 | * 彩と鬼田君(3) * 武井信夫 作
−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 文化大臣賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 文部文学賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 文部大臣賞受賞作品− −西暦2026年1月20日(火) 旭日殊勲賞受賞作品−
彩が菊花から読み取った情報は非常に入り組んで、絶望的なものであった。
パパやママは大丈夫だろうか―
港で彩は考えた。 彩と鬼田はびしょ濡れである。
大量の海水の塊を防御シールドにして、放射能や爆発をガードし、日本東側に高速移動して辿り着いた名前も知らない港―
超能力開発部門・薬品部隊―警察と自衛隊が関係している。 要するに日本国が敵ということである。
世界各国―特にアメリカが、その日本近海での爆発を観測して関心を持った。 一体何事かと日本国に聞いてきた。
杉本総理大臣 「 この度はお騒がせして申し訳ありません。実験なのですが、爆発が大きすぎました 」
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彩と鬼田のふたりはタクシーを拾い、彩の自宅へ帰った。
ママと今回の件について話し合った。
ママは 「 もう覚悟をして戦い抜くしかない 」 と言う。
彩 「 私たちはこそこそせず堂々とふたりで街を歩く。何も悪いことしてない 」
ふたりは学校へは行かず、アイスクリームコーンを食べながら歩いていると、サングラスをかけ新聞を読んでいる帽子をかぶったグレーの背広の姿がよく目についた。
カフェテラスの外で、茶を飲んで、チラチラ二人を見ている。
お店で何か頼むと店の主人の頭の中に毒物を入れている情報があった。 毒が飲み物や食べ物に入っている!
仕方がないので水道水を飲む。
スーパーでカンパン、カロリーメイト、カップ麺を買い込む。
戦車と自衛隊員、警官が連携をとって街中で彩と鬼田を包囲にかかる。
彩は団地の自宅へ逃げ込む。 ここならまさか砲撃などはしてこないだろう。
鬼田は迫りくる戦車を団地から見下ろして吹き飛ばしたり、ペシャンコにしながら、彩のパパとママの逃げる時間を稼ぐ。 彩 「 パパとママは東北へ逃げてね、急いで! 」
親を逃がし終わった鬼田と彩はこんな存在を今まで知らなかった恐ろしい連中と戦う羽目になった。 自衛隊レンジャー部隊―
団地の四階での死闘― こういう場所での格闘戦もプロ中のプロである。 さすがの彩でも、その動きには苦戦した。
下から梯子、上からヘリコプター、階段から― レンジャー部隊には彩と鬼田に対してあきらかな殺意があった。 同じ日本人をためらわず平気で殺せる―そういうメンタリティーと教育、権限、命令を受けていた。
その殺意に腹を立てた彩は連中を肉塊に変えてやった― 裏返しというやり方である。 体の中と外が裏返って、それでも生きたままにさせるという技だ。
ここでは危ない― 彩と鬼田はレンジャーの裏返しの山を築きながら階段を駆け下りて団地を走り出た。
東京の市街地で戦車を吹き飛ばす鬼田。
しまいには機動部隊の連携の取れた動きに大包囲され追い詰められたふたり。
エスパーとは己が特別な人間であるという自覚により自我の肥大した連中で、ことごとく邪悪な者達である。 所詮、才能がない者がほとんどである。
彩 「 鬼田君の才能を信じる…、お願い…、限界を超えて…、鬼田君の力を私が大きくする… 」 彩の技が鬼田の意識を拡大化した。
青色の光の柱が立ち昇った。
それは世界最大の水爆ツァーリ・ボンバの一万倍の威力の青い柱。 円柱の形のサイコキネシスとして上にも下にも横にも大穴が空いた。
ふたりは青く縦に白線混じりの透き通った円柱の光の真ん中で宙に浮かんでいた。 蒼い光の中で彩は髪を揺らしていた。 ズームアウトするとふたりは点に見え、やがて認視できなくなる。
彩 「 蒼い力…? 」
東京圏は壊滅した。
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日本国はこのふたりには攻撃や研究を諦めた。
彩 「 学校も青木もみんな消えちゃった 」
関東平野に深い大穴が空き、海水がなだれ込んだ。 日本の地形と日本地図が変わってしまった。
海外、特にアメリカが注視していたが、日本の首都圏が全滅するとは、なんの騒ぎ、あるいは実験なのかと調査開始した。
日本の臨時政府はこれだけの被害と、アメリカの目は誤魔化せないと判断し、調査に協力した。
その大まかな内容は日本の軍隊が出動して中学生の男女のエスパーを超能力開発部門・薬品部隊、警察、陸自、海自が出動して研究目的で追い詰めた所、この大悲劇が起きたと認識、発表した。
国民と世界から日本臨時政府へ非難が殺到した。
アメリカと日本臨時政府の仲裁、話し合いにより、この中井彩と鬼田哲郎ふたりに対して、何もしないことを決めた。
普通の子供と同じように扱い、同じように生活させる。
合流した中井家のパパ、ママ、彩、鬼田は飛行機で千葉の館山に向かった。
そこに移住することに決めた。
田舎で学校ものんびり、海も近く、潮風、グレーの海、蒼い空。 晴れると実に良い所だ。
所々、草地にマンホールが転がっている雑さも良い。
4人はこの田舎が気に入った。
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ふたりの能力の調査をして、力の関係などの結果が出て、日本臨時政府及び国際機関は中井彩と鬼田哲朗のふたりを離れて暮らさせて、会わせないことに決まめた。
鬼田は北海道の児童保育施設に行くことになった。
空港―
彩 「 鬼田君、あなたの心の中を視たことがあるのよ。空と山々、綺麗な草木、沢山の雲、ジャンボジェット飛行機が飛んで、猫が映った画で、心が綺麗でいっぺんに好きになっちゃった。でも…、お別れね…、もう会えない… 」
鬼田 「 そう。うどんでも食べない? 」
彩 「 あはは! 鬼田君らしいわね 」
ふたりは空港でうどんを食べた。
鬼田 「 美味しい? 」
彩 「 うん 」
彩は涙を流していた。とめどなく溢れ出て、おさえるのに必死だった。
鬼田 「 さようなら、彩ちゃん 」
* 彩と鬼田君(3) 完 *
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No.27 - 2026/03/08(Sun) 21:29:00
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