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記事No.1595に関するスレッドです


リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: カナメ No.1595 - 2019/01/14(Mon) 00:40:35
まずはワタシの見解を述べておきましょうか。かの人物を「本物」か「ニセ者」かと問われれば、99パーセント後者でしょう。詐話師ないし本気の妄想癖の持ち主だということです。公表された情報を読む限りでは、そう思わざるを得ません。SFアドベンチャー誌の「ウルフランドレポート」というコラムに掲載された「彼のそっくりさんが現われて、周囲に迷惑を及ぼしている」という話なんて、正常な猜疑心を持っていれば、そりゃアンタだろう!? とツッコむしかない、うさん臭さ満点のエピソードです。不思議な人には不思議なことが起こるのではなく、うさん臭い人がうさん臭いことをやっていた、というのが身も蓋もない真実ではなかったかと思います。

それでも、「ニセ者」としてのリアル犬神明ことS氏は実在しており、実際にインタビューはおこなわれた。それは紛れもない事実であって、公表されたインタビューそのものがでっち上げ、創作、捏造ではないかという疑惑の余地はまったくありません。平井和正というひとは、そんなウソをつく方ではないし、それは信じるというより知っていると云いたいぐらいです。

自分の財布を預けるぐらい誰かに入れ込んでは、苦い別離に至る。それはあの方の宿痾、物悲しい歴史であって、女性カリスマしかり、リム出版社長しかり、超大作でデビューした作家しかりです。S氏もまた、そんな人物のひとりとして、カウントできるかもしれません。
「自分は犬神の末裔」「満月期には不死身になる」「CIAと暗闘を繰り広げた」……こんな与太話を信じるとしたら、どうかしていると。反平井和正の手合は格好のキテレツ・トンデモ事案として罵倒・嘲笑のネタにし、常識的な親平井和正の読者は「またビョーキが始まったよ」「こういうところさえなけりゃなあ」と困惑する。
でも、考えてもらいたいことがあります。それは肝心な一点で、われわれ一般読者は、平井和正と同じ土俵には立っていないということです。それはS氏と直に接したかどうかという一点です。
平井和正自身でさえ、あの一連の紙面を読んだだけで、その内容を額面通り信じはしなかったでしょう。平井和正はS氏と直に接し、この人物がこれまでの有象無象の木の芽時の来訪者とは違う、重要なメッセージを託されて自分の前に出現したのだと直感したのでしょう。それは「情報」しか材料のない傍観者には、うかがい知ることのできない領域です。それがあとでイヤほど後悔する、あまりアテにならない直感、第六感であったとしてもです(苦笑)。

とまあ、いまでこそこんなことを云ってますが、もっと若く、もっと純真だったころは、もっと違うリアクションをしていました(苦笑)。こんなワタシでも、歳をとると多少は分別臭くなるもんです。ワタシの黒歴史をご存知の皆さまにおかれましては、どうか大人の分別で見逃していただければ幸甚です。
まあ本当に分別ってものがあれば、この話題には決して触れないでしょうけどね。

もうひとつは小説のネタにしなかったことである。
熱心な平井和正ファンであった俺が一番アタマきたのは後者である。


弘田さんのこの視点はなかったですね。読者として、正しいと思います。ワタシにとり平井和正は、エッセイストであり、思想家であり、オカルティストでもあって、それらの文筆、言説、活動も消費の対象にしていました。その差ですね。平たく云えば、ミーハーなのでしょう。
それでも、晩年にブログ的に活用していたウルフガイ・ドットコムの「近況」「近況+」は、さっぱり面白くなくて(とてもじゃないが書籍化はムリでしょう)、それを無料でやってんだからゴチャゴチャ云うなよみたいなことを口走ってしまうところに、物書きのとしての堕落を感じて、結構真面目にガッカリはしたものです。怒りのポイントは各々違うものですね。

確かに、狼への過剰な思い入れや、新宗教とその教祖への傾倒は、ダイレクトに作品化された。それに対して、高橋留美子作品との出逢いや、リアル犬神明の出現は、作品として実を結んではいません。せいぜい、そのふたつ込みで『女神變生』という一冊のコミックリリーフになったぐらいで。

高橋留美子作品との出逢いも、“おもしろユートピア”への開眼が第二次幻魔大戦を終息させたであろうことは、間違いのないところであるにしても、じゃあ続く『黄金の少女』はと云えば、「おもしろ」ではなく「ユートピア」ではさらにない、血と硝煙の匂い漂う男のヒューマンドラマでした。
リアル犬神明の出現は、『黄金の少女』の連載が終わったSFアドベンチャー誌の次の号で発表されました。この事件もまた第二次ウルフガイを終わらせたのか? それとも時期がたまたま一致していたに過ぎないのか。その後の創作・作品性に何らかの陰を落としたのか、そうでもなかったのか。いまのワタシには、述べるに足る考えの持ち合わせがありません。

小説のキャラクターが現実に現われた、そのキテレツさはスルーし、自分の前に現われたその人物の印象、直感で、真面目にその人物の話に耳を傾けてしまう。それが平井和正というリアル犬神明に負けてないビックリ人間なのです。そんなひとだからこそ、まあ良くも悪くもビックリな作品(笑)が書けたのだと、読者のハシクレとして、ワタシはこの一件をゆる〜く受けとめています。

