゃないかとそう思いましたけど、ハルマゲドンの少女に、真相が書かれていますよね。e文庫さん早くKindleの出版お願いします。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E9%AD%94%E5%A4%A7%E6%88%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E3.82.BD.E3.83.8B.E3.83.BC.E3.83.BB.E3.83.AA.E3.83.B3.E3.82.AF.E3.82.B9
>ソニーの身体はエレベータの鋼板と半ば融合しており、死亡したと推測される。その後超空間の住人となっている。
つーか、なんで死亡したのに、超空間の住人になってんねんっ!

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E9%AD%94%E5%A4%A7%E6%88%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AE%E7%99%BB%E5%A0%B4%E4%BA%BA%E7%89%A9%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E5.B9.BB.E9.AD.94
>ザメディ
>【Rebirth】オズボーン准将の体を乗っ取り、ソニー・リンクスやCIAを罠にはめる。別世界の記憶から、ソニー・リンクスに正体を暴かれるも、エネルギーボール内に幽閉することに成功する。

エネルギーボールは角川映画版の場合の話で、Rebirthは少年マガジン/野生時代同様、人間ミートボールなんですよね。

コミック版・新幻魔大戦で「お時の顔が香川千波の顔で、香川千波をお蝶の焼死体のように描いているシーンはチョンボだから修正するべきだ。」と言っておきながら、どうしても気になって、幻魔大戦の単行本化の際に大きく修正されたチョンボの絵を入手してしまいました。
コミック版・新幻魔大戦は、あれはあのままで良いのだと納得できました。一見さんはコミック版ではなく小説版を先に読めば済むだけのことだから。


Re: ここがヘンだよ「幻魔大戦シリーズの登場人物一覧」のWikipedia - Name: カナメ Mail - Home No.1485 - 2017/04/15(Sat) 11:19:21
カッコイイなあ、雑誌初登場のタイガーマン! このときは人物像まで意思疎通ができてなかったんでしょうね。大胆ビキニのベガ※にも増して、貴重なひと(ふた)コマですね。
https://twitter.com/tkaname/status/849606983556620288

お時の顔が香川千波の顔……確かにそうだ。ワタシはそんなこと、考えたこともありませんでした。至極もっともなツッコミです。でも、マンガ的には仕方がないかなと。お時の主体は香川千波であって、その主体の顔が変わってしまうわけにはいかなかったんでしょう。
解釈論で解決を図るなら、千波の魂がお蝶の身体に入ったら、顔つきまで千波っぽくなったというのは……ムリ?


Re: ここがヘンだよ「幻魔大戦シリーズの登場人物一覧」のWikipedia - Name: 国会図書館の複写カウンターの女の子にこ このおっちゃんは・・・・「キ・チ・ガ・イだ!」と笑われた幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1486 - 2017/04/15(Sat) 11:59:06
なんか大胆ビキニのベガって、我々がイメージしているイカツイサイボーグという感じではないですね。
鉄腕アトムも半裸ですけど、なんか半裸ベガって密かに女をナンパしてヤッテしまっているようなエロさがありますね。。。

>マンガ的には仕方がないかなと。お時の主体は香川千波であって、その主体の顔が変わってしまうわけにはいかなかったんでしょう。
単に打ち合わせ不足だと思いますよ。
だって、エド1999年Cのラストから3つ目のページでお時が短髪でなく長髪になって黒い影で塗りつぶされています。
連載が進んでいく内に石森章太郎は気付いたんですよ。最初の明暦の大火のシーンの「私」という単語の意味が、お蝶が香川千波と同化していく過程で、香川千波だったりお蝶だったりお時だったりということを文脈で微妙に使い分けているんだって。
私は、コミック版新幻魔大戦A(徳間アニメージュコミック)→小説版新幻魔大戦(リム出版)
という順番で読んで、真幻魔大戦にも目を通して、いろいろと想像していたんですよ。明暦の大火のシーンのお時はどんな姿をしているのだろうか?って。もしかしたら、この時点で平井和正は、ムーンライト=黒野千波の構想ができていたのではないか?って。
で、苦労して、わざわざ吹田の籠目舎まで足運んで高い金出して買った@巻のシーンを読んでとてもがっかりしました。

できれば、幻魔大戦Rebirthでも、この辺のダイジェストをやって書き直してほしいなぁって、私は思っています。

そうじゃないと、一見の読者が、あのシーンで第一次幻魔大戦と第二次幻魔大戦の奥底にあるお時の使命と宿命という微妙なベクトルを味わえなくて、勿体ないと思います。


Re: ここがヘンだよ「幻魔大戦シリーズの登場人物一覧」のWikipedia - Name: カナメ Mail - Home No.1487 - 2017/04/15(Sat) 13:16:04
マジレスしますと、マンガの絵は必ずしも正確なビジュアルを表現しているわけではないとワタシは考えるものです。
ルナ姫とソニー・リンクス(サンボ)がまさか日本語で会話をしているわけはありません。ベガとアリエータに至っては、地球上の言語ですらない。それをそのまま正確に描かれても困るわけで、日本人向けには日本語で吹き出しを書くことになる。絵もしかりです。極論すれば、読者に伝えるための記号として、「翻訳」されているのです。
本当はお時の外見はお蝶のそれと同じのはずです。でも、ストレートにそう描いてしまったら、新幻魔大戦の主人公の顔が途中から変わってしまう。やっぱりそれはマズいわけで、香川千波が日本髪を結ったのがお時の表現になるのは、当然の選択だとワタシは思います。髪が長い――江戸時代から跳んできたのですから当然ですが――のは明らかにお蝶の属性ですね。


