 | * 彩と鬼田君(2) * 武井信夫 作
−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品− −西暦2026年1月9日(金) 文化大臣賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 文部文学賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 文部大臣賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 旭日殊勲賞受賞作品− 背広の男たちが教室に入ってきた。 校長と一緒に入ってくる。
背広の男たちは彩と鬼田を取り囲んだ。 「 今日、お二人に話したいことがあります。今からご同行よろしいですか? 」
校長は青ざめている。 「 そうですね、この子たちは、ハイ 」
彩「 私たち?なんで? 」 彩は男たちの思考を読み取った。が、読み取りにくい。 彩はあせった。< 何らかの訓練を受けている! > 彩「 行きません!! 」
「 いえ、あなたたちに選択権はないので…。国からの要請です 」 ギョロ目が眼を彩と鬼田に動かしながら言った。
彩が強く念じた。意識操作を仕掛ける―― ギョロ目の眼がピクリと動いた。 が、上手く効かない。
彩はあせった。鬼田のサイコキネシスを頼った。
寄り集まってくる背広男たちの動きが止まり、後ろへ背中から吹き飛んだ。 頭を打ち、割れて脳しょうがバケツでまいたように飛び散った。
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彩は早く鬼田哲郎を訓練しなければと思った。
暴発は困る。
少しずつ解除するやり方にしてみることにした。 こんな連中に目をつけられている―― 一刻も早く!
もうこの前の様な精神病院騒ぎは御免だ―― どうして平和に暮らしている私たちのことが…、と思うが、ふと。
< 青木 >
そう思い当たった。 あのしもぶくれの医者だ。 あそこから、何か得体の知れない機関に漏れたのだ、と思い当たった。
鬼田が自力で力を使えるようにトレーニングすることもしなければ。 10円玉が動かせれば後は簡単。 コントロールを上手にしていって――
それから常に二人で行動をすることにした。 彩の家に鬼田を連れてきた。 鬼田を自分の自宅にいさせてはまずい。 あの親は理解がない―― そう知っていた。
彩は鬼田に電話をかけさせる。 「 友達の所にしばらくいるから 」 「 だれの? 」 「 クラスメートの家だよ 」 しつこい親にしぶしぶ名前を教えた。 「 中井さんて女の子の家だよ 」
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夜、鬼田と彩は一緒の部屋で10円玉を動かすトレーニングをした。 鬼田にイメージを教える。 「 ずらすの。少しずつ 」
やっと動いた。 10円玉が、机の真ん中から机のはじまでずるずると動き、床に落ちた。
「 やった! 」 彩は声をあげた。
「 なるほど。この前の光も、あの大人の男たちも僕なの?彩ちゃんなの? 」 「 両方なの。あれは。今はあなただけで動かしたのよ 」 「 鬼田君、あの教室の光の時、初めて力を使ったからかな。 病院なんかへ運ばれたの。私の家にいれば大丈夫。もし、なにかあっても。 私たち、危ないかもしれないの。私ね、人の記憶を読んだり、コントロールできる。 でもね、あの人たちには中々通用しなかった…。 怖いの。初めてよ、あんなの。 鬼田君の力ね、凄いの。 サイコキネシスなのよ、あなたの力。 それを私がコントロールしてたのね 」
彩による鬼田のトレーニングの日々。 ついに彩が自信を持つ。
鬼田自身がテーブルや椅子を持ち上げて自由自在に動かし始めたのだ。 鬼田「 やった! 」
彩「 そうね。でも、なんだか建物が揺れているわ 」 彩は恐ろしくなった。彩の団地自体も揺れているのである。
彩「 鬼田君、ごめん。私がね、あなたの力を縛る。縛れるの私。それは私たち二人で使わないといけないわ 」
彩「 あとね、もう時間がない。ここを出るのよ。なんだか うじゃうじゃとね 変な人たちに 包囲されているの。お金はママにうんともらった。私のうちね、外部から電話も何も繋がらないようにされているの 」
そのとき、玄関のチャイムが鳴った。しばらくするとドアを叩き始めた。さらには 鍵を開け始めた!
「 ママ!私たち逃げるわ! 」 ママは意識を殺しながら紙にメモで書いた。【ママは普通の人ということにしておきます】 そしてそれをライターで火をつけて灰皿で燃やした。
中学生の逃避行が始まった。
玄関に来た背広の大男3人を彩が鬼田の力を使い弾き飛ばしながら逃げる。タクシーもなかなか捕まらない。
やっと一台安全な運転手を彩が心を読み取り見つけた。 「 どうしたんだね!? 」
彩「 うんと遠くへ行ってください!関西のほうに! 」 運転手「 後をつけられているけれど…、厄介ごとは俺は… 」と運転手が言った。
そこで彩の意識のループ操作が運転手を操作開始した。
鬼田「 彩ちゃん 」 彩「 こうやって、移動しながら考える 」
いっかな、大包囲は解けない。( 一体どんな規模の… ) 3時間走った。
海沿いに差し掛かっているとき建物が少なくなってきた。 そこで急に車が増えて前後片側を大量の車に囲まれた。
車を止める運転手。
ばらばらと凄い勢いで武装した大男たちと赤いミニスカートのタイトドレスの美女一人が止めた車の群れから降りてきてマシンガンと遠くからスコープライフルを構えて、ライトで鬼田と彩を照らした。
彩はまだ女子中学生であった。完璧な包囲網の銃と意識の訓練された武装集団に鬼田のサイコキネシスのみでどうやって戦えばよいのかわからずに両手を差し上げた。鬼田はそれにならった。
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二人は巨大船の中にいた。 遠い別々の部屋で鉄製の手錠を後ろ手にかけられている。
彩が鬼田の力を借りて船の構造を完全に把握した。 鬼田にテレパシー( チ カ ラ ヲ ダ サ セ ル )( ワ タ シ ノ テ ジョ ウ ヲ コ ワ シ テ )
パンッ 彩の手錠が壊れて外れた。
次に彩は鬼田の手錠を鬼田の力を用いて、スッと壊して外した。
鬼田は彩から送られてきた船の内部構造を読み取り、グニャリと”曲げ”て( 90度。曲がった先で更に90度 )、大型船の内部構造を滅茶苦茶にした。
毒ガスの機械装置があり、彩が機械を遠隔操作してバルブを開いたり、破ったりして船中に毒ガスを噴流させた。
扉をお互いに壊しあい、警備兵を血みどろの肉塊に変えながら二人は互いに合流しようとしていた。銃などを使う警備兵もいたが、二人には通じなかった。
緊急サイレンの音が鳴り響く。
ウォーン!ウォーン!ウォーン!
