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お盆厨が行く - Name: マーリン No.975 - 2005/08/13(Sat) 22:48:04
夏風邪を通り過ぎて夏バテになってしまったマーリンがまた来てしまいましたよ。
さて、みなさんこんばんわ。
>『冷戦構造の終了』についてなんですが、これは先に私が言ったんですが、その意図は、冷戦構造下での安保体制の元で一種の安寧を得た日本へ向けた平井和正なりのある種の“意向返し”の様な面もあったのではないかと思って述べたのであります。80年代の無風状態のなかで、60年代から続く挫折感や怨念みたいなもの、某教祖に対する疑念みたいなものや創作活動のモチュベーション等を“宇宙意識と人間の破壊衝動”という題材に昇華させて、80年代のあの時期に向けて投げかけた“意向返し”だったんだろうなぁ・・・と私は思ったのでした。
けれど、ペレストロイカを引き金に始まった冷戦構造の終焉・プラザ合意を機に始まった80年代後半〜現在をもって続く日本の迷走によって『幻魔大戦』世界の続行はいったん棚上げとなり「黄金の少女」「地球樹の女神」への路線変更にいたったのだろうと思っています。「地球樹」と「ぼく地球」が同時期に開始されヒーロー・ヒロインのキャラクター像も比較的似ているのもあの時代の気分と言うものなのでしょう。
まぁ、と言ってSa−Qさんの言う“大きい物語”云々と言うのも全然否定する気もなく、むしろ“大きい物語”と言うものが成立しなくなったからこそ、その空白を埋めるがごとく平井和正自身もその“魔法使い的世界観”を肥大させていったのでしょう。プロが創作活動を継続していくためには何等かの精神的支柱は無くてはならないものなのでしょう。
私自身はまったく『deep』本作を読んでもいないので、その作品の出来について何等かの発言を行うことは良いことではないのですが、まぁ、今後とも『deep』を読む気はさらさらありませんので、悪いと思いつつ思うことを綴ります。
“魔法使い的世界観”の継続によって『deep』に登場する東丈も魔法使いとして登場するだろうし、魔法使いにとってアイテムは必要なものですから振り子がそれにあたるものとして登場するのだろうとも思っておりました。また性魔法といいものが魔法として大きな部分を占めているので、当然東丈もやりまくるのであろうと予想していました。
皆さんのネタバレを読むかぎりにおいて、大まかに私の予想は当たっていたのだろうと思います。
東丈が“歩く時空連続体”なのであるならば当然東三千子も“時空連続体”でありましょう。二人は時空間連続体なのですから当然互いに時空間的につながっており(カタツムリが一つの体で雌雄同体であるのと同じ様に、丈と三千子も時空連続体的カタツムリなのだと思えばよいのか・・・)丈も魔法使いとして登場するならば、それと連動して三千子の方も女神的存在をやめてトリックスター的な存在に連動して変化するのだろうなぁとは考えてもみました。(どういう風になるのかまでは想像できませんが)
『幻魔大戦』の様な終わらない物語を終わらせる手段としては“永劫回帰”という手がつかえるかなとは思ってみたこともあります。まあ、一種のぐるぐる回りですね。それを読む者に匂わせて適当なところで終わらせる。大体、無限に増加していく並行宇宙の物語を終わらせるにはそれぐらいしかないでしょう。
東丈が“偽救世主”であったことについては私は何等かのショックもありません。
実際、歴史上に存在した教祖の中にも後継者を定めず自分の教えは自分の一代限りで終わりにしちゃった人もいるくらいですから、自分が偽救世主であることを悟ってトンズラしちゃう人がいてもおかしくないでしょう。それもその人にとては誠実な宗教的行為と言うもんです。
>井沢郁江が、堕ちゆく教祖像としての役割を演じることになる<というのも単なる決め付けに過ぎないかもしれませんよ。
郁江がGENKENの蓮如的存在となり、キリスト教やイスラム教に匹敵する世界宗教となり(光のネットワーク教とかさ)数世紀続く教団になる地球世界もあるのかも知れませんから。(人類が救われるかどうかは別ですが、人類全てが救われる状態とは一体どんな状態なのでしょうね?幻魔を退ければ人類は救われるというもんなんでしょうか?)