Re: ここがヘンだよ「幻魔大戦シリーズの登場人物一覧」のWikipedia - Name: 国会図書館の複写カウンターの女の子にこ このおっちゃんは・・・・「キ・チ・ガ・イだ!」と笑われた幻魔大戦ジプシー Mail - Home No.1488 - 2017/04/15(Sat) 13:42:29
まあ、どこまで作り話の嘘とか間違い・矛盾を許容できるかは人とか時代に依存すると思います。
ゆでたまごのキン肉マンなんてのは、突っ込みどころ満載ですからね。明らかに間違いだとわかってても修正しないし。
あまりこの辺慎重になると、単行本化が遅れる(需要があるのに供給できない)ので、逆効果なんでしょうね。
タマフルでみなもと太郎が言っていましたが、ジャングル大帝の最終巻が中々でなかったのは手塚治虫自身が話の矛盾に気付いて、それを無理やり取り繕おうとしたのが理由らしいです。

大事なのは、その時代時代の嗜好や勢いに乗り、読もうと思ってくれる人にできるだけ読者になってもらうことなのかもしれません。

スターウォーズはよく改訂してますけど、なんだかんだ言って、金持ってるからなんでしょうね。

大河ものって、下手に手を出しちゃいけない。


天使時代前夜の死と再生〜狼の世界(ウルフランド)【読後正式版】 - Name: カナメ Mail - Home No.1483 - 2017/04/15(Sat) 10:35:32
平井和正が作家的変革期にスラプスティックな作品を書くことはわりと知られています。
『狼の紋章』でいわゆる「狼の時代」が始まる前に書いたのが『超革命的中学生集団』でしたし、ここでしばしば云っている「生頼範義期」から「泉谷あゆみ期」への端境に書かれたのが『女神變生』でした。そして『人狼白書』で「天使の時代」の幕開けとともに書かれたのが『狼の世界(ウルフランド)』です。
ところで「人狼白書 闇のストレンジャー」がGOROに連載されたのと、「ウルフランド」が奇想天外に連載されたのって、時期的にはどちらも76年でほぼ重なってるんですよね。

 おれは車の窓を開け、上半身を乗り出して、タイトルをのぞいた。
「“ウルフランド消滅”なんて書いてありやがる。掲載誌も“GORO”じゃなくて“奇想天外”だ。われわれは“闇のストレンジャー”に登場中だったんだからな。とうとう作者の奴、発狂したかな? まさか、締切が重なってるんで、間違えたんじゃあるまいと思うが」


「ウルフランド消滅」でブルSSSに同乗するマイク・ブローニングに犬神明がそう語りかけているのは、そういうことなんですね。

参考 ヒライストライブラリー [掲載雑誌目録]
http://hiraist.fan.coocan.jp/mokuroku/mag/mag_ki.html
http://hiraist.fan.coocan.jp/mokuroku/mag/mag_xx.html

「あっはっは。まかしといてくれ。そのほうが読者も喜ぶ。なあ、マイクちゃん、ウルフガイが交替したら、よろしく頼むよ。こっちの犬神明センセイは、どうも最近陰々滅々ムードでかったるくなってるからな。このへんで気分を変えて、新鮮に溌剌とやろうぜ」

「いずれ先輩が引退したら、後を務めることになるかもしれませんよ」
「まだまだ、こんなひ弱な若い連中には負けませんよ。現役バリパリの狼男ですからな」
「ははは。しかし最近はだいぶくたびれて、陰々滅々だという評判だけどな」


神明、“悪徳学園”犬神明、双方から「陰々滅々」と云われるアダルト犬神明。
この辺があの方の面白いというか凄いところで、神と信仰の世界にダイブしながらも、まるでバンジージャンプのように自分の足元にしっかりとロープを繋ぎ留めている。宗教にハマって、人が変わってしまうという話は、よく聞くところです。平井和正も「大きな心境の変化を経験していた」「大量のタバコ、酒、睡眠剤とあっさり縁が切れてしまった」「人格円満さによって友人知己たちを驚かせているようなのだ」(『人狼天使 第I部』「あとがき」)と語っており、そうだったのでしょう。けれども、そういう自分を客観視し、茶化す冗談っ気も失わずにいる。そういう人だから、作家に戻ってこれたんでしょう。そして、リアル教団とは関係を断ち、小説という作家業を通じて、真の救世主を探す旅を始める。

それにしても、ラノベ(ライトノベル)という言葉も概念もない時代に、挿絵と不可分の小説「超革中」を書き、新井素子のデビュー(77年)に先んじて、登場人物たちが楽屋話的に作者について語り合うセルフパロディを書く。なんだかんだ云って、やっぱりある種の天才だと云わざるを得ません。「『狼のレクイエム』改訂版」の“のりしろ”とかね。頭おかしいですよ(笑)。この頭のおかしさは、魅力でもあるし、欠点でもある。平井和正という作家に対して思う、凄ぇなこのひとはという部分と、なんでこんなことしちゃうかなという部分、それらはきっと一枚のコインの裏表なんだと思います。

最後に蛇足を。この物語ありエッセイありの書物の最後のパートである「平井和正氏・急逝・追悼座談会」、座談会と銘打たれていながら、座談はおこなわれません。司会がひとり平井和正氏「急逝」の事情を解説し、「紙数が尽きました」と云って終了してしまいます。
その「急逝」の事情というのが、ウルフランドの連載最終回用に用意していた登場人物座談会を同じ奇想天外で横田順彌氏に先を越されてしまって、それでショック死してしまった……という巷間の噂は俗説妄説であって、真相は別にあったというのですが。
よろしいですか、みなさん。書く前、構想段階で先を越されたのじゃありません、書いたあとなんですよ。つまり、発表されずにお蔵入りした、幻の原稿があったのですよ!
そして、その幻の「ウルフガイ登場人物の座談会」が、電子書籍版に《特別付録》として収録されているのですよ! 電子書籍なんて興味ねーよ、という方も、ちょっぴり食指が動いたんじゃありませんか?

