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“ガチャ文”考deep - Name: カナメ No.996 - 2005/11/23(Wed) 17:55:27
あれれ。レスにかこつけて、言い足りないことを書こうと思ったら、削除されちゃった。まいいや。
▼ある読者が自分のサイトで、「アブダクション」を評して、美少女ゲームだといったそうだ。私は読者のサイトには一切訪れないことに決めているので、これは密告者からのタレコミである。▲
出たッ(笑)>密告者からのタレコミ。どこのどいつかは知らんが、言うといたるわ。密告者とやら。ワタシに文句があるんなら、ワタシに言いなさい。2ちゃんねるで言ったっていいよ。大の男が(決めつけてます)文句のひとつも言えず、センセイに告げ口か? 情けないとは思わんか? どうせ2ちゃんねるのことは毛嫌いしてるんだろうが、2ちゃんねらーのほうが、よっぽど男らしいよ。「カナメ」とはっきり名指しにすりゃあ、もっと男らしいんだけどね。
こういうのを使ってる、平井先生も先生なんだよ。そういう人づての伝聞で「カナメって最低だよね」と喫茶店でしゃべくってるぶんには問題ない。しかし、それをネットやあとがきで公言するなら、自分で一次資料に眼を通すのは、最低限の礼儀でしょう。実際、確かめるのは簡単なんだから。そんな杜撰な密告者とやらのタレコミ情報をソースにしてるから、マーリン事件だって起きた。まだ、懲りてなかったらしい。そういう手合いをガチャ文ライターと称したのは、平井先生ご自身だというのに。
ちなみに、「ある読者」とはたぶんワタシのことで、「自分のサイト」とはたぶんここのことで、「「アブダクション」を評して、美少女ゲームだといった」というのは、だぶん次の一節でしょう。

▼ラヴストーリーとしての『アブダクション』は、まさに恋愛シミュレーションゲーム。主人公は魅力的な女性キャラに囲まれ、1プレイ(1作品)ごとに違う女性と恋をする。一度に複数の女性達に手を出すわけではないから、俗世間的な「不実」「浮気者」というには当たらない。だが、プレーヤーはリセットするごとに、恋の対象をほかの女性へと移し、現実には赦されない放縦な願望をかなえる。 恋愛シミュレーションのノベライズ作家が『アブダクション』を読んだならば、「この手があったか」と手を打つことでしょう。物語は、ただひとつの時間軸しかないのではない。何通りの(よく似た、しかし微妙に異なる)物語があってもいいのだと。その意味では、物語のエポックを数々生み出してきた平井和正の天才は、いまも健在だと言えるでしょう。▲
No.821 2004/12/20(Mon) 00:12

まさかワタシが自意識過剰のあまり、とんでもない思い違いをしてるってことはないよねえ?(笑)
おわかりのように、ワタシは「美少女ゲーム」とは一言も言っていないわけで、エロゲーと同義のニュアンスで取られてしまったことは、まことに残念です。つまり先の作家センセイは、ほとんどこの原文を読んでいないと判断できる。だから読んでないんだってば。
密告者クンよ、伝えるんなら正確に伝えてよ。頼むよホントに。つうか、キミが本当に平井先生のことが想っているなら、そんな精神衛生に悪いこと言うなって。どうせなら「カナメさん、ベタ誉めでしたよ!」とか言ったら? 優しいウソも思いやりだよ。どうせ読みゃしないんだから。つうか上記の文、誉めてるじゃん!

