 | * マカロニ物語 * 武井信夫 作
−西暦2026年1月20日(火) 文化厚労賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 喜劇部門大賞受賞作品−
厚田 昇「 おい!またマカロニグラタンかよ! 」 厚田 順子「 おいしーわよ? 」
ノボル「 俺は働いてるんだ。いい加減にしろ!大体、なんでゴロゴロ人参ばかり入れるんだ? 」 ジュン「 だって、体にいいもの。 会社に遅刻しちゃうわよ。 早く食べて行ってらっしゃい 」
ノボル「 もう食った。弁当! 」 ジュン「 ハイ 」
ノボルは営業の平社員であった。真夏なので実に暑い。
ノボルは自分の勤める会社である、日の丸石鹸に外回りから戻ってきて書類を整理し、 パソコンや紙を使って書き込んでいく。
午後2時。
「腹が減った。弁当があるな」 マカロニがぎっしり詰まっている弁当だった。粉チーズがふりかけてある。
中田部長「 何だね。なんで君は弁当にマカロニを入れてくるのだ 」
ノボル「 いや、ウチの女房がね。これが得意で 」
中田「 わしのように普通の弁当を持ってこれんのかね。 あと、マカロニより蕎麦のほうが美味いよ。一体、どういうカミさんなんだね 」
ノボルは腹が立った。ジュンのドレスアップした写真を見せた。
中田「 むう、なんだね、この 」
ノボル「 ジュンです。俺の女房 」
中田「 なぜわしにこれを見せた? 」
ノボル「 馬鹿にするからです。俺たちふたりを。大体、人の弁当を馬鹿にしないでもらいたい。つくってる女の顔まで想像できるのですか 」
中田「 キミは…あれだな…今度係長にと考えていたのだが 」
ノボル「 何ですか 」
中田「 ちょっとな、別の人にしようか 」
ノボルは部長の背広の胸ぐらを両手でつかんだ。
中田「 何をする! 」
ノボル「 俺は人一倍仕事をしてるんだ。平の成績トップだ! 」
中田「 クビだ! 」
ノボル「 出て行ってやるとも 」
ノボルは家に戻りジュンに相談した。
ジュンが中田部長へ電話をかける。
「 じゃあ、私手製のマカロニ料理を食べてもらって不味かったらクビにしてもらって、美味しかったら取り消しでいいわね! 」
部長「 ああ、俺は蕎麦好きだが自信があるなら持ってきてもらおうか。( この声の先があの写真の女か ) 」
ジュンはチーズマカロニをつくり、固まってくっつかないように油をまぶして塩を少しふった。 そして高級瓶タバスコをノボルに持たせた。
ノボルが お昼に、皆の注目の的になっている前で、でかいアルミ製の弁当箱を部長に差し出した。
ノボル「 どうぞ 」
部長「 むう…、俺は蕎麦好きだが、この匂いはなかなか…、イヤ、まずそうだ! 」
ノボル「 フォークです。あとタバスコ 」
ノボルも自分のを食べ始めた。
部長「 うむ。塩が効いてチーズの良い香り…、( 認めるワケにはいかない。こいつのヨメは美人で…、俺のヨメはブスだ。絶対にクビだ。なんたって俺の胸ぐらをつかんだのだからな! ) 」
ノボル「 うまい! なんてうまさだ。信じられない。みんな食べてみろよ 」
女子社員たちがハシで取り分けてたべる。
「 このタバスコ、高級ね 」
ノボル「 ああ、ワザワザ取り寄せてるんだ 」
「 ノボル君がいつも奥さんのマカロニ弁当なのも…、うなずける。でもマカロニばかりねぇ。ご飯ないの? 」
ノボル「 マカロニがうますぎて米なんか食べる気しないね! 」
部長「 そ…、そうだな。確かに悪くはない!しかし俺は蕎麦好きだ。蕎麦のうまさに勝てるわけない! 」
女子社員たち「 あら、おいしいわよねえ。人の奥さんのお弁当を認めないなんて 」
部長の眉間に青筋が浮かび上がってきた。
部長「 これは不味い!不味いのだ!冷えたマカロニ弁当がうまいわけない!こいつの女房は美人だ!認めん! 」 女子社員「 アラ 」 部長「 だいたい、穴にチーズを詰める!!これは馬鹿の発想だ!!詰めりゃうまい!?蕎麦を知ってるだろう!!蕎麦の中になにか詰め込むか!?不味いだろう!! 」
女子社員「 蕎麦団子にチーズ詰めたら不味いわ。きっと 」
女子社員「 そう考えると蕎麦っておいしい食べ物かしら。うどんのほうがバリエーションが多くて 」
部長が口からタバスコマカロニを吹いた。机が汚れた。
「 何を言うか!俺は蕎麦畑を所有している!脱サラして蕎麦屋になるのが夢なのだ! 」
女子社員「 お店のお蕎麦って少しでものびると不味いのよねぇ。みどりのたぬきで十分って感じ 」
部長の顔が真っ赤になりスジだらけになった。
部長「 俺の夢を馬鹿にするのか! 」
ノボルの持ってきたマカロニ弁当の上を机ごと飛び越え、弁当が足に引っかかってバラバラに飛び散った。
部長は女子社員に掴みかかった。
「 俺の女房はブスだ!せめてお前くらい綺麗なら許せる!ブスと蕎麦屋をやるのが俺の夢! 」
女子社員たち「 やめなさいよ、部長!これじゃノボル君と一緒にクビね。社長にみんなで言いつけるわ 」
部長「 待て!まだカネを稼がなくちゃならん!あと十年…節約に節約を重ねて蕎麦屋に… 」
女子社員たち「 じゃあ、ノボル君のクビ、やめてあげる? 認めなさいよ、その散らばったマカロニ弁当が美味しいことを 」
部長「 仕方ない!そうだな。蕎麦屋の夢には代えられん! 」
女子社員達がこそこそ話す「 ”美人の奥さんがつくったマカロニ弁当”は言っちゃだめよ。この中田部長、そこにこだわっているわ。奥さんで負け、蕎麦がマカロニに負けじゃあ、妬み骨髄よ 」
中田部長が席に着いた。 「 オホン!マカロニ弁当美味しかったぞ!クビはとりやめる! 」
女子社員「 ノボル君の係長の件も 」
中田部長「 そうだな!成績トップ。考えておこう! 」
ノボルはどっと疲れが出た「 ホ――… 」(「俺もアパートの家賃。将来は家のローン」)
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ノボル「 ただいまー 」 ジュン「 おかえりー 」
ノボル「 マカロニ弁当美味いと言わせてきた。無罪放免だ!危なかった。中田部長、馬鹿でな 」 ジュン「 やったーー! 」
エプロンを付けたジュンが ノボル にフライ返し持ったまま抱きつく。
一部始終をノボルはジュンに話した。
ジュンが強気になって「 これからはパスタでいくわ。バリエーションが上がるわ 」
ノボル「 バカ! 今度はパスタか! 弁当箱にパスタ入れて行くわけか俺は。 お前、何で1種類しか料理しないんだ 」
ジュン「 文句ある? 」
ノボル「 イエ、ありません 」
そうしてノボルは常に1種類の料理を食べて馬車ぐるまのように働いていくのだった。
* マカロニ物語 完 *
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No.31 - 2026/03/08(Sun) 22:02:42
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