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記事No.22に関するスレッドです

短編小説 / GIL
* 竜牙(1) * 武井信夫 作

−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文化大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部文学賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部大臣賞受賞作品−

ヤーッ パシ パシッ

ドタドタドタ

青葉高校剣道部、全国でも中堅に位置する連中がいる。

風井 竜牙 170センチ 60キロ 1年生のバッジ

風井竜牙は空手部がないことに残念がっていた。
子供のころからイジメめにあい、強くなろうとした竜牙だった。
中学から空手の町道場へ通い、喧嘩に明け暮れたが、内申書次第で落第しそうな気がしておとなしく過ごし、高校へ入ったら
もう喧嘩はやめた。自分の実力が喧嘩のレベルではないということに気づいたのである。

竜牙が空手を選んだ理由−柔道は性に合わない。ガニマタになるのは御免なのである。
           −剣道は武器がいる。
           −空手は立ち姿が美しい。
           −合気道?嘘っぱちだろう。
それだけだった。

喧嘩しても −− もちろん大人とはやらない。
いずれは自分も大人になるのだ。
その時にやればいい。

だが高校生の自分は高校生には負けたくない。

刃物を使うやつは論外だ。
キチガイである。
馬鹿らしい。
第一、そんな奴は殺しかねない。
少年院など行きたくない。

そこで剣道部へとやってきた。

空手着は空手部がないので見栄っ張りみたいで恥ずかしいので着ない。
ジャージはダサい。 
だから黒い普段の学生服(ガクラン)だ。
制帽まできちんとかぶっている。 

剣道部の顧問に申し立てた。
寸止めで稽古 ― お互いに有益であると顧問の先生が判断した。
ただし、竹刀はぶつけられる。
ガクランで防具なし。

剣道部の連中に生意気を言う俺を懲らしめてやろうとする空気がみなぎり、
みんなうずうず楽しみでしょうがないといった空気があふれている。

 一人目 − 防具で顔は良く見えないが真面目そうなやつだ。
須崎と書かれている。

ダンッ
         
喉を狙いつけて竹刀で突いてきた。
カウンターで須崎の眉間に俺の拳が止まる。

顧問の一本の声。

剣道部の連中の顔色が変わった。
竜牙が勝ったからだけではない。
動きが曲線を描き決めたからだ。

「 こんなやつがいるのか 」
顧問が言った。
「 これじゃ、無駄だと思うが全員相手しろよ 」

三十人いる部員のうち15人目で俺はつまらなくなった。
二人までなら一度に勝負ができると思い、そう要請すると、顧問も手をたたいた。

「 化け物ならしゃあねえなぁ 」

顧問は汗を拭きながら言った。
俺は夏でも長袖のガクランを着ている。
あまり汗も出ないためと、他のやつらと区別をつけておきたいのだ。
毎日母親が洗濯してくれるのでなんてことはない。
洗濯機と乾燥機で洗えばいいのだ。
制帽は器用に洗ってくれる。
優しい母親だ。

夏の道場内で動き、少し汗をかいてきた。

部員が二人がかりで襲ってくる。
先に攻める。
空手に先手なしとはいうが、いろんな意味で俺の空手には先手がある。
一人を倒すまでが集中のしどころで、いい訓練になり楽しい。

主将と副主将…一番強いのが二人がかりで襲い掛かってきた。
相手は俺に勝つつもりだとわかる。

片方に後ろに回られた。

間合いを取られ、こいつらは円を描くように動いてくる。
後ろと前、左と右に変化させ距離も大きくとったり小さくしてみたり。

< 竹刀を腕で受けるか?そうすれば一人倒せて後は簡単だ >

しかし、そんなことをすれば真剣なら腕がすっ飛んでしまう。
そんなことをしたら負けだ。

集中した。
 
< 一人だ >

倒す相手を変えないことだ。

相手は倒す相手をぶらそうとしている。
この相手はフェイントを仕掛けてくる。

こいつらの実力は同じくらい。

だが、なるべく先に強いほうを倒さないと面白くない。

俺はあえて難易度を上げた。

体の大きいほうの田中に決めた。

フェイントに乗らない。
間合いを一気に縮める。
狙いがばれてもいい。

竜牙は俊足を出し切った。

前後から振り下ろされる竹刀。
制帽がはじめて宙を舞い、顧問の足元まで飛ぶ。

読まれたのか田中がフェイントから胴を狙ってくる。
スピードで押し勝つ竜牙。

回転してよけながら背中を向け裏拳ががつんと面へと当たる。
防具をつけていなかったら鼻が原型を留めなかったであろう稲妻のごとき体さばきからの一撃であった。
頭が揺れて尻を床につく田中。

もう一人が迫ってくるが正面を向いている竜牙はするすると∞を描いた動きで相手に迫り竹刀の動きを狂わせ懐に飛び込むと正中線に上から下へと四発入れた。

***************************

柔道部の三島が巨体を揺らして廊下を歩いていた。
顔に肉がたっぷりついていて、眼には変質狂の光が宿っていた。
昼休みの学生食堂へ向かうが、みんな三島を恐れていて目を合わせないよう下を向いていた。