でもこういうのって、ちょっとオイシイよなあ。と思ってしまうワタシって、まだまだミーハーなのかな〜(笑)。


もの言えば唇寒し秋の空 - Name: カナメ No.994 - 2005/11/23(Wed) 02:02:16
幻魔大戦deepのCD-ROMが参りました。ひらりんの気まぐれ雑記帳、おもろいですよ。特にサイト持ちの人たち、必読。
あらためて、この方は悪口を言われるのが本当にイヤなんだな〜と思いましたね。これほど声高な読者への啓蒙、周知徹底が必要なほどに。せっかくご本人が避けておられるのに、ここで言ってることをご注進に及んだりしてはいかんよ。情報伝達罪だ(笑)。
ワタシは自分の負の批評が、本人の目に耳に入ることを覚悟はしているが、ことさら本人に面と向かって、気の悪いことを言うつもりはないのだ。それくらいのデリカシーはある。本人を前にして、批評はできない。本人を前に言えるのはおベンチャラか、正直なよろこばれる感想だけだ。好きな作家を応援し、励まし、気分良く執筆していただくことを第一義にして自分の言葉を紡ぐ。そのスタンスを否定はしない。アイドルのファンサイトなんかを巡ってりゃ、ファンとはそんな人種なんだとイヤでもわからされる。ただ、ワタシにはできないのですよ。素晴らしい作品に賞賛を惜しみはしないが、つまらなければ容赦なくこき下ろす。それはワタシの本能であり、譲れないアイデンティティなのだというほかはない。
てゆーか、ワタシはそれをほかならぬ平井和正の背中を見て学んだ気がするのですが、お変わりになられたのか、そもそもワタシの勘違いだったのか。いまとなっては、どちらでもよいことです。

平井先生の言葉は一方の真理として胸に留めますが、ワタシの信じる筆の道は違う。いままでも何度か言ったと思いますが、あらためてワタシの信条を表明し、筆を置くことにします。
発言に責任を負うとは、その正当性に対して負うのであって、読み手の気分に対して負うのではない。


miniSD - Name: おかもと No.993 - 2005/11/02(Wed) 22:21:04
> miniSDに保存できるのなら、PCにコピーできるんじゃないのか?

やってみました。

カナメさんのケータイと違い、小生の東芝製ケータイでは電子ブックのあるフォルダをPCから読めるようになっていました。

miniSDの SD_BIND\SVC00001\EF\E_EB のディレクトリに、EB0_0000.KEF, EB0_0001.KEF, EB0_0002.KEF ... という形で電子ブックが入っており、同じディレクトリにはそれを制御する EB_F_000.MGR というファイルもありました。
で、エクスプローラを使ってSD_BIND以下のディレクトリを全部パソコンにコピーして、別のminiSDにコピーするまではOKでした。
さて、このminiSDに入れてケータイから電子ブックを開こうとすると…「再生できません(不正データ)」といわれてしまいました。

ま、予想されたことではありますが、ちょっとガッカリ。

その後ちょっと調べてみたら、なんのことはない、miniSDそのものが「著作権保護に対応」する機能をもっていたんですね。たぶんminiSDごとに固有のIDをもっていて、別のIDのminiSDにはコピーできてもIDが違うので不正データとばれてしまうんでしょう。

ということで、miniSDの中身をパソコンにコピーして、それを同じminiSDに戻すならたぶんOKだと思うけど、別のminiSDにはコピーできても読み出せない、というのが結論でした。

ま、バックアップできるのがわかっただけでも良しとするか。


au使いの皆さん、ご存知でした? - Name: カナメ No.992 - 2005/10/31(Mon) 02:06:16
ユーザーの方はご存知だと思いますが、携帯小説など著作権付きのデータは、機種変の際に引き継ぎができないようになっております。コピー防止の都合上仕方がないとは思いますが、携帯なんてハード自体保って3年。機種変の度に読み捨てにせにゃならんというのは、やっぱり口惜しいですよね。
ところが、機種換えしても、どうやら読み捨てにはせずに済みそうなのですよ。というのは、e文庫の携帯小説をminiSDカードに保存できることが、つい最近わかったからなのです。ということは、同じ仕様でminiSDカードを読める機種なら、再びその機種で携帯小説を読めるというわけです。
方法は[移動]を用います。[miniSDカードへコピー]は×です。これをやると「このデータは著作権保護のためコピーできません」と言いやがります。このためにワタシは長いこと、ああminiSDには保存できないのか、狭いメモリが一杯になったら、読み終えたぶんから消していかにゃならんのか、ガックシ。と思い込んでいたわけなのです。
なるほど、メモリから消してminiSDに[移動]するだけなら、本人以外の手に渡ることはまずない。販売社側のセキュリティと購入者の利便性を考え合わせた、粋な計らいじゃありませんか。ただし、漫画幻魔やお試し版のように、miniSDに移動できないファイルもあります。