「おれは、お宅の年頃には派手にやってたぞ。学生トップ屋なんていわれたもんだ。梶山李之のトップ屋時代の話さ。そのころ蛇姫さまの郷子とはじめて逢ったんだ」
蛇足その二。さり気に『若き狼の肖像』への伏線を張ってますね。神がかり後に書いた神がかりでない作品という点で、ウルフランド、『死霊狩り』2・3(「このままでは、われわれもゾンビー島で立往生だ」by 林石隆)と並んで「やればできる」ことを証明した作品ですね。

「あそこに“幻魔大戦”のグループがいる。あの連中はみな超能力者だ。なんとかラチをあけるかもしれん」
蛇足その三。初読のときには、ずいぶんと扱いが小さいなあ、と思ったものです。この頃はまだ、第二次・小説幻魔大戦は書かれてなかったですからね。読者として、まだまだビギナーでした。

Ending. 特撮 人狼天使
それでは大槻ケンヂ率いるロックバンドの、このナンバーを聴きながらお別れです。それでは次回、『人狼天使』でお会いしましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=R2gTQacNF_g


Re: 天使時代前夜の死と再生〜狼の世界(ウルフランド)【読後正式版】 - Name: カナメ Mail - Home No.1484 - 2017/04/15(Sat) 10:36:26
仕事が一段落してテキストが書けるようになりました。そんな事情で間が空いてしまいましたが、ちゃんと読み通したあとの正式版です。といっても、こちらは引用部分とかをちょこっと変えただけですけどね。ほかのパートについての所感は、稿をあらためたいと思います。


天使時代前夜の死と再生〜狼の世界(ウルフランド) - Name: カナメ Mail - Home No.1480 - 2017/03/19(Sun) 16:16:25
平井和正が作家的変革期にスラプスティックな作品を書くことはわりと知られています。
『狼の紋章』でいわゆる「狼の時代」が始まる前に書いたのが『超革命的中学生集団』でしたし、ここでしばしば云っている「生頼範義期」から「泉谷あゆみ期」への端境に書かれたのが『女神變生』でした。そして『人狼白書』で「天使の時代」の幕開けとともに書かれたのが『狼の世界(ウルフランド)』です。
ところで「人狼白書 闇のストレンジャー」がGOROに連載されたのと、「ウルフランド」が奇想天外に連載されたのって、時期的にはどちらも76年でほぼ同じなんですよね。
「ウルフランド消滅」に登場する犬神明はブルSSSに同乗するマイク・ブローニングに「おれたちは、これから“凶眼の女”大滝志乃を捜しに出かけるところだったんだが」と語り、青鹿晶子の外見をした実は沢恵子に「他の雑誌に出てる途中だったんですが」と語っているのは、そういうことです。

参考 ヒライストライブラリー [掲載雑誌目録]
http://hiraist.fan.coocan.jp/mokuroku/mag/mag_ki.html
http://hiraist.fan.coocan.jp/mokuroku/mag/mag_xx.html

「あっはっは。まかしといてくれ。そのほうが読者も喜ぶ。なあ、マイクちゃん、ウルフガイが交替したら、よろしく頼むよ。こっちの犬神明センセイは、どうも最近陰々滅々ムードでかったるくなってるからな。このへんで気分を変えて、新鮮に溌剌とやろうぜ」

「いずれ先輩が引退したら、後を務めることになるかもしれませんよ」
「まだまだ、こんなひ弱な若い連中には負けませんよ。現役バリパリの狼男ですからな」
「ははは。しかし最近はだいぶくたびれて、陰々滅々だという評判だけどな」


神明、“悪徳学園”犬神明、双方から「陰々滅々」と云われるアダルト犬神明。
この辺があの方の面白いというか凄いところで、神と信仰の世界にダイブしながらも、まるでバンジージャンプのように自分の足元にしっかりとロープを繋ぎ留めている。宗教にハマって、人が変わってしまうという話は、よく聞くところです。平井和正も「大きな心境の変化を経験していた」「大量のタバコ、酒、睡眠剤とあっさり縁が切れてしまった」「人格円満さによって友人知己たちを驚かせているようなのだ」(『人狼天使 第I部』「あとがき」)と語っており、そうだったのでしょう。けれども、そういう自分を客観視し、茶化す冗談っ気も失わずにいる。そういう人だから、作家に戻ってこれたんでしょう。そして、リアル教団とは関係を断ち、小説という作家業を通じて、真の救世主を探す旅を始める。

それにしても、ラノベ(ライトノベル)という言葉も概念もない時代に、挿絵と不可分の小説「超革中」を書き、新井素子のデビュー(77年)に先んじて、登場人物たちが楽屋話的に作者について語り合うセルフパロディを書く。なんだかんだ云って、やっぱりある種の天才だと云わざるを得ません。「『狼のレクイエム』改訂版」の“のりしろ”とかね。頭おかしいですよ(笑)。この頭のおかしさは、魅力でもあるし、欠点でもある。平井和正という作家に対して思う、凄ぇなこのひとはという部分と、なんでこんなことしちゃうかなという部分、それらはきっと一枚のコインの裏表なんだと思います。

最後に蛇足を。この物語ありエッセイありの書物の最後のパートである「平井和正氏・急逝・追悼座談会」、座談会と銘打たれていながら、座談はおこなわれません。司会がひとり平井和正氏「急逝」の事情を解説し、「紙数が尽きました」と云って終了してしまいます。
その「急逝」の事情というのが、ウルフランドの連載最終回用に用意していた登場人物座談会を同じ奇想天外で横田順彌氏に先を越されてしまって、それでショック死してしまった……という巷間の噂は俗説妄説であって、真相は別にあったというのですが。
よろしいですか、みなさん。書く前、構想段階で先を越されたのじゃありません、書いたあとなんですよ。つまり、発表されずにお蔵入りした、幻の原稿があったのですよ!
そして、その幻の「ウルフガイ登場人物の座談会」が、電子書籍版に《特別付録》として収録されているのですよ! 電子書籍なんて興味ねーよ、という方も、ちょっぴり食指が動いたんじゃありませんか?

