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記事No.32に関するスレッドです

短編小説 / GIL
* グレート・ジャイアント * 武井信夫/土屋水子 共作

−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文化大臣賞受賞作品−

「 怪物が見つからないな 」
と、バコス公国第8戦闘指揮官ソルが言った。

部下「 畑を荒らした跡がみられます 」

ソル「 ふむ。大量の野菜を持って行ったか。国からの命令なのだ。何としても倒して息の根を止めなければならない 」

そのとき、下着姿の黒い髪の女が首をもたげて手縄を両手首につけられて兵士に一列に行列されて歩かされていた。

兵士「 敵国の貴族の女、バシュと申しております 」

ソル「 バシュ、野菜を食う怪物はお前の国に生存すると聞いた 」

バシュ「 はぐれたのでしょう。自由気ままに暮らして害はない生き物です。私たちの国ではごはんをあげて畑を荒らさぬようにしつけております 」

ソル「 兵器としては使えぬのか 」

バシュ「 そのような性格の生き物ではないのです。私の友達として一匹いましたが、今はどこかへ消えてしまいました 」

ソル「 お前を我がバコスへ運び尋問する。それなりの覚悟をしておけ。少々手荒なこともせねば白状しないこともあるだろう 」

バシュは立ったままうつむいて絶望に身を震わせた。

ソル「 森を抜ける。皆、気をつけて行進しろ 」

バシュは素足で歩かされ、それはこれから始まるであろう拷問の一環と言えた。

しばらく森を一行が進むと、巨大な樹木の影で身の丈4メートルの赤い巨人がこちらをうかがっていた。

ソル「 見つけた! 」

その巨人には顔に大きな傷跡が右上から左下に走ってあった。右目は潰れていた。

バシュ「 あっ! 」

一行は一斉に矢を放つ。
巨人はぐわんと跳躍して縛られたバシュのもとへ飛んだ。
そしてバシュを大きな両手で掴み、剣と槍を持った兵士たちを散らしてバシュを持って逃げた。

バシュ「 お前はチロ! 」
ソル「 怪物を殺せ!女は捕らえろ! 」

****************************

どこかの崖の裏まで逃げたチロとバシュ。
チロはバシュを自分のあぐらの上に載せていた。

バシュ「 20年ぶりくらいね、チロ…、お前たちは長生きだから 」

静かにチロがバシュに指先で顔や頭をくりくりする。

バシュ「 私が10才のときもこうして遊んだわね 」
バシュ「 傷も随分増えて…、何で私たちの所から居なくなったのかしら。お前たちは自由で好きな所へ行くわね。でも、こんな所に迷い込んではいけないわ 」
バシュ「 ふたりでどうにか私の国に帰れないかしら 」
バシュ「 私の国の船団が全滅して海を渡らなければ 」

チロとバシュはバシュ用のイカダをつくり始めた。
木をチロが集めて運び、バシュはしっかりと木のつるで縛り付けてゆく。
やがて四角いイカダができた。
帆をつくりたかったが、その暇はなかった。

とうとうソルたちに見つけられたのである。
矢をチロに打ち込みぶすぶす刺さった。

チロは海までイカダを担いで走って運ぶ。
左手にイカダ、右手にバシュを胸に抱いていた。

槍で武装した兵士が追いかけてきて、その後ろから矢がチロに飛んでくる。

下に海の見える崖まで来て矢ぶすまを受けているチロはバシュとイカダを海に投げた。

海へ落ちたバシュは上で槍に刺されているチロの姿を見てとった。
ソル「 女が逃げるぞ!ここはお前たちに任せる。半分ほど崖下へ回れ! 」

動いたソルたち一行にチロは跳躍して壁になった。

バシュは一部始終を見ていた。
チロは命を捨ててでも私を逃がすつもりだと解った。


月明かりの遠い海にイカダにつかまったバシュは流され、そのうち見えなくなった。

* グレート・ジャイアント (完) *

No.32 - 2026/03/08(Sun) 22:08:33

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