miniSDに保存できるのなら、PCにコピーできるんじゃないのか? 当然そういう疑問が湧くと思います。ところが、これがよくできておりまして、PCでは読めないのですよ。とりあえず、通常の手段では。PCとminiSDを介して、データのやりとりは当然できます。ところが、そのための専用のフォルダというか領域は決まっておりまして、携帯用のデータを保存する通常のフォルダの中身は、PCでは読めないようになっとるんですわこれが。つまり、ここでもガードはガッチリなわけです。

しかし、e文庫の携帯小説が、現携帯ハードとともに読み捨てとなる宿命を免れた以上、『幻魔大戦deep』全巻CD-ROMを購入するモチベーションもいささか減退したのは否めません。なにしろ読書端末としての携帯、ワタシはすこぶる満足しておりますので。リブリエやら、カシオペアやら、わざわざ持ち出す必要がない。携帯とは、何事によらず携帯するものですからね。つまり、質量がゼロになるのですよ。実際、携帯読書を覚えたら、文庫本を持っていくのも面倒臭いですよ。全ての書物は携帯版になってしまえ。
とはいえ、特別書き下ろしエッセイ『ひらりんの気まぐれ雑記帳』。これがありますがな。ひらりん、商売うまいわ。お布施のつもりで買うとするか。

蛇足その一。「今回新たにXMDF形式も収録。(一部の)シャープ製携帯電話等でも読めるようになりました。」――えっ? XMDFファイルって、EZアプリの電子ブックビューアで読めるんじゃないの? 奥付に「XMDF版」て書いてるやん? ……と疑問に思った方いませんか。読めないんですねえこれが。実際にXMDF版『蹴りたい背中』で試した結果ですので、間違いありません。おかもとさんのヒライストライブリーに記載されていますが、au携帯小説のXMDFとは正確には「Compact XMDF Plus」という形式のもので、PCやザウルスで読めるXMDFとは異なるようです。

蛇足その二。ルビ表示のオン・オフが面倒臭いと思ってる方いませんか。ルビを表示させると行間が空く、ルビを表示させないと難読な漢字や独特のルビ使いがわからない。そんなあなたに、ボタン一発でルビのオン・オフを切り替える方法を伝授します。「2」のキーを押してください。
知ってるひとはとっくに知ってると思いますが、こういってはなんですが、このワタシでさえ、つい最近までこのことに気付かず「不便やの〜」と毒づいてたものですから。え? ワタシが人一倍マヌケなだけですか? やっぱり?