「おれは、お宅の年頃には派手にやってたぞ。学生トップ屋なんていわれたもんだ。梶山李之のトップ屋時代の話さ。そのころ蛇姫さまの郷子とはじめて逢ったんだ」
蛇足その二。さり気に『若き狼の肖像』への伏線を張ってますね。神がかり後に書いた神がかりでない作品という点で、ウルフランド、『死霊狩り』2・3(「このままでは、われわれもゾンビー島で立往生だ」by 林石隆)と並んで「やればできる」ことを証明した作品ですね。

「あそこに“幻魔大戦”のグループがいる。あの連中はみな超能力者だ。なんとかラチをあけるかもしれん」
蛇足その三。初読のときには、ずいぶんと扱いが小さいなあ、と思ったものです。この頃はまだ、第二次・小説幻魔大戦は書かれてなかったですからね。読者として、まだまだビギナーでした。

Ending. 特撮 人狼天使
それでは大槻ケンヂ率いるロックバンドの、このナンバーを聴きながらお別れです。それでは次回、『人狼天使』でお会いしましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=R2gTQacNF_g


Re: 天使時代前夜の死と再生〜狼の世界(ウルフランド) - Name: カナメ Mail - Home No.1481 - 2017/03/19(Sun) 16:34:51
『ウルフガイ・イン・ソドム』について書くつもりだったのですが、その枕としてちょろっと書くつもりだったものが、一本のテキストとして充分な長さになってしまったので、この部分だけで発表してしまいます。
実をいうと『狼の世界(ウルフランド)』は、要所を読み返しただけで、全部をちゃんと再読したわけではありません。全部を読めば、また云いたいことが増えるかもしれず、あるいは云いたいことがまったく変わってしまうこともないとは云えません。ですから、これは先行配信版と思ってください。読後にあらためて、正式版を発表することになるでしょう。


『人狼白書』をもう一度 - Name: カナメ Mail - Home No.1476 - 2017/03/04(Sat) 00:20:53
≪天使や悪魔が出てきたからって、なにを戸惑っているんだ? よく考えてみろ。この物語の主人公は狼男なのだぞ。≫
ワタシがまだ平井和正に対して、全肯定の一途な崇拝者だった頃、後期アダルトウルフガイへの批判に対して、このようにうそぶいていたことを思い出します。一途なファンとして、ムリしてたんだな(笑)といまは思います。だって、あらためて読み返したら、あの最終章「暗黒世界の対決」には、違和感ハンパなかったですもん(笑)。ウルフガイであれはやっちゃいかんと思いますよ。

物語にはそれぞれ、ついていいウソの範囲というものがあります。
たとえば、木村拓哉の医者もののドラマに、狼男が出てくることは許されません。担ぎ込まれた絶望的な重症患者が奇跡的な回復を見せ、こんな告白をする。「信じてもらえないかもしれないけど、実はおれ、狼男なんです」→「君の身体を調べさせてほしい!」……この脚本家、気でも狂ったか? と思われるでしょう。
一方で、『狼男だよ』という作品があります。――白状しよう。実をいうとおれは人間じゃない。おれは人狼なのだ。……この一節を読んで、狼男なんているわけないだろ、この作者、頭おかしいんじゃないか? とは普通思いません。前者と後者の物語では、ついていいウソの範囲が異なるからです。

宝くじで高額当選をすることは、私たちの日常レベルでは、ほぼあり得ない話です。でも、世間のどこかには、そういう人もいる、それもまた現実です。
だから、「一億円当たってしまった! どうしよう!?」……というように、初めからそのレアな人物にスポットを当てた、レアな人物の物語というのはアリです。
でも、多額の借金を背負った男の物語というのがあって、こんな結末を迎えたとしたらどうでしょう。「一億円当たらないかなぁ」→「当たったあ!」→めでたしめでたし……めでたいのはお前(作者)のアタマじゃい! ということになります。
同じ宝くじの高額当選という出来事であっても、前者は物語の設定であり前提、それに対し後者は噴飯もののご都合主義となってしまうのです。

当たり前の話です。当たり前すぎて、ことさらこのように考えたり論じたりされることもちょっとないぐらい。でも、このことを整理して頭に置いておくことで、『人狼白書』に感じる違和感の正体も見えてきます。
物語でついていいウソの範囲。それは原則、物語の最初に唯一もしくは最大限のものとして設定されます。ウルフガイの場合、狼人間の存在が許容されるウソのリミットということになります。
ですから、ライオン・ヘッドのような呪術師、ラッキー・チャンスのような超能力者、大滝雷太のような別種の不死身人間、このレベルであれば、許容の範囲内になります。ところが、天使や悪魔となってくると、これはもうこれまでになかった宗教観という異物であって、初期設定を逸脱しています。まさに「話が違う」のです。
ここまで作者自身の人生観・世界観が変わり、作品の性格が変わるならば、初めから全く別の新作でやるべきでした。であれば、読者の好みの違いはあれ、何の問題もありませんでした。なぜそうしなかったのか、なぜ既存の作品の続きで新たなステージを表現しなければならなかったのか? 平井和正の作品論・作家論は、結局そこにブチ当たることになります。その後の“幻魔大戦”も過去の漫画、そして『新幻魔大戦』を発展させたもので、完全オリジナルの新作ではありませんでした。

 彼女は、つねにおれを教え導く役割を受け持っている“師”だったのである。現象界のことではない。おれは肉に埋もれた存在、狼男として、小学生時分から“師”を持った経験はなかった。永遠の転生輪廻のプロセスにおける不滅の霊魂としてのおれ――本質的な霊存在のおれにとっての“師”なのだ。その点をうまく理解してもらえただろうか?

