 | * 霧の中のジュン * つちやみずこ 作
−西暦2026年1月20日(火) 文化厚労賞受賞作品−
20歳になったお祝いとして旅にでた桜田 純子は東北の山深い旅館に到着した。
旅館のおばあさんがジュンを出迎えた。 「 一人で遠い所をようきなすった。もうご飯だで、温泉もあるで 」
ジュン「 ありがとう、おばあさん。わたし、男の子とか嫌いで。明日からさっそく神社巡りをしたいのだけれど 」
おばあさん「 それならば、気をつけてな 」
次の日の朝、ジュンは旅館を出て、山深くに沢山ある神社を見て回った。
ジュンは樹木に囲まれた狭い所で霧に包まれた。
すると、地図が役に立たなくなった。 ジュン「 全然違う 」 携帯電話も役に立たなかった。 何も届かない。
困り果て、持ってきたお菓子や、おにぎり弁当を食べながら自分はこのままでは死んでしまうと思った。
歩き進んで疲れ果てていたら、木の杭で出来た塀があり、門があった。 中にはずいぶんと小さな人影があった。 霧は相変わらず濃い。 その村は地図には無く、場所がわからない。
ジュンの半分ほどの背丈のおじいさんに尋ねた。 「 おじいさん、ここは何ですか 」
おじいさん「 わしらコロボックルだ。人間からは妖精とかとも呼ばれる。あんたの戻り方なんか知るか。わしらも行けんよ。それよりも、今わしら大変なんだ。悪いものが流れ出してな。病人や怪我人、頭の調子が悪くなってしまってなあ 」
ジュンもなんだか体調が悪くなってきた。
おばあさんが近寄ってきて、「 あんた体が大きいのう。頼まれてくれんか。奥殿と呼ばれるところの封印が解けてしまったようだ。それをなんとかしてほしい 」
ジュン「 わたし、お腹が空いて。あとお風呂に入らないと 」
おばあさん「 では、支度する 」
山盛りの炊いたご飯と焼き魚と山菜の入った味噌汁が出てきてジュンはがっついて食べた。
おばあさん「 風呂も体の大きさに合わんが沸いている。桶で汲んで体を洗え 」
ジュンは村で一番大きな入浴場へ案内され体を洗った。 服はコロボックルの人たちが工夫して洗ってくれた。
ジュンは大広間で座り込んでしまった。 おばあさん「 ゆっくり休みなさい。あまりいい夢も見れないし、体調もあまり良くならんだろうが。眠らなければな 」
ジュンは悪い夢を見た。 触手のようなものが追ってくるので逃げたり、骸骨が棒を持って殴ろうとしたりして、目が覚めると神経が疲れ切ってしまった。 これでは病気にかかっても不思議じゃない。 体も疲れがあまりとれない。ぐったりした。
おばあさん「 よくわかったろう。これは奥殿の昔退治されたアササボンサンの仕業だ。おまえさん、それを退治してきてくれんか。礼は後で決める 」
ジュンもこんな体調では嫌だと、それをすることに決めた。
ジュンは用意してもらった女性らしく露出の多い黒鉄の鎧をサイズを合わせて身に着け太い直剣一振りを持った。 パーツ型の鎧なので体に合った。 腰に道具類の入った丈夫な布の袋を下げた。 そして、カロリーの高そうな甘い食べ物をたくさん食べた。
おばあさん「 いいか。奥殿までの建物の部屋は一から四まである。最後の四の部屋に棺桶がある。アササボンサンはその中で息を吹き返しているに違いない。棺桶の鍵を外してそれを倒してからまた棺桶に鍵をかけてきてほしい 」
ジュン「 入ると一体何がおこるのですか? 」
おばあさん「 何がおこるのかはわからん。変わるのだよ 」 おじいさん「 建物の大きさから一番体が大きく背の高いお前さんがふさわしいと皆で決めた。来たばかりで済まないが 」
ジュン「 行きます 」
霧深い森に入り、道なき道を進んだところに石造りの建物があった。
村人たちが見守る中、ジュンはひとりで石造りの建物の中に入った。 「 邪気がでるのでな、扉は閉めさせてもらう。ここは一の部屋。出るときはそこで叫んでくれ 」
ドン!と扉が閉まると部屋が真っ暗になった。 ジュンは左手に持った松明に火をつけた。 すると、天井があるのに雨が降ってきた。 耳に若い女の不気味な笑い声が届いてくる。
ジュンは走り抜けて、真っ直ぐ二の部屋に向かった。 入り口を押して開く。 二の部屋に入った。 すると、髑髏と人骨が沢山降ってきた。 ジュンは走って突っ切る。 三の部屋に入ると泥に足をとられ、膝まで浸かる。 ずるずると力任せに歩いて進む。
ようやく四と石に刻印された部屋までこれた。 松明は切れたが、何故か明るい。
太くて巨大な尖ったあばら骨が暗闇から左右に飛び出す。 ジュンは転がって避けた。 ザクザクとあばら骨が飛び出し続けるのを避けながら棺桶まで来た。 腰の道具袋から大きな鍵を取り出し、四隅にある鍵穴を全て解錠した。 重いふたを手前から押してずらして棺桶を開いた。
ぎょろ目の縁取った原色の色とりどりの気味の悪い妖怪に見上げられてジュンは気を失いそうになった。 ジュンは尻もちをついて、のけぞって両腕で上半身を支えて両膝を立てて足を開いてしまった。 妖怪は棺桶から立ち上がって開いたままの大きな口から太くて長い舌を出して涎を垂らしている。 そして棺桶から出ようと動いている。
ジュンは足を震わせながら立ち上がり、落とした直剣を拾い両手で握り、「 タア! 」と声を出して左上から右下へ妖怪の胸までざっくりと斬撃をして、更に右上から左下へと斬撃を繰り返し、vの字型に妖怪の上半身を切り落とした。そして妖怪の頭を縦と横に一閃してバラバラに切り落とし、その残骸が棺桶の底へぼたぼた落ち、v字にえぐられた残った体も力を失い棺桶の中に崩れ落ちた。
原色が棺桶の底でぐにゃぐにゃで動かないのを確認して直剣でブスブス突き刺してみた。何の反応もないので棺桶の蓋を後方から押してずらして棺桶の箱上部にぴったり合わせて鍵を四隅にしっかりとかけた。
すると、部屋が真っ暗になったが、頭の中の悪いものが消えた。
手探りで真っ暗の建物を四の部屋から一の部屋まで戻る。
三の部屋は泥が消えて真っ直ぐ石畳の上を歩けた。 二の部屋は人骨は降らない。 一の部屋は雨など降っていない。
ジュンが叫んだ。 「 終わりました!!出してください! 」 扉が開き、小さな村人たちが出迎えた。
ジュンはそこの村人たちとあの村で暮らしていくと決めた。
* 霧の中のジュン 完 *
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No.23 - 2026/03/08(Sun) 20:53:32
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