と言うか、私にとっては丈が偽救世主であったことよりも先週の「はじめの一歩」の沢村の結末の方がよっぽど問題ですよ。こんなのあり!! カナメさん的にはどうよ?
>Sa−Qさん
>『deep』を通じて芯になっているのは「東丈」の存在でしたが、この「東丈」は、あたかも「データベース」からその場、その世界毎に「呼び出され、構成される」存在なのでは……というのが、今のワタシの仮説です(^_^;)。
アーサーCクラークの『都市と星』みたいなもんを想定してよいですか?
時空連続体データベースみたいな感じ。
2ちゃんねるの平井スレットは人大杉状態なので判りませんが。『deep』についてのまとまった感想がカナメさんの所でしか見受けられないこと少々気になります。公式や狼亭には全然感想がありません。ネタバレ感想を控えているのか、携帯小説に興味がないのか、作品が全然つまんなかったので感想する気も失せているのか。今の段階では何等かも証明してない訳ですが。
なんだか『deep』って、今、日曜朝7時にTBS系で放映されている『エウレカセブン』という作画アベレージだけがやたら高いがストーリー構成がグズグズの屑アニメがあるのですが、『deep』ってなんかその『エウレカ』を連想されてしかたない私です。『エウレカセブン』もSa−Qさんの言う“大きい物語”が成立しない時代に製作されたアニメでしかないのかもしれません。プロデューサー含め製作サイドが何していいかわからなくなっているんでしょうね。まぁ、今後2・30年ぐらいでまた“大きい物語”が復活する時代が再び登場するのかもしれませんけど。未来を心配してもしかたないか。
ネットワークの正負面とか。 - Name: トモアキ No.972 - 2005/08/12(Fri) 21:37:14
ご閲覧の皆様、はじめまして。
平井先生関連板に書くのはほぼ初めてです。
お気にさわりましたらお詫びします。
下の書き込みでSa-Qさんがガンダムについてちょっと触れていっらしゃいましたが、富野由悠季さんが最近のインタビューにて現実面のマイナス面をも受け止めて現実に地球で暮らしていくの今考えるニュータイプというお考えと、今の平井先生の頑張れ携帯小説という考えでは、個人的には前者を肯定したいと感じております。紙資源の保護のみだけではちょっと違うんじゃという感覚はあります。ネットで個人が匿名巨大掲示板で作品の持論をあんまりカンシンしない形で書いている。ネットの危険性認めても良いお立場でもある。
アブダクション改定板とかもちょっと進めて欲しい気がします。ボクはあれ以来先生の新作あまり読む気がしません。
Deepでは現実の家庭が大事てな、ことを表されているようですが(まだ未読です)ダウンロード可能な環境に携帯代えたばかりです。それでも希求力に欠けるんです。正直。
美少年や美少女ばかり出ていなければ、まだ家族大事ってのも感じ変るかもなんですけど。
皆さんの感想がなければ恐らく携帯会社変えなったかもしれないです。
とはいえ今月は経済的に苦しく来月以降にDeep感想書くかもしれません。
自分のBLOGを復活させて触れてもよいかもですね。
突然の書き込み失礼いたしました。
(No Subject) - Name: Sa−Q No.971 - 2005/08/10(Wed) 23:05:56
>カナメさん
どうもです。
先日書いた「『冷戦構造の終了』というのは、実はかなり本質的なのではないか」というのは、まさに↓の部分なのですよね。
>>
「宗教」には愛想が尽きた。でも、救世主信仰は抱き続けていて、いつか「本物」が現れて、人類を導いてくれるのではないか。そのことを自分の作った世界で実験してみた。それが『幻魔大戦』なわけです。
<<
「冷戦」にしろ、「宗教」(笑)にしろ、あるいは「高度経済成長」でもいいかな。そういう”大きな物語”が現実世界で通用しなくなった時に、小説という形で”大きな物語”を「捏造」したモノが、まさに’80年代前半の各『幻魔大戦』群だった、というのがワタシの中での位置づけです。