ちなみに、大槻ケンヂの例の歌、『奇妙に過ぎるケース』ですが、二番以降で小説家でもあるオーケンの前にも「あなたの小説の作中人物だ」と称する女が現われます。驚くなかれ、オーケンは彼女を「本物」と認め(笑)ます。つまり、リアル犬神明は導入のネタフリなのですね。どういう結末を迎えるか気になる方は、この歌だけでもダウンロードして聴いてみてください。
平井せんせいも、犬神明が夢枕に立ったというのは作り話で、実はモデルがいたんだ――そう云ったほうが、まだしも世間から納得はしてもらえたかもしれませんね。
Too much リアルに過ぎるケースさ。


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: カナメ No.1596 - 2019/01/14(Mon) 00:42:19
実家で発掘しました。(新)ウルフ会機関誌「狼火」最終号です。


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: カナメ No.1597 - 2019/01/14(Mon) 00:44:28
この表紙を描いたのが、実はこの方なのです。


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: カナメ No.1598 - 2019/01/14(Mon) 00:53:59
そして、この方のサイン(爆)。
リアル犬神明ことS氏が実在することそれ自体は、疑問の余地はありません。それは南山宏氏や当時のSFアドベンチャー編集者など、幾人もの証人がいますが、ワタシもその一人というわけです。
箱根小涌園で開催されたウルフ会全国大会でいただきました。特になにをするわけでもなく、ゲストに招かれたS氏でしたが、サイン会みたいなことになりました。最初にサインを求めた勇気ある会員さんには、感謝を捧げます。まるでヒーローショー。ショーはありませんでしたが。


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: 弘田幸治 No.1599 - 2019/01/14(Mon) 10:57:00
 リアル犬神明ことS氏の画、いいじゃないですか!
 独自の世界観を持ってらっしゃる!
 ああ……これは平井和正がハマるかもしれない。無理もない。
 論理的なメカニズムをもつオカルトが好きな平井和正好みですね。

 俺もこの画からアレコレ妄想できる!(笑)


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: こん No.1600 - 2019/01/17(Thu) 03:11:59
>もうひとつは小説のネタにしなかったことである。

女性カリスマからの離反も、小説にしてませんよね。
エッセイ「平井和正『幻魔』を考える」などで批判したのみ。
小説家なら批判は小説でやれよ、やってほしい、とぼくは思いましたが……。
すごくいいネタだと思うけど、エッセイ書いただけで気がすんじゃったのかな?
それとも小説だと、自己の作品否定をしかねないネタなのが、本能的に彼から小説化を避けさせたのでしょうか?
あるいはハルマゲドン失中後、平井和正にとっては小説にするほどのボルテージは感じられないということだったのでしょうか?

1991年から1992年の時期に「平井和正『幻魔』を考える」でカリスマからの決別文をしたためたのは、相当な心境の変化があったと見られますね。この時期、彼の内面でなにが起こったのでしょうね? ハルマゲドン的人類への憎悪が消えたんですかね?
「黄金の少女」で自己治療に成功したんでしょうか? 冷戦終了は関係あるのかな?

エッセイスト平井和正は独特の魅力がありますが、ぼくは「ガチャ文考」は苦手でしたね。ホームといえる機関紙で、素人を手厳しく断罪する姿勢にはドン引きしました。
善悪二元論、正しいか正しくないかのどちらかしかない、物事を峻別する作家ですよね。

リアル犬神明事件を含めて、エッセイを書かなければ、また評価の違った作家だったろうなという気もしています。
虚実の境を、次第に越えていった作家ですよね。もちろん、そこが面白いのだ、という意見があったとしても、おかしくありませんが。


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: DONDEN No.1602 - 2019/01/20(Sun) 01:04:52
この一連の話題には納得しそうになったのですが、考えてみると一応『BACHI・GAMI』がリアル犬神明氏を元ネタにした作品として存在してますね。あくまでリアル犬神明氏の一側面の反映ですが。
さらにうっかり失念してたのが、“リアル犬神明事件”は舞台の一つである某T峠がモデルの場所が『地球樹の女神』に登場し、そこを経由して水面下で玉置神社へと連動していった話だったということです。そういう点では、わかりやすい元ネタではないにしても創作・作品性には影響している、と言えると思います。
どちらかというと幻魔大戦シリーズは、実体験の検証という側面からか、元ネタの投影がストレートというか、原型を留め過ぎてる気がします。だからそれを基準にすると色々と見落としてしまう部分が大きくなるのではないかとも考えます。


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: カナメ No.1603 - 2019/01/20(Sun) 23:54:52
「『“ガチャ文”考』を考える。」というテキストを書いているのですが、これがなかなか歯ごたえがあり過ぎる題材でして……。少々時間がかかりそうです。今頃? というタイミングでアップするかもしれません。力及ばずお蔵に入ったら、ごめんなさい。


Re: リアル犬神明事件とは何だったのか。 - Name: カナメ No.1604 - 2019/01/21(Mon) 00:26:08
DONDENさん、毎度貴重なご指摘、ありがとうございます。
云われてみれば、確かにそのとおりです。やはり転んでも(転んだのか?)、ただでは起きない、作家の矜持。しっかり元は取ってたんですね。平井せんせい、ごめんなさいとお詫びしておきます。
ひとの意見は聞かないといけませんね。


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