竜牙は混んでる食堂の入り口で天玉蕎麦を食べていた。

そこへ三島が人を睨みつけながらやってきた。
竜牙と目が合う。

「 どけ 」と、三島は言う。

「 ずるるる 」と蕎麦をすする竜牙。

その目は三島の目を見ていた。
そのまま蕎麦麺をたいらげ汁を飲む。

目は三島の目から離れない。
空になったプラスチック製のどんぶりを左手に持ったまま三島と目が合い続ける。

「三島さん」と声が飛び、そこへ体の大きな学生服の男子が食堂に5人、入ってきた。
飯を食いに来た柔道部員たちだろう。

ほかの生徒が少し怯える。

「三島さんこのチビがなにかしたんですか?」
「いや、このやせっぽっちがな」三島の顔は真っ赤になっていた。

三島はほかの生徒の前でメンツを潰されたと思っていた。
右手で竜牙の胸ぐらを掴もうと手を伸ばした。

ぱんっ

竜牙のどんぶりを持ったままの左手が三島の腕をはじいた。
はじかれた三島の腕は右上に勢いよく大きく飛んだ。

「この野郎!!」三島は両手で竜牙の胸ぐらを掴もうとした。
その時。

パン!

と、三島の左頬がぶるんと揺れて、体が横へ揺らめき飛び長方形のテーブルに大きな音を立ててぶつかり、ほかの生徒の料理を薙ぎ倒した。

カレーライス、うどん、そば、チャーハン、コロッケ、ラーメン、ハンバーグ、トンカツ、ソース、醤油。

顔を真っ赤にした三島が立ち上がって竜牙に襲い掛かる。

正拳突き

三島がまた同じ方向へと後方に倒れ、背中から床に散らばった料理の上へ倒れる。
真っ赤なめちゃくちゃの表情で立ち上がりかけた時、竜牙のスニーカーが三島の左顔面に飛んだ。
ぐにゃりと内股で丸く座して動かなくなった三島。

それを見ていた5人の柔道部員たちは一斉に竜牙に襲い掛かる―

3分後、最後の一人になった柔道部員が竜牙から逃げ回っていた。
物凄い量の汗をかいていた。

鼻血も両方の穴から吹き出し片足を引きずり頭をガクガクと振動させ逃げていた。
汗もかかず早歩きで食堂の外へと逃がさない竜牙。

端正な顔が笑っている。

「おい」―後ろから竜牙に声がかかる。
低い男の声だ。

大きい男が立っていた。

渡 康介 188センチ 90キロ 3年生のバッジ

竜牙は嫌な予感がした。
< こいつに負ける >

竜牙から先に手を出した。
膝を正面から蹴る。
危険な技を出した。

そこへ渡の足の裏が合わさる。

後ろへ吹き飛ぶ竜牙。
壁に背骨をぶつける。
立ち上がるに上がれない。
上から腕を決められ押さえつけられていた。
体の正面が床につき、後ろ手に腕を決められていた。

*******************************

大東流合気術 ― 実戦合気術として知られている。

渡 康介がそこの3段 天才

それを知ったのは竜牙の通う空手の町道場の道場主からだ。
竜牙の師匠である。

師匠は目が柔らかく優しい。
そして鋭く強い。
50歳をとうに越えているのに30歳の見た目だ。
髪は短かった。

師匠「 あそこのは強いぞ。理合いには理合いで勝つしかない。理合いで負けてるとな、どんな武術でも勝てない。空手で勝つには打撃を理合いと化す 」

竜牙は悔しかった。
早く勝ちたい ― そう言った。

師匠「おまえも天才だ。なんとかなる。もう一度やってみろ」

理合いに対して集中力 ― それが師匠からのアドバイスである。
集中力を強くする。

竜牙はその訓練を毎日徹底的にやった。

*******************************

渡の教室に竜牙は行った。

「おう、1年坊」

渡 康介が教室の奥から呼び出されて竜牙にそう言った。

「夕方か」

**********************

西日の差す屋上。
風井竜牙と渡康介の二人。
向かい合って立っている。

二人とも足を広げ仁王立ちだ。

渡「もうやめろ。俺との勝負は」

竜牙はやると譲らない。

< 腕の一本は折らなくては > 渡はそう決心した。

渡の顔面に竜牙の集中力の乗ったストレート。

< こいつ >

体を横にするように避ける渡。

< いつの間に >

< 本気でいかなければ >

渡の動きが変わった。
両腕を前に出し、指をやや開き、姿勢のまっすぐな自然な立ち方。
やや膝を落とす。

集中力と理合いで争う攻守。
打撃に掴みに両者譲らない。

攻守入り乱れた戦い。
掴みに避け。
打撃に避け。

1時間以上も経過し暗くなってきた。
竜牙の執念が増す。その執念による直感が渡康介の理合いを越えた―

先の先―― その戦いを一瞬、竜牙が更に越えた!

弧を描く外気味の左フックが渡の右顔面にヒット。
意識の飛ぶ渡。
そこへ竜牙は正面に移動し力任せの右正拳突きを声を上げて入れた。

「トウ!!」

前歯と鼻が砕かれた渡康介は倒れた。
竜牙は少しかがんで膝の上に両手をついて、肩で息をした。
汗だくになっていた。
倒れたままの渡康介を後にして学校屋上の階段を使い校内建物へと降りて行った。

*****************************

夏休み。
早朝、玄関に座りスニーカーの紐を縛り、リュックを引き寄せ立ち上がり背負った。
半袖の丸首シャツは鮮やかな青色である。
玄関を出ながら、「母さん、行ってきます」
竜牙は夏休みの間、旅をしながら修行をするのだ。
空気が新鮮だ。

竜牙は空を見上げ歩き出した。

* 竜牙(1) 終 *

No.22 - 2026/03/08(Sun) 20:45:20

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