『ガンダム』が「宇宙世紀」という”大きな物語”を「捏造」していたのと同じというか(笑)。
翻って、『幻魔大戦deep』は、既にそのような「捏造」さえ成り立たない時代の物語、だと感じます。
『新世紀 エヴァンゲリオン』が背後の”大きな物語”ゆえに、ではなく、「キャラ萌え」ゆえにブレイクしたのと同じ……と言えば言い過ぎでしょうか。
※『deep』が単なる「キャラ萌え」だ、というのではありません。が、
色々と「伏線」らしきモノはあるものの、背後に”大きな物語”を
持たなそうなのは確かなように感じます。
『deep』を通じて芯になっているのは「東丈」の存在でしたが、この「東丈」は、あたかも「データベース」からその場、その世界毎に「呼び出され、構成される」存在なのでは……というのが、今のワタシの仮説です(^_^;)。
# この間読み直した『動物化するポストモダン』に毒され過ぎカモ(^_^;;;)
幻魔大戦の分裂 - Name: カナメ No.970 - 2005/08/10(Wed) 12:59:44
『幻魔大戦』という物語は、もともと分裂を内包していたと思うのです。
「宗教」には愛想が尽きた。でも、救世主信仰は抱き続けていて、いつか「本物」が現れて、人類を導いてくれるのではないか。そのことを自分の作った世界で実験してみた。それが『幻魔大戦』なわけです。
しかし、書けば書くほど、考えれば考えるほど、人間は救いなく、理想は程遠い。本来なら、東丈が新宗教の教祖として堕落していくプロセスを描くのが、真にリアルな物語のオチとなるはずです。でも、それはできなかった。そこで、彼は失踪することになる。
結果、東丈は姿を消すことで神格化したまま守られ、代わりに井沢郁江が、堕ちゆく教祖像としての役割を演じることになる。
(未完)
GENKENとゴレンジャー(意味無し=ネタバレ) - Name: 東京丈 No.969 - 2005/08/09(Tue) 20:06:11
こんさんレス有り難うございます。幻魔大戦の宗教小説的なもう一つの顔を、ボクは無意識に避けて通っていたような気がします。
ボクは、「偽救世主」という言葉は言うほど軽いものではないと思っているのです。だって、もし「ハルマゲドン」連載前後にこの言葉が作者から発表されたとしたら、大変なことになっていたと思いませんか? 「ハルマゲドン」での郁江と高鳥が取引を行うシークエンスで、どれだけのファンが驚き、おのが目を疑ったことか。
東丈の説いた「光のネットワーク」が、幻魔に対する唯一無二の武器だと信じ、GENKENを人類最後の砦と信じて読んでいた当時の読者(ボクのことですけど)に対し――東丈は「偽救世主」だったんだよ。GENKENは偽救世主の「乗り物」に過ぎなかったんだよ。と告げることが、著しく回復困難なショックを読者に与えるであろうことは容易に想像しえたわけです。
これは想像ですけど、あれほど読者を夢中にした時空を跨る、複雑重厚にして芳醇な作品世界を構築しておきながら、自らあっさりと「偽救世主」と切り捨てた作者の心中や如何ばかりか。これを韜晦とか「棚上げ」と呼ぶのは余りに酷ではないかと思ったりしています。
こんさんがいわれるように、そこに至るまでの経緯の説明は確かに不足しているかもしれません。
ただdeepは、幻魔大戦のストレートな続編ではありません。幻魔大戦の人間関係を、どっか違う趣向の世界に置き換えた小説(石ノ森章太郎はハードな「ゴレンジャー」を「ゴレンジャーごっこ」にシフトチェンジしたことと似てる?)であるので、違う世界で生きた東丈の悩みや苦しみには長く用紙を割けなかったのかもしれません。
同一人物でありながら、記憶を失っているために別人として振る舞う。記憶を取り戻すことが物語のテーマだった筈なのに、取り戻さずに終わってしまうことすらある白日夢のような小説が、平井ワールドの最大の特徴ですからね。