それを理解できるかどうかは、読者がどれだけ作者の宗教観を(あらかじめ)理解しているかにかかっていると云っていいでしょう。ワタシのような、その後の作品から入った、いわゆる「神がかり」後の平井和正のステージをよく知った読者はいい。けれども、宗教に馴染みがあるわけでもない、オンタイムで読んできた読者からすれば、とうてい理解はおぼつかないでしょう。知識ゼロ、心得の無い読者に対して、説明不足の感は否めません。たとえ相手が天使だろうと、犬神明が拝跪するなんてありえない! そんな平岡正明に代表される読者の反応は、ごく当然のものだろうと思います。

なぜ、こんなことになってしまうのか。それはおそらく、作者のなかでこれが「ウソ」ではないからでしょう。ついていいウソの範囲どころではない、ウソじゃないんですよ、平井和正にとっては。本当なんだから、仕方がない。CIAやKGBが現実にあるように、天使も悪魔も現実にいる。現実を物語に持ち込んで、何の不都合があるのだと。
――天使はいるんですよ、犬神明のような物質世界のヒエラルキーに縛られない者も自然に跪いてしまう、真に尊い存在なんですよ。きみだって天使が眼の前に現れたら、きっとそうなる。たとえば、磁石は鉄を引きつけるよね。それは事実なんだよ。それを知らないのは、ただの無知ですよ。そんな読者のために、その原理を一から説明しなきゃいけないのかい? ――平井和正の心の声を憶測すると、そんな感じではないかと思います。なんだか、ワタシの想像上の平井和正に、ワタシ自身が説得されそうな気がしてきました。

作者と読者の「常識」のギャップ、これを埋めないままに、それまで築き上げてきたアダルトウルフガイの世界に作者の新境地を持ち込むことで、この作品は一種異様な問題作となりました。それでもワタシは、そのことでこの物語を単純に否定することはできません。それはワタシが作者の宗教観に理解があるからではありません。というよりもですね、この程度のツッコミどころは、あえて云おう、些事であると。

「わかっているさ。なによりも大事な家庭がなかったというのだろう。だが、おれにはもともとなにもなかった。家庭どころか、両親の顔もろくにおぼえていない。孤児だったんだ。四歳のころから、なにもかも自分で面倒を見なければならなかった。それがどんなものかわかるか? 他人に借りを作るのだけは我慢できなかった。誇りだけがおれを支えていたんだ。きみより惨めな境遇にいる人間は山ほどいる。そうした人々のことをきみは考えたことはあるまい。きみの目はなにも見ようとしない。自分のこと以外、念頭にないからだ。歪んだ心の鏡に映った自分の顔しか見ていないからだ。だから、きみは、自分の分け前がいかに大きいものかわからない」

これですよ。この雷に撃たれるような、ビリビリとシビれるこの科白ときたら! むろん、この矢島絵理子との応酬は、結果的に彼女を傷つけ、怨みを買い、敵対を決定的にしてしまいます。残酷で思慮を欠いた言葉のしもとであったのは間違いありません。だけど、やっぱりカッコいいんですよ、シビれるんですよ。物語のそこかしこに抹香くさいセンテンスは散りばめられていても、こういうところは我らがウルフの兄貴ですよ。こんなオッサンに兄貴呼ばわりされたくないって? いいなあ、小説のひとは、歳をとらなくて。
とまれ、皆さんもよくご承知のように、平井和正の問題作はこの『人狼白書』が唯一でもなければ、最大でもありません。読者を悩ます“言霊使い”平井和正の問題作メーカーの道のりが、ここから始まるのです。


Re: 『人狼白書』をもう一度 - Name: 弘田幸治 Mail - Home No.1477 - 2017/03/05(Sun) 23:24:12
 幻魔大戦→ウルフガイ読者の意見が聞けて楽しかったです。そうした読書体験にも関わらず、冷静な読解はさすがですね。
 やはり『人狼白書』は無理がありますよ。仰るとおり“別作品”として書かれるべきでした。

 しかしその“別作品”が存在する、というのが、この頃の平井和正でした。そう『真幻魔大戦』ですね。
 アダルトウルフガイ→真幻魔大戦を読んだ身としては、「ああ、平井さん、うまくやったなー」という感想をもちました。不死身の男犬神明には非物質的な力は必要ありませんが(むしろ作品の面白さとしては邪魔ですが)、タフガイでも何でもない小柄な東丈がじつは絶大な霊力を秘めているかもしれない、という物語は、『人狼白書』以後のシリーズの“反省”として感心したところでした。
 また『人狼白書』以後のシリーズに幻滅した読者へのプレゼントとでもいうべきオカルト要素抜きの『若き狼の肖像』を書いたことも好感が持てました。

 この頃の平井和正は明らかに「書き分け」ができていたのだと思います。世界観の変化なら説明がつかず、やはり世界設定との混同があったのではないかと思っています。

 笠井潔『ヴァンパイヤー戦争』はアダルトウルフガイへのオマージュとでもいうべき作品ですが、この作品ははじめから活劇→オカルトという構造になっていて、『人狼白書』以後のシリーズの変質に肯定的な読者もいたことをうかがわせます。
 カルロ・ギンズブルグ『闇の歴史』では、狼に変身した戦士が、冥界の魔女/妖術師を討ち取って、その年の豊穣をもたらす、という“異端”が紹介されていました。どこかでみた構図ですね(笑)。

 『人狼白書』以後のシリーズの変質は「失敗」だったと思うのですが、それでもさすがの平井和正だな、と身贔屓込みで思ってしまうところです。


Re: 『人狼白書』をもう一度 - Name: keep9 Mail - Home No.1478 - 2017/03/10(Fri) 17:58:07
後期平井和正の中での「完全オリジナルの新作」であった「地球樹の女神」・「ボヘミアンガラス・ストリート」及び「アブダクション」をどう位置付けていくかという問題が残りますが、……残りはするんですが、ざっくり言ってしまうとこの3作品、「世界」とか「宇宙」とかそのものをハンドリングしちゃう作品であったので、ついていい嘘の上限がほぼない、という考え方もできるかなと。上限がないと逆に、微妙な制約のもとにある「幻魔大戦」「ウルフガイ」と比べて完結が導き出し易かったということかもしれません。

特撮ヒーロー物である「ウルトラマン」や「仮面ライダー」が2010年あたりから多元宇宙を当然の前提とした世界観に移行していったこと、世界の異なるヒーローを共演させる仕掛けとしての多元宇宙の「活用」が進んでいったこと、そもそも「世界観」なんて言葉が普通の視聴者読者にも一般化していったプロセスは、SFガジェットの浸透(と拡散?)の実例としても興味深いものがあります。


