狼の怨歌かレクイエムか 読者からしばしば質問が寄せられ、「怨歌」は「おんか」と読むのか、それとも「えんか」と読むのか教えて欲しいと頼まれますが、実は「レクイエム」なのです。 とにかく最初は『狼の怨歌』にはレクイエムとルビがしっかり振られておりました。それが何の手違いか、実際に本になった時、ルビが脱落してしまっていたのです。ですから、『狼の紋章』の最初の版、ハヤカワ文庫版では「紋章」にエンブレムとルビが付いています。後の版では削られてしまいましたが、当時の作者の構想では、エンブレム、レクイエムと題名に凝ったつもりだったのです。〈1985年10月 徳間書店版あとがき〉はっ、と気が付いて、e文庫が以前に販売していたeブック『狼の怨歌』を開いたらありましたよ。残念ながら、現在購入可能な電子書籍には収録されていません。ワタシら病的マニアに云わせれば、全部載っけりゃいいんだよ、てなもんですが、e文庫の中のひとの意図を推し量れば、これからはじめて平井和正の作品に触れる読者とか、より広いマーケットを視野に入れてのことかもしれません。なにしろ、トクマノベルズ版のあとがきがヤバすぎる(笑)。もちろん、そういうところも込みで平井和正だということは、ワタシはよくわきまえておりますが、そういう読者ばかりではないですからね。出版社を替え、さらに判型を替えた新刊本に書き下ろされるあとがきは、その作品のあとがきを逸脱して、すでに読んでいるのに、買っているのに、それでも付き合ってくれる読者に対するサービスの意味合いが濃い。その極めつけが、電撃文庫版『月光魔術團』に収録されたリアル犬神明インタビューで、もはや作品とは――犬神明つながりというわずかな接点を除き――なんの関係もない。当然、現行の電子書籍にも収録されていません。事情を知らない読者がみたら、なんじゃこりゃですよ。あとがきも作品の一部、と考えるなら、あまり書かれた年代が小説とはへだたっているそれは、違和感をもたらすかもしれません。そういったところの考慮、配慮なんだろうなと憶測することで、自らの不満をなだめることにします。マニアはその時代に出た本を頑張って手に入れるなり、大事に持っておけということでしょう。それでも、そうした平井和正の非・小説のエッセイ、あとがき、雑文をまとめてeブックにしてほしいと願っています。ワタシは小説や原作漫画だけを愉しむタイプの読者にはなれない。人生もひっくるめて作品というタイプのアーティストはいて、平井和正はその典型のひとりだと思っています。平井和正のそういうところをスルーするなんて、なんて勿体ないと思う。矢沢永吉のレコードだけ聴いてるようなもんですよ。で、話が後ろ前になりました。これを書くことになった、そもそものきっかけは、狼の怨歌【レクイエム】[新版]が早川書房から出るからです。狼の紋章【エンブレム】〔新版〕とともに1月6日開催の生?ョ範義展でも先行販売されるそうですよ。http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013792/ 言霊を引用