郁江については、東丈の不在後、崩壊してゆく組織を看取る(あるいは崩壊を促進させる)役割以外はなかった。そんな損な役回りを振られてしまっただけ、という印象がボクにはあります。「無印の郁江=某女カリスマ宗教家」という話についてはよく判りません。というか誰をモデルにした、程度の関心に過ぎなかったりしています。
津堂さんの第二弾は「萌えろ狼男」で決まり - Name: カナメ No.968 - 2005/08/07(Sun) 21:05:06
「放送禁止映像大全」という本に、映画『ウルフガイ燃えろ狼男』が取り上げられていましたので、お知らせしておきます。
紹介されている中身は薄いです。半分は「放送禁止」ではない、『狼の紋章』についてですし(これまた薄い)。
http://www.boople.com/servlet/AFsearch?iis=4861990041
GRENの意味 - Name: カナメ No.967 - 2005/08/07(Sun) 20:31:04
幻魔大戦deepを再読しています。ストーリーの全貌を知った上で最初から読み返せば、新たに気付くこともあるでしょう。
ひとつ大事なことを申し上げておきます。そもそも論理的に破綻しているものを論理的に読解、解読しようとしたところで無駄なことだということです。真実は「平井和正もすっかりモーロクしちゃったなー」ということかもしれず、その可能性を直視せずして、あーでもない、こーでもない、とディスカッションしても、傍目には微笑ましいだけでしょう。
再読の結果、ワタシの中で少しは整理がつけば、ドコモ組の皆さんの発言にも、より適切なコメントができると思います。とりあえず「GREN」は「ぐれんッ」以上の意味はないと思いますけどね。
東京丈さんへのレス - Name: こん No.966 - 2005/08/07(Sun) 15:00:56
東京丈さん、読み応えのある投稿、ありがとうございます。
つまんないぼくの書き込みも、こうした投稿の多少の呼び水にはなったのかな? と勝手に思うことにして、またまた駄文ですが、つらつら東京丈さんへのレスを書いてみます。
>少年・東丈の行動を『偽救世主』と完全否定する容赦無さ
これは、確かにそうなんですが、ぼくはどうもこの展開にやや不満を持ちました。
だって、無印の東丈は本気で自分が救世主であることを、否定していましたから。
だがそれでも結果として、偽救世主となってしまった自分に気がついて、彼は失踪したのだ、と平井和正は言いたいのでしょうか。
しかし、しかしですよ。それならドラマ論的な見方からいうとですね、東丈が、その失踪にいたるまでの心の葛藤を描いてほしかった。
そこをすぽ〜ん、と抜かして、たかだか、みちるに振り子を目の前で振られて、「あなたは偽救世主になります」と一言、言われたくらいで、無印幻魔大戦の東丈の軌跡を否定する。
それはあんまりにも、おめでたすぎの展開ではありませんか、と感じるのです。
もう一つ、「完全否定する容赦無さ」と東京丈さんは、お書きになっていますが、どうもぼくにはそこまで鋭い切り味で、平井和正が無印の東丈の軌跡、あるいはGENKENを否定しているとは思えない。
作者の中にまだ「棚上げ」している部分があるように感じ、そこがどうにもぬるい感を受ける。
作者自身、もうハルマゲドンも某女カリスマ宗教家も、内心、実は最大の関心事ではないんだけど、一応の現在の心境、所信表明として「偽救世主・東丈」を否定してみせたにすぎないという感を受けるのです。
あまり好きでない2ちゃんねるですが、そこの書き込みに「無印の郁江=某女カリスマ宗教家」という指摘があり、大きく納得したものですが、とすれば、平井和正が幻魔大戦の続編で本来、否定すべきなのは、郁江であって丈ではないでしょう。
それがなぜか郁江をスルーして、丈の軌跡を否定して、それでよしとする。率直に言って、どうにもピントがずれているとしか思えない。それが言い過ぎならやはり「棚上げ」を感じる。「GENKENの考察」の中味に触れないのは、だからじゃないですかね?