Re: 『人狼白書』をもう一度 - Name: 弘田幸治 Mail - Home No.1479 - 2017/03/10(Fri) 23:23:56
 keep9さま。

 後期平井和正作品で読んでいるのは『地球樹の女神』と『ボヘミアンガラス・ストリート』だけなんですが、仰るとおり“「世界」とか「宇宙」とかそのものをハンドリングしちゃう作品”なんでよね。主人公はいわば“神”であって、“神のごとき”覚醒した東丈を失踪せざるをえなかった『真幻魔大戦』と違うところですね。
 ただそのぶん、主人公の“敵”が矮小化してしまったきらいがあったと思います。作品世界の“神”には誰もかないませんからね。

 作劇上、幻魔という“便利すぎる敵”を登場させてしまったこともその後の平井和正を祟ったのかもしれません。いつまでも戦える敵ですから、主人公勢のドラマに集中できる。

 特撮ヒーロー物については全く無知ですので、勘違いしてしまっている可能性大ですが、多元宇宙については「世界設定」の分野かなという気がします。
 世界観を“気にしない”作品といえば手塚治虫の一連のスターシステムなんてそうでしたね。ただ劇画革命以後はそれも鳴りを潜めるわけですが。

 俺の推測が正しければ、オールスター作品の復権は、世界観を“気にしない”客層の復権でもあります。時代は寄せる波引く波のようなものなのかもしれないと感じました。


女たちの『リオの狼男』 - Name: カナメ Mail - Home No.1475 - 2017/02/26(Sun) 10:47:52
ここで云う『リオの狼男』とは、ルナテックの電子書籍の書名です。祥伝社ノン・ノベルの『魔境の狼男』といったほうが通りはいいでしょう。でも、こちらのタイトルのほうが好きなんですよね。ルナテック電子書籍のアダルトウルフガイは、シリーズ構成も角川文庫版に準拠にしていて、まさにいいとこ取り。決定版と云えるでしょう。角川文庫版は構成はいいんですが、タイトルが、ね。
… I have a 狼は泣かず、
… I have a 人狼白書、
… あン、
… ウルフガイ 不死の血脈。
… なんでやねん!!! というね。

『リオの狼男』はシリーズでも随一のゲスト美女たちが乱舞する物語です。アダルトウルフガイ再読ロードの感想テキスト、今回はそんなボンドガールならぬ魅惑のウルフガールたちに焦点をあてて、振り返ってみようと思います。

■《一人目》 エリカ・フジタ
日系二世。三星商事の現地法人に勤務し、犬神明の通訳を務める。だが、ライオン・ヘッドの部下で都市ゲリラ人民解放戦線の女兵士という裏の顔を持つ。無類に愛くるしく、明は彼女を子猫や仔犬に喩えている。彼女の寄せる好意を明はわかっていたが、その想いに応えることはなかった。成熟した女性が好みということもあろうが、それよりも一途な愛に縛られることを厭うたがゆえだ。だが、そのことが彼女に悲惨な運命を招くことになる。生ける神、犬神明は悪人も善人も区別なく、近寄る者に悲運をもたらす。最後は可哀想でしたね。
初読時にはわからない、すべての筋書きを知ったうえでエリカのこの言葉を見ると、単に女の子らしく愛する男の身を案じているだけではない、自分の敵に回ろうとしている男をなんとか引き留めようとする必死な想いがわかってじわじわきます。
「ロボ、あなたはあたしのアミーゴ、死なないで。あたしのいうことをきいてよ。あたしを信じてよ、ロボったら……」

■《二人目》 ブランカ
リオの顔役フォルツナトの妻、ライオン・ヘッドの前妻でもあった。シリーズでも数少ない破滅しなかった女。エリカにはつれなかったのに、彼女とはあっさり“アダルト”な関係になってしまう。呪術師(マクンベーロ)でもある彼女には、明を待つ死地が視えていた。それでも彼女は数日間の休息の終わりに、すがって止めるのではなく、戦士を戦場に送り出した。彼女もまたアダルト。このあたり、前述のエリカとは対比的だ。互いの母国語で交わす別れの言葉が美しい。
「もうお行きなさい。サヨナラ、ロボ」
「アディオス、ブランカ」


■《番外》 石崎郷子
ゲストではないが、この並びに加えないわけにはいかない。ライオン・ヘッドのつかの間の妻。犬神明は親友の夫を手にかけたことになる。まさに怪物に怪物をぶつけた陰謀の絵図を知り、明は復讐の鬼となる。犬神明の月に代わっておしおきは怖ろしい。彼女を娶ったそのことだけで、すでにライオン・ヘッドの命運は尽きていたというのに。いや、やはりそれもこれも含めて、犬神明と同じ、生ける神である彼女がもたらす禍いなのだろう。登場はわずかだが、ニヒルで物憂げな存在感は抜群。
「むだなことだわ。いっそうむごたらしいことがあなたに起こるだけよ、ウルフ。この愚かしい人間社会では、あたしやウルフはアウトサイダーなんだわ」

■《三人目》 バルバラ
エリカの妹。同じ都市ゲリラのメンバー。エリカ殺しの犯人と誤解し、明を烈しく憎み復讐の炎を燃やす。だが、収容所の同じ牢獄で、明のうわ言を聞き、真実を知る。彼女は明の重荷になるまいと、猛毒蛇スルククに自らを咬ませ死を選ぶ。実はワタシの一番印象に残っているのが、このひとだったりします。のちの大滝志乃と通じるところがありますが、彼女の最期は志乃よりもずっと幸せだったようです。
「あなたのお喋りを聞いていると、身体が温かくなってくる……きっとあなたをよく知れば、好きにならずにはいられないわね。こんなに勇猛なのに、こんなにも優しいんだもの」