ものすごい量の毒ガス。白紫色であった。 二人は合流し、ゆっくり歩いていた。毒ガスは縦に楕円をユラリユラリと描いて二人に届かない。
宇宙服のような毒ガス防護服を身につけた大きな体の武装兵士たちと小柄な兵士 ―あの美女であろう― が火炎放射装置を背中に背負い、 ドウドウ と音を立てて、噴射してきた。
が、二人は物ともせず宇宙服兵士のほうへ歩いていく。
突然、宇宙服兵士の体が四散した。バシッ! 鬼田の攻撃であった。 次々と四散する中、宇宙服がブシュッと切れ目が入り破れ、猛毒を吸い、のたうち回って動かなくなるものも次々と出た。 彩の鬼田の力を借りた高度な攻撃であった。
鬼田は敵の進入路を次々と操作していく。 敵の退路をバンバンと塞いでいく。 そうやって、逃げる敵の動きをコントロールする。
彩は問い詰めようと、あの赤いミニスカートのタイトドレスのリーダー格の美女を死体で塞ぎながら歩み追いかけていった。 鬼田も承知済みだ。
美女が大男の死体を片手で掴んで投げ飛ばすさまを見て、(魔物)と彩は思った。
何十人もの死体で美女の道を塞いだが、すべて 腕一本で掴んで投げてどかして逃げていく。
だれかが「 菊花さん 」「 きっかさん 」と呼ぶので呼び名であろう。 船上の外へ出た。
菊花と兵士二人が船の先端のほうへじりじりと逃げていく。
菊花の片膝がグ…、と落ちた。 彩が歩かせないように足の動きを止めた。
菊花の頭の中を彩の持つあらゆる技術を使い読んだ…。 なかなか読み取れず、菊花の体を鞭打つように鬼田のサイコキネシスをもちいて痛めつけその隙をついてすべて読み取った。
彩「 わかりました。石井菊花さん。自分で死になさい 」
船のアラートサイレンが凄い音を立てている。
ウォォーーン!!ウォォーーン!!
(鬼田君、機械をむき出しにして)
いっせいに床の扉が開いて沢山の毒ガス装置がばかばかと開いてむき出しになった。 彩「 私たちを殺そうとした毒があるわ 」
彩は機械を指差した。
菊花は宇宙服を脱ぎ始めた。
左膝を下げられているが、見事なプロポーションの立ち姿であった。 化粧をしていないが、30歳くらいの大人の美女で非常に美しかった。 赤いミニスカートのタイトドレス姿は背も大きすぎず、瘦せすぎず、ファッションモデルとは別次元の現実的肉感的美しさであった。 どんな男でも傍にいたいと思うだろう。
菊花は這いずって床の毒ガス装置に近寄り、ホースとマスクを取り出して、豹のように部下の大男に襲い掛かった。
大男に馬乗りになり、宇宙服を破いてちぎり取り、毒ガスマスクを押し付け、された下の大男は菊花の髪の毛をむしるのでその男の手をプロレスの指四つにしてメキバキと折る。2秒で死ぬ。 もう一人の大男は失禁して座り込んでいて、同じように菊花にやられた。
菊花は彩と鬼田に正面を向き立ち上がり、神経性ガスの流れる毒ガスマスクを自分の顔にかぶせて10分かけて死んだ。
サイレンはけたたましく鳴り響き、彩はこの巨大船の構造をすでに知っていた。 信じられないような量の爆発物を積み、自爆消滅できることを。
煙が立ち上ってきて、小規模の爆発が起き始めた。 白紫の毒ガスの噴流がもの凄い。
晴れた夜空に見渡す限りの海。 巨大な船上で海にも飛び込む暇はなさそうだ。 この爆発物の量なら仮に飛び込んでも同じだろう。
菊花の頭の中には、通常爆発物、原子爆弾、水素爆弾、びっしりとデータがあった。
彩が「 鬼田君、頑張ってね 」と背の高い彩が鬼田を抱きしめ、自分のおでこを 鬼田のおでこに つけた。
( ア ナ タ ノ チ カ ラ ヲ ゼ ン ブ ヒ キ ダ ス )
宇宙からはっきりとおおきく観測できる丸い光が地球にキラキラと光った。 それは 長く続き 美しかった。
* 彩と鬼田君(2) 終 *
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No.28 - 2026/03/08(Sun) 21:40:00
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