ぼくはもちろん、平井和正の、プロットを決めずに言霊の赴くまま、ライブ感覚で物語をドライブさせていく執筆方法を否定するものではありません。
しかし、GENKENの東丈を否定したい、あるいは家族は大事というのがテーマなら、美恵だの美叡だののドタバタにあそこまでページを割くこともないでしょう。
幻魔大戦deep、どうにもプロットどころか、テーマすら決めずに、物語をドライブさせている感を受ける。
ここまで書いて、結論はやはり東京丈さん、カナメさんがおっしゃる『平井和正はどういうつもりで書いたのか?』のセリフを、ぼくも言いたいようです。
ん〜。
幻魔大戦deep八巻読了・ファイナルだよ(ネタバレ有り。注意!) - Name: 東京丈 No.965 - 2005/08/06(Sat) 21:24:02
神々は人間だけのために泣く
つくられた神々には力無く
血塗られた水を清める高き人の智慧は何処へ
ようやく幻魔大戦deepを読了しましたので、遅まきながら皆さんの書き込みも拝見しました。
幻魔大戦deepのラストを読み終わったこのなんとも割り切れない気持ちの正体は、deepの仕上がりの所為であるのは勿論でありまして、皆さんが不満を表明されていた部分に対しては全面的に賛成するものです。
それにしてもオレ、頭悪いのかなー。deepっていとも簡単に、まるで襖を開いて和室から廊下に出るかの如く世界を移動するものだから、丈や美恵が存在する今の世界が誰の世界で、そこには美叡がいるのかとか、東家は無事なのかとか、全然分からな〜いんですけど。合計幾つの世界があったのかも勘定出来なければ、そこが幻魔シリーズのどの世界を指すのかすら見当つかなかったですね。
でも文中、「この美恵はどうみても美叡の校正ミスだろー」みたいな箇所もあったので、作者ですら訳わからなくなっていたのだな、と自分を慰めながら読みましたけども。
結局、deepがいいたかったのは何だったのでしょう。皆さんがいわれたように、ハルマゲドンが失中した以上、世に問う意味がなくなったと思われる幻魔大戦が――正統な続編ではないにせよ――何故今になって、復活したのでしょうか。
カナメさんの下の書き込みで『ワタシの関心は、平井和正はどういうつもりで書いたのか?』とありましたが、ボクの興味もまさに「コレ」に尽きます。平井和正はdeepをどういう積もりで書いたのか、ボクも知りたい。それはもオ〜熱烈に、このような結末を書いた作者の了見を問いたいのです。
#まさかあのくだけた東丈が書きたかったの? それだけ?
ということで、以後は殆ど妄想に基づいて散文的にdeepを裏読みしてみたいと思っています。駄文もこれで最後ですから、もう少しお付き合い下さい。
・つくられた神々
幻魔大戦シリーズの『預言書』としての側面は、暦が新世紀を迎えた時点で役割を終えたと思われます。もしかして作者は、二十世紀が終わる年よりかなり前から救世主小説の手詰まりに気付いていたのかもしれません。deepにて東丈の失踪の理由はGENKENから逃げ出したのが真相、と明らかにされました。東丈が失踪した時点で幻魔大戦が頓挫することは確定し、作者自ら「すべての火山活動の終焉を迎えた死火山」と語っていたように、『ハルマゲドン』以降、続編が書かれることはありませんでした(幻魔大戦DNAはタイトルのみなので除く)。
そんな幻魔大戦が、なぜ今になって「死火山」の看板を下ろし、deepとして復活したのか。作者の枕元に、東丈はどんな顔で帰還したのでしょうか。
ボクは、コミックのノベライズから救世主小説へとダイナミックに変化していった幻魔大戦に、新たな趣向が浮かんだから、だと思っています。「GENKENなどという新宗教めいた組織は嫌い」と――新宗教団体そのものなわけですが――身も蓋もないことを東丈にいわせ、少年・東丈の行動を『偽救世主』と完全否定する容赦無さは、作者が全ての宗教活動に絶望している証左でしょう。
丈はさらにいいます。
「架空の神には人類救済の力はない」
「大宗教の神は、架空の神だとわかるしか解決のすべはないだろうな」
「唯一絶対神は悪魔の一部だと思う」
世界最大の宗教である基督教と、同じ猶太教を祖に持つ回教を、丈は一刀両断にします。大宗教の神は、架空の神だから人類を救済など出来はしない。むしろ架空の神への信仰から古来どれだけ血が流されたことか、と。それは唯一絶対神への信仰は悪魔の属性だからである、とまで言い切ります。
丈は、『宇宙意志』が唯一の真実だともいいます。振り子によって常に宇宙意志との交信を試み、「信じずにして信じる」極意を得ることが肝要であると説きます。要するに、あらゆる信仰心は有毒であるといいたいのでしょうか。ボクには単に、GENKEN教から振り子教に宗旨替えしただけのようにも見えるんですが(^^;;
・GRENの神=幻魔司政官シグ?