■《選外》 マリア・スコッティ
ブラジル軍保安部での階級は少佐、だが正体はKGBのエージェント。明の収容所脱出を手びきする。犬神明の評によれば、ちょっぴり美人で年増美人。選にはもれたが、後述するドナとの関係と、明の彼女にあびせた科白が秀逸につき、ここに記しておく。
「マリア・スコッティ少佐よ」「ティッシュ・ペーパーなんかに用はない」

■《四人目》 ドナ・フェレイラ
マリアの配下。明の緑の魔境(マット・グロッソ)行きに同行する。人間的にいいところはまるでなし、冷血な女殺し屋。なおかつ明にとっては、足手まといでもある。だが、明はそんな彼女を見捨てて置き去りにできない。そんなやさしさにつけ込む、悪い意味で女らしい狡さも持ち合わせている。
「死ぬとわかりきっているのに、かよわい女をジャングルに放り出すの?」「それなら、あたしを背負っていけばいいわ」「あたしは女だし、あんたみたいにタフじゃないのよ。へとへとに疲れてるし、つい我慢しきれなくなったのよ。それくらいあんただってわかってるでしょ」
ここまで図々しいと、かえって清々しいというか、妙な可愛げすら覚えてしまう。犬神明は一人称のト書きでこう云っている。――ドナ・フェレイラ、おれの遭遇したもっとも手強い厄病神だった。 このニュアンスはミソで、心底憎悪する相手なら、こんな云い方は決してしない。その微妙な心情はこちらにも伝わって、彼女はなんだか憎めない。平井和正のこういうキャラの造形、描き方って本当に名手だなと思います。
「せめて、あんたぐらい生きててほしかったよ、ドナ」「たのむから、まだ生きててくれ!」
ウルフのその祈り、その叫び、ワタシも同じ気持ちです。生きてはいないとわかっていても。エリカ、バルバラ姉妹とともに、ご冥福をお祈りします。


Re: 読者の声 - Name: カナメ Mail - Home No.1471 - 2017/02/20(Mon) 00:57:04
■両面の戦い
ワタシが(無印)幻魔大戦のファンとして声が大きいのだとすれば、劣勢のマイノリティとして、両面の戦いを強いられるからだと思います。一方は(無印)幻魔大戦なんてつまらない、どこが面白いの? という人々。そしてもう一方は、「幻魔大戦を毛嫌いする人々、それは哲学書に触れたことのない人々だ」なんてことをのたまう人々です。そういうこと云っちゃう? 困ったなぁ、って感じです。つまり後者もまた、(無印)幻魔大戦を良質のエンターテインメントと認めていないという点で、前者と同じ穴のムジナなのです。ワタシの敵ですよ(笑)。
(無印)幻魔大戦がいかにエンターテインメントであるか、それは以前にここで語りましたので繰り返しません。

No.1342 再読『幻魔大戦』
http://www1.rocketbbs.com/612/bbs.cgi?id=t_kaname&mode=pickup&no=1342

■読者のセクト
弘田さんとワタシの違い、それはシュミの違いに尽きると思います。ワタシはSFとか、基本興味ないんですよ。それは平井和正のファンですから、非現実・超現実設定が嫌いなワケじゃありません。でも、それよりは現実的フレームの中で描かれる物語のほうに食指が動く。ひっきょう、昨今のアニメもラノベもさっぱり興味がわかず、ハマっているのは、福本伸行だったり、『闇金ウシジマくん』だったりします。いまだに共感してくれるひとには出会ってないのですが、福本伸行なんて、けっこう平井和正と通じるところはあると思うんですけどね、長尺だけではなく(笑)。無印幻魔の長尺を非常識なんて云ってるひとは『アカギ』を読んでみたまえ。もっと非常識だから。『カイジ』だって、ひと晩の勝負をどんだけ続けてるんだってハナシでね。17歩→救出ゲーム→ワン・ポーカーの一連の勝負って、日を空けてないですからね。カイジくん、寝てないんですよ。『黄金の少女』だって、これに比べりゃかわいいもんです。特に『アカギ』は麻雀幻魔大戦と云うべきで、平井和正が麻雀をきっかけに心霊主義に目覚めたというのが納得できる。誰がなんと言おうと流れはあるし、ツキもある。確率なんて言ってるやつは麻雀をやる資格がない。これは『天』の科白ですが(大意)。

弘田さんって、たぶん朝ドラとか全然興味ないんじゃありません? 日常的フレームのなかで、ひとが泣いたり怒ったりして、そんなの面白い? みたいな。そういうところだと思うんですよ。だからワタシはこう云いたい。
(無印)幻魔大戦を毛嫌いする人々、それは朝ドラに興味のない人々だ。
これはたぶんかなり当たってるんじゃないかと思います。
平井和正はSF作家であると同時に、山本周五郎や大藪春彦にも傾倒した素地を持つ生々しい人間の心の襞の書き手でもあって、そこに跨る作家としての幅が、読者間のセクトの違いを生んでいる一因ではないかと思いますね。

■次回予報(執筆確率30%)
お小遣いに限りがあった高校生時代の筆者。『真幻魔大戦』も新書版には手が出せず、文庫本の刊行を待つ日々。そんななか、生頼範義画伯の衝撃の挿し絵を目撃する。その名も「犬の帝国」……!!


Re: 読者の声 - Name: 弘田幸治 Mail - Home No.1472 - 2017/02/20(Mon) 21:29:48
 たしか畑中佳樹だったと思うのですが、SFは読み返すのが怖い、と書いていました。
 こどもの頃に読んだ感激、感動、そういったものが作品評価を過剰なものにしている可能性があることを仄めかしていたんだと思います。SFの黄金時代はいつだって12歳だという言葉もあるくらいですしね。
 俺はいまはもう平井和正を読み返せない環境にあります。ですから平井和正を買いかぶっている話になるかもしれません。それを承知で読んでいただければ幸いです。

 >弘田さんって、たぶん朝ドラとか全然興味ないんじゃありません?