タイトルは、「旧幻魔大戦」 - Name: 丈とサンボ No.991 - 2005/10/30(Sun) 21:26:13
「いるんだろう、あんちゃん。隠れたってだめだぜ」
 隠れんぼだったら、おいらの方がずっと上手だ。それくらいわかってるだろうよ、と薄闇の中に霞んだ黒い顔が、ぶつぶつと呟く感じに小さく声を出していた。
「出てきなよな、あんちゃん。もたもたしてるとよ、面倒臭いから引きずり出すぜ。いいのかよ、あんちゃんよお」
 その不満げな呟きが終わらないうちに、黒い少年が出現したのと同じ唐突さで、また別の若者が存在していた。
 こちらは事務机の上に土足で座り込むという乱暴ぶりは見せず、ただ静かに、先客がせしめた机のわきに立ち姿で現れていた。
 小柄であり、机に尻をつけた黒人少年と目線はさして変わらない高さだった。
 二人の少年はしばらく黙ったままで見交わし、やがて野放図な姿勢の黒人少年が、呆れたような声を出して静寂を終わらせた。
「なんだい、そのかっこうは? 全然似合ったもんじゃないぜ。メイン社長先生に御拝謁賜ったときだって、そんな畏まった恰好してなかっただろうがよ」
 途中、わざとらしい敬語表現で舌を噛みそうになりながら、黒人少年は言い、スーツに堅く身を包んだ相手の日本人少年はどこか寂しげな微笑を見せた。
 その微笑は、少なくとも黒人少年がこの相手には初めて見たたぐいのものであり、なにかしら痛々しく、胸に刺さるものがあった。そんな顔してんじゃねえよ、と背中をど突き倒したくなる、苛立ちにも似たせつない感覚がからだ中に奔るのをおぼえた。
「いつの間にか、こうなっていたんだ……ソニー」
 スーツの少年は、そんな微笑を保ったまま、低い声で言った。しばらく前に聴いた時は、ずいぶん深みのあるカッコイイ声になりやがってと思ったのだが、その同じバリトンが、今はやつれたように傷ついて耳に届いた。
「本当に、いつの間にか……ほんの少しの間で、何もかもが変わってしまった。僕は……」
「愚痴ならやめときな」
 と、黒人少年ソニー・リンクスはぶっきらぼうにさえぎった。ぷい、という感じに顔を横向けにした。
「おめえを信じて頑張っていた姉ちゃんたちが、みんなシュンってなっちまうぜ。東丈先生が、そんな……ってな」
「丈先生か……滑稽だな。僕はそんな器じゃなかった。そんなことは、一番最初からわかっていた。はじめから、みんなにもそう言い続けていたんだ」
「言い訳かい?」
 ソニーは容赦がなかった。スーツ姿の東丈は目を伏せ、微笑の残滓を宿した表情のまま、押し黙った。
「ボスってのは、悪い目が出たときも言い訳しないものなんだよ、黄色いあんちゃん。もちろん、自分には最初からボスの資格がなかったなんていうのは、最低の言い訳だ。そんなつもりはなかっただの、だから言ったじゃないかだの、みじめったらしいことを言いだした瞬間、そいつはボスどころか仲間内にいる資格そのものまでなくしちまう。二度と誰からも相手にされない、クズの下衆野郎でしかなくなっちまうんだ」
 今のおめえはそうなりかけてる、と黒人少年はずばりと指摘した。自信の有無はどうあれ、主宰として立った以上は最後まで責任を背負い続けなければならない。一度船を任された船長が、航海の途中で任務を投げ出すなど、あり得ないことだ。たとえ船が沈み始めても、自分だけは最後まで踏みとどまって、船長としてやるべきことを果たさなければならない。
 船が小さかろうと大きかろうと同じことなんだよ――、ソニー・リンクスはもっともらしい顔つきで続け、不意ににやりと笑ってみせた。
「かっこいいだろ? しびれるだろ。まいりました、って平伏しな。今のあんちゃんには逆立ちしたって真似できないセンセイぶりだろがよ」
 黒人少年は事務机の上で立ち上がり、自分より目線が下になった東丈を睥睨した。ぐい、と右の人差し指を突き出し、丈を指し、ねめつけた。
「オーラが無くなっちまったな、丈。ノッテルときには、どっかの神様が勝手にお膳立てしてくれるものなんだ。なにを言ってもやっても、上手い方に転ぶ。先生にでも救世主にでもなれる。だけど、そんな憑物はある日突然落ちちまうんだ。別に自堕落に遊び惚けたわけでも、薄汚れた慾で初心を忘れたわけでもないはずなのに、突然神様がいなくなっちまう。見捨てられたのか飽きられたのか、わからねえ。だけど、そうなんだ。神様ってのは、そんなに律義な性格じゃねえんだよな。こっちの理屈が通用するなんて、思わないこった。誠実に戒めを墨守したからって、単純にそれで報われるわけじゃなさそうなんだよな」
 ソニーは自分の言葉にうんうんと自分でうなずきながら、考え深げな表情で続けた。
「おめえの憑物は落とされちまったんだよ、丈のあんちゃん。落とされたのか落ちたのか知らないけどよ、とにかくいなくなっちまった。どう足掻こうが、懇願しようが、泣きつこうが、いつ戻ってくるのかも、だいたい戻ってくるもんなのかも、誰にもわからねえ。憑物が落ちるってのは、そういうことなんだ。こんなのは、俺みたいなガキでも知ってる当たり前のジョーシキなんだけどな」
「おまえもなんだか変わったな、ソニー」
 と、東丈は心持ち頸をもたげ、眩しいような表情で戦友を見た。
「今の俺より、ずっと堂々としてる。貫禄があるって感じだ。なにがきみを変えたんだ、ソニー?」
 かか、とソニーは大口をあけ、首をのけぞらせて笑った。おかしくて仕方がないという感じだったが、笑いを止めて丈を見据えた眼は醒めて渇いていた。
「なんて答えて欲しいんだ、ブラザー。使命感か? 責任感か? そんなふうなものが、このソニー・リンクスを変えた。そう言ってもらえたら、おめえの心になにか救われるものでもあるってか? 違ーよ」
 真白いスニーカーの爪先が、左右交互に何回かずつ、事務机の上で擦過音を鳴らす。