美学に拘る幻魔といえばコミック幻魔大戦に登場した幻魔司令官シグを思い出します。
ボカぁ読みましたよ。この感想を書くためだけにコミック幻魔大戦を。十年ぶりぐらいに再読したのですが、面白かったなあ。というか、心が震えて泣けた。
本当に、東丈は徹底的に鍛えられてます。ベガやルーナ、あるいはドク・タイガーなどから、寄ってたかって鍛えられる。敵の幻魔司令官・シグにすら鍛えられちゃう始末。
改めてコミック幻魔大戦を読むと、思ったより幻魔司令官の登場コマ数の多いことに驚かされます。シグは、東丈を前にして滅びの美学を切々と説く。
幻魔大戦deepでは、ルナがフロイから伝えられた幻魔大王の『虚無の咆哮』を丈に聞かせたり、髑髏の月を見せたり、コミック版で起きた富士山の大噴火を予告したりと、コミック幻魔への原点回帰を思わせるシークエンスが多いので、幻魔司令官シグが登場しても悪くは無いんですが、如何せん唐突だという印象は拭えませんでした。だって、今まで無印幻魔からdeepに至るまで、陰日向に東丈を支えて――もとい鍛えてきたのがこの幻魔司令官だったなんて話、俄に信じられないでしょう?
そういえば確か真幻魔の「幻魔書」で、大昔に地球に来寇した幻魔司政官の土冦化した魔族がルキ○ェルだという話があったので、もしかしたら『奴』が幻魔司令官シグで、『彼』がルキ○ェルだったということになるのかなあ……(幻魔宇宙3の人名辞典では、『奴』が由比正雪に取り憑いた幻魔で、『彼』が土冦幻魔で魔王サ○ンだと信じている幻魔とある。幻魔宇宙3の時点では「幻魔書」は刊行されてない筈なので、これは確定した事実ではない? 昔過ぎてもう忘れてしまいましたよ)
もしスタイリッシュな敵がシグではないとしたら、他に「魔族でありながら比類無い英雄」とは誰なのでしょう。魔人由比正雪? あるいは蛮人ダツラが従者にした幻魔? もしかして獣人ヘスフイ? 比類無い英雄といえば真っ先に思い出すのは、我らが隣人・サイボーグ戦士ベガですが、まさか?
・丈と三千子の微妙な関係
今思うとdeepは倒置法で書かれていたのですね。滅びを思わせる、コミック幻魔のラストシーンである「髑髏の月」をサンシャインボーイに見せられることから、一気に幻魔の世界へ突入していきましたから。
幻魔大戦という長大な物語のクライマックスに幻魔宇宙の発端といえるコミック幻魔を持ってくるラストは、一見上手くまとまっていて見事です。ですが、途中で登場した人物やエピソードがばっさり置き去りにされてしまいました。
シレーヌって誰よ。あの変な武道の達人は何だったのよ。サンシャインボーイは見たままの有名人だったのかよ。木村市枝との再会はあれっきりかよ。原稿用紙50枚に登るというdeep版「幻魔の標的」、「GENKENの考察」には触れずじまいかよっ!