 うん鋭いですね(笑)。さすが。

 No.1342は当然読ませていただいていましたが、なるほど、そこにつながるわけですね。

 俺の場合、もう少し平井和正を評価していて、彼の描く人物たちは、大方のTVドラマやコミックに登場するような平面的なキャラクターではないと考えています。
 つまり平井和正の作品は文学であって、たんなるエンターテインメントではない、という評価をしています。
 少なくとも俺にとっては、たとえば『(無印)幻魔大戦』などは、ひとつの文学的体験を与えてくれたものでした。平井作品による文学的体験がなければ、たとえば三島由紀夫を読むようなことはなかったでしょう。

 山本周五郎が「本物の小説」と呼んでいましたが、文学と通俗小説は両立する、という立場を、俺もとります。三島由紀夫作品も通俗小説と文学の融合というところがあります。
 俺にとり平井和正の作品は、そうした「本物の小説」のひとつでした。

 「幻魔大戦を毛嫌いする人々、それは哲学書に触れたことのない人々だ」という立場は俺もとりません。しかし同時に「たんなるエンターテインメントだ」という立場もとりません。「エンターテインメントなんだから楽しめばいいのに」とは思わないんですね。俺はいつだって平井和正の作品と向きあうときは“真剣”でした。楽しむという気軽な態度で接することはできませんでした。まあこどもというのはそういうものなのかもしれません。
 赤裸々な人間性を描く文学というものは人を選びます。平井和正の作品はエンターテインメントという側面もありますから、そこだけを楽しむこともできるでしょう。なるほどベストセラー作家になるわけです。しかし俺は平井和正の作品に文学をみてしまった。平井和正がベストセラー作家であるのはもちろん嬉しかったのですが、それ以上に彼の作品を購読する「本物の小説」の理解者が多数いることが誇らしかったですね。一日本人として。

 しかしそれは幻想かもしれない、と気づかせてくれたのが、1980年代当時ベストセラーになっていた「戦後生まれの作家」たちによる作品群です。そこにあったのは「たんなるエンターテインメント」でした。文学性がまったく存在していませんでした。純文学ならぬ、いわば純エンタメでした。
 多少の文学性を残した中間小説を一掃したのが、この1980年代の純エンタメでした。いまとなってはそれも歴史の必然だと思えるのですが、当時の俺はそれに怒りを覚えていました。戦後日本がやっと手に入れた「本物の小説」、戦後日本文学を穢すものだと思ったのです。

 俺の怒りを慰めたのは平井和正の作品でした。純エンタメがベストセラーランキングを席巻する1980年代に、平井和正だけは“生き残っていた”、平井和正だけは違うんだ、というのが俺の胸の裡に秘めた小さな誇りでした。

 荒巻義雄が指摘したところでは、なぜ日本ではニューウェーブ運動が起きなかったかといえば、日本SF第一世代の書く小説が最初から文学性をもっていたからだといいます。ミステリでいえば松本清張ら、時代小説でいえば山本周五郎など、たんなるエンターテインメントではありませんでした。戦後日本文学の一翼だった。かつてPC-VANに、文学における戦後とは“大衆と文学の蜜月時代”という点で「俺たちの19世紀」だったのだ、と書いた覚えがあります。
 初期SF短編の頃に言われていたことですが、その日本SF第一世代のなかでももっとも文学に近いと目されていたのが平井和正でした。その平井和正の文学性が爆発したのが『(無印)幻魔大戦』だったというのが俺の評価です。その眩いばかりの文学性に痺れました。

 文学は人を選びます。俺は『(無印)幻魔大戦』を人に薦めることはありません。「毛嫌いされる」というのをそれほど否定的にとらえていません。人には本能、生理、直感というものがあります。『(無印)幻魔大戦』を忌避する方々というのは、そうとう感度がいいのではないか、と思っています。わざわざ心に重い軌跡を残す文学的体験など味わいたくもないという人もいるでしょうから。


 >■次回予報(執筆確率30%)
 >お小遣いに限りがあった高校生時代の筆者。『真幻魔大戦』も新書版には手が出せず、文庫本の刊行を待つ日々。そんななか、生頼範義画伯の衝撃の挿し絵を目撃する。その名も「犬の帝国」……!!

 執筆確率30%とは言わず書いて欲しいです。ぜひ読みたい。どんな挿絵だったか気になります。
 「犬の帝国」、あれ絶対フロイが出て来ると思っていたんですけどね。解脱前の若き日のフロイとか。犬だけに(笑)。


Re: 読者の声 - Name: カナメ Mail - Home No.1474 - 2017/02/26(Sun) 00:46:49
コメント、ありがとうございます。
実は書きものをしていて、ようやくちゃんと読みました。読むぐらいチャッチャと読んでもよさそうなものですが、弘田さんの文章って、こちらの“脳作業”も全部もっていかれかねませんので(笑)。
正直云いましてアップしたそばから、しょうもないことを云うてもうたと思ってます。フェイスブックに再掲しないのがその証拠。失敗作です。それでも弘田さんから読み応えのあるコメントを寄せてもらえたのですから、よしとしましょう。ヘヴィですよ。書きものをしたあとで読んで、やっぱり正解でした。
書きものとは『リオの狼男』(『魔境の狼男』)について。書き上げましたので、じきにアップできると思います。はっきり「次回予告」しておきます。『真幻魔大戦』についても、いずれ書きたいですね。先日読み終えた『人狼白書』について書きたいことが湧いてきていて、こちらのほうが先になりそうですが。


リツイートオブS・M - Name: カナメ Mail - Home No.1473 - 2017/02/25(Sat) 08:29:37
ハッシュタグによるお題
#名前の最初をどにすると強そう

どMグループというのも、ある意味強そうだ。

ミスターどS
「ゾンビー島の訓練生諸君、わさびシュークリームをご賞味いただいたあとは、熱湯風呂であたたまっていただこう」


(初出 Twitter)
再掲にあたり編集しました。ミスターどSによって養成されたのが、どMグループという解釈が成り立ちそうです。

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