re:新刊予定より - Name: 津村 No.990 - 2005/10/02(Sun) 00:26:05
うおお、auで良かった!携帯買い換えて良かった!
あーでも一巻分で終わりなんですね>ブルー・レディ。
ブルー・ハイウェイ的なノリなのかなあ。
いずれにしろもうすぐ読めるので楽しみ!アブダクも携帯で再読したい気になってきました。
CDロム版deepについてくると思われる付録?も楽しみです!


新刊予定より - Name: カナメ No.989 - 2005/10/01(Sat) 03:08:42
9.30、新刊予定表が更新。
http://www.saltish.com/schedule/schedule.html
うおおおうッ。BLUE HIGHWAYSが…… BLUE LADYが……
auじゃないひと、すまんのう〜(≧∀≦)。


平井和正の代行支援 - Name: カナメ No.988 - 2005/09/28(Wed) 12:27:17
8マンネオ・東光一の前に現れた新たなる刺客――5thは、褐色のあの男。
既知のキャラの登場には、ファンとして素直にワクワクさせられる。だが、心の奥底で鳴り響くアラートがある。騙されるなと。「平井和正の大甲子園」をそれだけの理由で有り難がるなと。ワタシって、イヤな読者ですかね?(なにをいまさら)
眼を覚ませ、誤魔化されるな。いつの間にか掌に握っていたベアトリスの釵を太股に突き立てる。アウッ。
……でも、ちょっと期待できそう。