さて、斉天大聖と東丈との最終対決は、人類が滅び去ったビッグアップルを舞台にしながら、大した戦闘もなく肩すかしで終わりました。結局、斉天大聖は東丈に化けていた幻魔司令官・シグで良かったのでしょうか。
結論を出す前に、ちょっと気になることを書いてみます。
一卵性双生児のようによく似た姉弟の東丈と三千子は、周囲も羨むほどの絆で結ばれていました。三千子はコミック幻魔では、お嫁に行けなくてもずっと丈を見守っていると密かに誓っていましたし、無印幻魔での三千子は、丈の最大の理解者でした。
が、deepの三千子は違うのです。サンシャインボーイと知り合った三千子は、最愛の弟を置いて、家にも戻らず遊び歩いています。え〜自分の分身のように接していた大切な丈は置き去りですか、三千子さん。
ボクが気になったのは、丈がようやく見違えるように若返り、めっきり垢抜けた姉の三千子を捕まえた時の会話です。魂があれほど親密に結びついていた二人が、ウソのような空虚な会話を交わすのです。
ボクはdeepの一巻からずっと、丈と三千子との会話に僅かな違和感を感じていました。たとえば八巻下で斉天大聖の話をしている丈に、三千子は「あなたは(斉天大聖を)幻魔大王といったわ」と言い張って斉天大聖=幻魔大王と印象操作するかのごとくミスリードします。あるいは美叡を「あなたの姪」と呟いた三千子に「僕達の姪」と丈が言い直したり、雛崎みゆきのことを人ごとのように話す三千子に、「『ぼくら』には素敵なお母さんが必要だったんだ」と二人が姉弟だということを三千子に思い出させるように強調する辺り。一卵性双生児のように親密で、以心伝心だったこの姉弟に、一体何があったのでしょうか。
ボクは、斉天大聖の登場と東姉弟の離反は大いに関係あり、と見ています。いや、斉天大聖とは実は東三千子だったのではないかとすら考えているのです。え? どうして? 何故なの?
いえね、きっかけはおみゃーさんの書き込みなんですけどね(爆) 炎に包まれて死ぬはずだった三千子が生き延びたために、ルナ王女は幻魔大戦から退場せざるを得なくなる。地球を救う女神役を三千子に奪われたからです。にもかかわらず、今度の女神は雛崎みゆきだというではないですか。それも一千年に一度逢えるかどうかわからないという神話級の女神様。
東丈は、モリアーティ教授のような悪の帝王を夢見るシャーロック・ホームズの逸話を繰り返し語ります。それは一見、救世主への道を辿ろうとしていたかつての丈も、悪を行使する誘惑に堪えかね、大魔王に憧れることもあったのだな、と読むこともできます。でもボクは今更丈が悪魔に憧れることは無いなと思うのです。過去生に於いて幾度も魔王に転生した丈です。悪魔に唆走されることの退屈さは厭という程判っている筈なのですから。
だからボクはこれは丈のことを言っているのではない、と感じたのです。ではシャーロック・ホームズとは誰でしょう――だから東三千子なのです。善の女神である三千子が、善悪を極め今や宇宙意志と一体となりつつある偉大な弟に成り代わろうと思いたったのです。deepでは三千子がトリックスターだった。丈を見守るという呪縛から解き放たれた三千子のお巫山戯に、斉天大聖ごっこは如何にも相応しい。二人のぎごちない対話は、そんな姉のお巫山戯を弟が諫めようとした所為だったのではないでしょうか。
確かに東丈を好敵手に育てるためにと、鍛えていたのは幻魔司令官シグだったのかもしれません。ですが、幻魔大王そのものである丈と同じ力をもつ斉天大聖がシグだとは思えない。一介の幻魔司令官では役不足なのです。丈が幻魔大王なら、三千子が斉天大聖であるべきなのです。
では何故、三千子は幼児の東丈となって現れたのか。それは三千子をマエストロと呼んで崇拝するサンシャインボーイを思い出して下さい。彼(女)は世界を移動する度に性別を恣意的に入れ替えて登場します。弟子のサンチャンが出来るのなら師匠もできるのが道理。元々黒曜石のような眸を持つよく似た姉弟でしたから、三千子が男になれば丈そっくりになるのも又、道理なのであります。
以上がボクの三千子=斉天大聖説です。おみゃーさんがいわれたように、そもそも炎に焼かれて退場するはずだった三千子が生き残ってしまったことから全ては始まったのです。
・鎮魂歌とは……?
