 | * 赤いパラソル * 武井信夫 作
−西暦2026年1月20日(火) 児童文化文学賞受賞作品−
井上由香( 14才 )は日差しの強い西日が差す日に青いチャイナ服と青いチャイナシューズを身に着け、赤いパラソルをさして散歩をしていた。
白ウサギが一匹、ぴょんぴょんと歩いていたので 後をついていった。
どんどんついていくと霧に包まれレンガの階段に突き当たった。 霧は広大だったので、レンガの階段を上り続けていった。
途中、階段が左に折れて、どれだけ上ったか見当がつかなくなっていった。 そのうち、草地に線路のあるレンガ造りの駅のホームにつながっていった。
由香はホームに立った。 大きな太陽の夕日。西日だろうか。
右側にあるレンガのトンネルから赤い列車が出てきた。 由香の立つホームに列車が停まる。
列車の中からは幽霊のような人々がぞろぞろと出てきた。 体は白い。背広やシャツでカバンを持ち口を丸く開いていて目と鼻は無い。
背中からさす日光に服が陰る。 さっき見かけたウサギが駅のホームにいて由香のほうを向いた。 そのウサギが にょき と大ウサギになり二本足で立った。
ワイシャツにネクタイを身に着けていてズボンを履き、足は大ウサギの素足。 長い両耳は片方が折れている。 大ウサギは由香を見た。
大ウサギ「 異次元に迷いこんだようだね 」 大ウサギ「 やあ。僕はイナバ。由香ちゃん。こんにちは! 」 大ウサギ「 この列車に乗ると すごい所に行くかもしれないよ。それでも行くの? 」 由香「 だって私、何が何だか。乗るしかないの 」 大ウサギ「 じゃあね、一緒に行こう 」
大ウサギと由香は4人席に向き合って二人で座った。
由香は進行方向に顔が向いた向きに座り、大ウサギは背中が進行方向である。
由香は左足の側に閉じた赤い傘を椅子によりかけて置いた。右側が大窓だ。
他に乗客はいない。 列車は走り始めた。
大ウサギ「 見てごらん。あれがアンドロメダ星雲。あっちが君の居た銀河 」
大きく光るアンドロメダ星雲が手前にきて、左遠くにぐしゃぐしゃの銀河が視えた。
由香「 この形の良いのがアンドロメダね 」
大ウサギ「 アンドロメダ星雲は大変です。重力地獄で。銀河系は機能的です 」 大ウサギ「 第11銀河と呼ばれる( ハナモクセイ )に着いたよ。中心近くに ブラックホールで御座います 」
大ウサギは指をさして言った。
四葉のクローバーのかたちの銀河に中心あたりが黒くなっている。 赤い列車はその中心あたりにどんどん進む。
大ウサギがちょっと気の入った顔で「 突入だよ!覚悟して! 」 由香「 えっ 」
列車の先頭から光球が短い尾を引いて発射された。
ボヒュ
大ウサギの眼が上下藪にらみになって言う「 次元を開いたよ。ブラックホールの異次元って、どうなってるのかな?由香ちゃん 」 由香「 わかるワケないわ 」
パアアアアアア
光の裂け目が開いた。
その中にいろんな形の光が更に光踊っている。
大ウサギ「 それはね、君のイメージなのさ 」
列車はその光の中へ進んで行き、入った。
雲を突き抜け列車は降下していく。
ル・ル・ルル
深そうな海があり水面がキラキラと輝き小島がチラチラとあり、大きな木が島ごとに1本か2本生えている。
由香「 見渡す限りの青い海 」
大ウサギ「 なるほど、ここが君のイメージかい? 」
赤い列車はかなりの鋭角でキラキラと輝く海に突入した。
ジャボーン
大ウサギ「 窓を閉めよう 」 由香は席から立ち上がって大窓を両手で一生懸命に閉めた。
深い海の中を赤い列車が横に進んで行く。立派な太いごつごつ枝のようなサンゴ礁が見える。
そのうち列車の外が何もかも紫に光り輝いた。
光る星だらけで規則正しく並んでいた。輪になっていたり、直線だったり、遠近法を持った光景だ。
その光の洪水の中を列車は横に進んで行く。
大ウサギ「 光の海だ。君は凄いね 」
そのうち赤列車は降下していって電車の線路網が見えてきてその上を進む。 前方に大きな駅がある。緑で千葉駅と書かれている。
大ウサギ「 由香ちゃん 着いたよ! 」 由香「 元の場所? 」 大ウサギ「 保証はできないけどね 」
赤列車は線路に乗り、大ウサギと井上由香は足で降りた。
良く晴れた昼間だった。
由香は赤いパラソルをさして人込みを大ウサギと歩いた。
駅前のSEGAのゲームセンターに向かい、プリクラを一緒に撮った。
カシャ
大ウサギは右手で着ぐるみの頭を外し、人の顔が映った。由香は向かって右に映った。
由香「あっ武井君!」
実はこの二人、小学生時代のときの初恋の人同士であった。
* 赤いパラソル 完 *
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No.26 - 2026/03/08(Sun) 21:18:15
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