7、8年前に存在 - Name: ごっそり引用2 No.987 - 2005/09/19(Mon) 09:40:47
 その日、内村久雄は家に戻ることがなかった。
 すでに大学生でもあり、GENKENという活動に参加して翌日の夜まで戻らないことも何度かはあったため、家族や学校の友人も事前の連絡のないのをいぶかっただけだった。内村は比較的律義な性格であり、突発的に外泊することは珍しすぎる行動だったのだ。
 それでも、親たちが特に騒ぎたてはじめなかったのは、やはり内村が大学生という、もう独立したに近いと考えられる青年だったからだろう。外泊も朝帰りも、奨励するようなことでもないが、もう目くじらを立てる時期ではない。内村の親たちはそう考えるくらいには自分の息子を認めていたのである。
 しかし、中高生の親達はそう悠然と構えてはいなかった。まだ庇護の下にいるとばかり思っている自分の子供が夜半を過ぎ、ついに朝になっても帰ることがない。そんな事態は起きてはならないし、起きるはずはないのだと確信を持ちたがっていた。
 そして、警察に連絡するなどして慌て騒いだ親も、ただ不安に怯えるばかりで待つことしかできなかった親も、同じかたちの朝を迎えた。彼らの子供たちはついに戻らず、なんの連絡すら入れることもなかったのだ。
 帰宅しなかったのは、内村だけではなく、都内近県の数十人に及んでいたのである。共通点の発見には、さして時間がかからなかった。親たちの幾人かが最初から怪しんでいたものが一致していたのだ。
 うちの子は、しばらく前から、GENKENというなにかわけのわからない活動に参加していたようだ。変な宗教とか政治団体ではないのかと心配はしていた。
 それがとうとう、帰ってこなくなった! あのいかがわしい団体が拉致しているのではないのか?
 姿を消した青少年の数がもう一桁多ければ、早いうちからの騒ぎになっていただろう。だが、まるで巧妙な計算の下に実行されたプランのように、警察が本腰を入れるのを若干躊躇する程度の数が報告としてのぼっていた。もう少し様子をうかがってから……そうした空気が存在し、そして結局例によって捜査陣は後手に回りすぎた。
 この失踪事件は一日のことではなく、連日その人数を増やしながら引き続くものであった。警察やマスコミ、政府が慌てふためきはじめた頃には、この大掛かりな拉致〈アブダクション〉はもはや日本全域を揺るがす脅威に育っていたのである。
 その中心に位置づけられたのは、GENKENという流行り始めていた新興宗教的団体であり、失踪者のほとんどがこのGENKENの参加者あるいは関係者だった。
 いや、実はこのGENKENの主宰者こそが、第一の失踪者だったのだ――と、訳知り顔に流す者があった。GENKEN主宰である十六歳の少年、東丈はしばらく前から姿を消している。この失踪事件は東丈が仕組んだものであり、自らの隠匿場所に次々と信者たちを集め、大っぴらにはかなわない何か不穏なことを始めようとしている――そう書き立てる記事が出現し、いっそうの紛糾を呼んだ。
 〈アブダクション〉あるいは〈トランスレーション〉と言われたこの騒ぎは、そのまま拡大しながら続き、日本以外にも飛び火していく勢いだった。

 渋谷道玄坂の〈GENKEN〉本部はがらんとしていた。連日のマスコミによる攻勢に辟易し、関係者一同で脱出計画エクソダスを決行したかのように見えた。
 時折、電話の呼び出しベルが鳴り立てることもあったが、誰一人応答する者もなかった。
 空虚、廃墟……そういった言葉が似つかわしい寒々とした印象だった。
 ――突然、その空虚の中に何の前触れもなく、変化が生じた。事務机のうちの一つに、いきなり何者かが存在していたのだ。
 椅子にかけるのではなく、きれいに整頓された事務机の上に直接尻を乗せ、土足を無造作に投げ出した姿勢で座り込む小さな黒い姿は、昼間ではあってもブラインドを閉め切った暗い室内に、薄ぼんやりと溶け込んでいるかのように見えていた。新品らしいスニーカーだけがいやに白々と浮き上がっていた。


笹公人 「幻魔大戦」に捧げる歌 - Name: カナメ No.986 - 2005/09/10(Sat) 14:59:24
2ちゃんねるで情報を得て、SFマガジン 10月号を見ました。
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/sf/1100517016/454
「念力ゼネレーション」の笹公人が、幻魔大戦の短歌を詠んでいます。「わしズム」を通読しているワタシには、これは見逃せません。立ち読みで暗記して書いたテキストは手元にあるのですが(笑)、いまは伏せておきましょう。SFマガジン、お手にとってご覧ください。次の号が発売されたら、どんなものかご紹介してもいいかな。覚えてたらね。

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