作者がdeep執筆中、近況(2004/10/19)に書いた内容が非常に気になっています。「deepが東丈ならびに作家平井和正への鎮魂歌となるかも知れない」というあの書き込みです。
確か初めに登場した五十代の東丈は、かつて何冊か本を出版したことのある超能力研究家ではありませんでしたか? それが世界が変わるといつの間にか作家になっている。みちるに小説の書き方を指南したり、懸賞に応募して作家として再デビューしようとした形跡はみられますが、誰にも慕われるoyabunとなった東丈の精神生活は作家のそれではなかった。だからクライマックスで、東丈が斉天大聖に『作家』が小説を書く素晴らしさを説くシークエンスに違和感ありまくりだったのです。東丈が初めから平井和正が投影された作家として造形されていたのなら判る。でも美恵とスパイさながらに危険な脱出劇をこなしていた東丈が、「作家が小説を書くのは小説家が世界を産み出すに等しい」みたいなことを言い出しても、何それ? ですよ。勿論平井和正本人の思いが投影されているのは間違いありません。もともと東丈はスーパー平井和正だったのだから。でも、やっぱり唐突なのです。deepの一体どこが作家平井和正への鎮魂歌なのか。この辺りはボクの想像を絶しています。是非どなたかに解説していただければ、と思っています。
最後に報告ですが、DOCOMOのおはなしプランBIGにしたお陰で、今月の請求額は平時より3000円〜4000円のアップに留まりました。おそらく八月分とのトータル請求額は、一万円前後となるのではないでしょうか。CDを買うのと同じことになりますね。早く読める代わりに手元には残らない。まあ、それもよしとしましょう。
心にだけ残る読書、そんな読書も偶にはいいんじゃない?
・(おまけ)GRENの神とは?
GRENとは語感からGENKENを連想させますが、ちょっと無理がありますよね。でちょっと調べてみました。GRENという英語はないし、GR(E)EN=緑では意味が通じない。
アナグラムかなと思っていろいろ試してみました。GREN(A)はスペイン語ではぼさぼさの髪になるとのこと。これも違うかな。
NEGR(O)はスペイン語では黒色となり、Humor Negroはブラックユーモアという意味になるようです。なんか意味深ですね。黒人といえばソニーを思い出すし、黒色といえば黒曜石の眸をもつ東姉弟を連想させます。
それとdeepですが、英語やドイツ語では「深い」という意味になるこの言葉が、スペイン語にはD.E.P.(Descanse en paz)=安らかに眠れ! という意味の略語があるそうです。勘ぐり過ぎですかね。
探せばいろいろあるもんだ。 - Name: カナメ No.964 - 2005/08/04(Thu) 18:34:24
原作は七月鏡一先生ですか?
http://books.bitway.ne.jp/shop/mt-keitaiqr/trid-main/ccid-1301/cont_id-B0120500030.html
携帯版で53円なら、これは買ってみてもいいなあ。
例の『狼男だもんっ!』(津堂遠海)ですが、PDF版でも販売してました。抄録やサンプルファイル(要認証ソフト)もありますので、興味のある方はどうぞ。ワタシはたちどころに興味をなくしてしまいました。
http://www.papy.co.jp/act/books/1-19945/
番外編。昔、店頭で見かけたOVA。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005ESVK/249-8280698-1460344
岡本賢一というひとが、このあいだ話題になった作品と同名の短編を書いています。SFマガジンのコンテストで最終選考に残った作品だそうです。「本歌取り」なのか、単に「知らなかった」のか……。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4886725724/249-8280698-1460344