 | * 狼の挽歌 * 武井信夫 作
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狼族国軍の一部隊の指揮をとっていた緑の毛並みの狼族のゾル。
ある日、木で出来た城壁から遠くの森で制服のまま、大木にもたれて座っていた。
妖精が羽で飛んで近寄ってきて「お前、暇なの?私と遊ぶの」と、ゾルの周りをくるくると飛び始めた。
そこへ、ミルクとパンを手さげの籠に入れたクリ毛の可愛い狼族の雌の子がやってきて、
「いつもごくろうさまです。これを」と言って、ゾルに食料を渡した。
雌の子の名前はミルと言った。
そうしてうちとけて話しているうちに、馬車に乗った豚族の集団がゾルたちに襲い掛かった。
鉄球を鎖で繋いだ棒を持った豚族たちに、ゾルの短剣は苦戦して、妖精はゾルから離れ、
ミルはとうとう豚族の集団に連れ去られてしまった。
妖精が「あーあ…、お前、助けに行くのか?」
ゾルは城まで戻り、家からロングソード一振りと肉の塩漬けを持ち、
ゾルの短剣でつけた、顔に大きな傷のある豚族を探すことにした。
いちばん手強かった豚で青豚だった。
妖精はあいかわらずついてきて「あの豚、知ってるよ。ガノンって言う豚の盗賊の首領だよ」
ゾルは妖精の案内で一人で行動を開始した。
自前の馬を駆け、妖精はゾルのポケットに入り、ガノンのアジトを目指した。
途中、狼族の雌の水車小屋があったので、そこへ馬を銅貨を払い、預かってもらった。
ゾルの脚は駆けた。
残りの距離をあっという間に縮めた。
潜伏任務はゾルには当たり前で、鎧を着た豚族を一匹一匹倒していった。
ガノンの部屋の前では3豚に一斉に襲い掛かられるがゾルの剣の前ではあっという間に倒されてしまった。
ガノンの部屋へ罠に注意しながら潜入し、
武装した豚族とガノンが酒盛りをしていたらしく、大量に居た。
ゾルは一度に戦えるか考えたが決めた。
妖精を逃がし、上の天井から飛び降りて豚族の真っただ中へ降り立った。
豚族たちの注目が一斉にゾルに集まった。
檻の中で見世物になっていたミルはゾルの存在に気がついた。
ガノン以下、配下とゾルのロングソードが激しく交差した。
そのとき、後ろのガノンの部屋の扉が開き、虎族の集団が入ってきた。
リーダー格はハンマーとメイスを握っていた。
ゾルはぎょっとした。あいつは虎族国軍戦闘部隊黄旗班リーダーのラオだ!
いなくなったと知っていたが盗賊になっていたか。
豚族たちは屠殺され、ガノンは「お前はラオ!」と言ってこと切れた。
ガノンたち豚族の財宝はラオたち虎族に奪われ、虎族と豚族の競り合いで傷つきながら命を保ったゾルは
ラオたちに捕まり、ミルが豚のこしらえた檻からラオたちに連れていかれるのをただ見ていた。
ミルは泣きながら、ゾルを首で追いながら見つめて通り過ぎた。
虎族たちはゾルに傷を負わされて頭に来ていて「苦戦させやがって」と、手錠を掛けられたゾルは虎族たちの
素手で滅多打ちにされ、気を失った。
ゾルが気がついたとき、虎臭い石造りの部屋で拷問器具のある薄暗い部屋だった。
手錠を後ろ手に嵌められていて鍵が掛かっていた。
そのとき、あの小さな妖精がどこからか隙間からやってきて体の割に重い鍵束を持ってきた。
妖精「私の名前はシルフって言うの。感謝するの」
ゾルの後ろ手の手錠を鍵を選んで外した。
「待ってるの」とシルフが言い、ゾルの短剣を持ってきた。
「あんな重くて長い剣、運べるもんか」とシルフが言った。
ゾルのロングソードは重くて、隙間も通らない。
ゾル「助かる」
器用なゾルは丸くて腫れぼったい狼の手で鍵を使いドアを嗅覚と耳で探りながら慎重に開いた。見張りは居なかった。
ゾルはラオを探し始めた。
虎の砦の中で、虎族を一匹ずつ倒しながら、鼻を使って虎の臭気の中に混じる甘い香りのミルを探し当てた。
虎族の盗賊の首領であるラオは気配でとっくに気がついていてゾルがやってくるのを待っていた。
虎にしてはプライドの高い奴で一騎打ちを待っている。
ラオの立つ近くの小屋にミルがまた檻に閉じ込められていた。
虎族の中でも特に物凄い体で腫れぼったい手で右手にハンマー、左手に鉄のメイスを持ち、その剛腕でそれを軽々と素早く振り回せた。
ラオと対峙したゾル。短剣を効果的に構えた。
このラオという奴、タフなのが戦ってわかった。
ラオのハンマーもメイスも当たったら戦闘不能に陥ってしまう。
ぶんぶんと武器を振り回すラオ。
ラオは戦場の戦い方だ。
ゾルは転がって避けながら一閃。ラオの左目を切った。
ラオは笑って言った。「コロス」
ますます激しくなるラオの攻撃。
ゾルはラオの左へ左へ回りながらラオの腫れぼったい指を切りつけていった。
が、痛みをあまり感じていないようで、筋まで届かない。
ゾルは右足でラオの左手のメイスを持つ手を渾身の力を込めた前蹴りで蹴った。
メイスを落としたラオ。ラオは今度は強力な自前の左手の爪をつかう。
ゾルは急にラオの右側に回り、短剣をラオの右目へ飛ばした。
ぐさりと右目に刺さり、視力が一瞬消えたラオにゾルはラオの鉄のメイスを拾い上げ両手に握った。
ラオのハンマーがゾルの鼻先をかすめた。
ゾルは声を上げて鉄のメイスをラオの硬くて頑丈な頭へ振り下ろした。
ラオの左手の爪がぶんとゾルの制服を引き裂く。
ゾルの渾身の一撃で頭の割れたラオは死んだ。
一部始終を見ていたミルが「おにいちゃん」と言って泣いていた。
シルフも近寄ってきて「お前、やるな。気に入った。早く外へ出よう」
シルフの案内で外に出たゾルとミルとポケットのシルフ。
ゾルは駆けた。水車小屋まで。
* 狼の挽歌 完 * |
No.70 - 2026/09/24(Thu) 11:27:27
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