…誕生日を祝う言葉だった。
心臓が止まりそうになりながら開いたSNSが、自分が誕生日を迎えたことを、本来、こうあるべき日であることを思い出させてくれた。 ロシアの友人からのメッセージが。 3年前にワシントンで開催された国際宇宙会議で知り合った大学生だ。今は修士課程にいる、とある。 学生なら基本的には駆り出されない、そう考えて安心したいと思った自分に気づいた。
うちの家族は、父親が元軍人、兄は現役の空軍パイロットだ。夏休みに帰省した時は、二人とも楽観視できないと厳しい顔で口を揃えた。 もう一人の兄は、父の会社を手伝って世界中を行き来している。明らかに世界は変わったとつぶやいた。 すぐ下の弟はこの最中に高校を卒業した。オリンピアンの実績から大学からのスカウトを誰もが想像したが、進路に選んだのは海洋安全関連の養成所だった。以前からそうすると話していたが、今、改めて思いを強くしたのかもしれない。 そして、来年は一番下の弟が高校を卒業する。自分同様、電子工学専攻を目指しているらしい。せめて、その時には明るい世の中に戻っていてほしい。
その弟に宇宙飛行士を将来の視野に入れると話した高校の時から、ロシア語を学んできた。 今、ニュースに挟まれる現地の映像は、全て原語で理解できる。そこで語られる内容と、隣国の状況、今、自分がいる国のこの生活、それらの食い違いが、否応なく思考を焦がす。
国際宇宙会議は、今年、パリで開催された。団体も個人も、ロシアからの関係者はいなかったと聞いている。 ロシアの友人は、メッセージのなかで、今年はIACに参加できなかったとつぶやいた。来年の開催地はアゼルバイジャンだ。彼にとって距離的にも条件が良い。だが、彼はそれに触れない。 僕に元気でいるように言い、もう一度誕生日を祝う言葉でメッセージを終えた。
彼に返すメッセージに思いを巡らせていたところに、いきなり破裂音が響いた。 寮の部屋ではテーブルにピザとビールが山と積まれ、クラッカーを持ったルームメイトと友人たちが歓声をあげている。 満面の笑みを浮かべる彼らに対して、自分はどんな顔をしていただろう。 本当に、何の音だかわからなかった。
世界中の誰もが幸せに─
かつて自分がそう思えていたことを、今更ながら思い出した。 夢は、夢見ているかぎり、 現実にはならない。
ならば、自分にできることを。 少しでも誰かを救えることを。
——————
ジョンは今日、21歳になりました。 学年で言えば大学3年生、もちろんハーバードの、です。 米国の、しかも最高学府の三年生がどんな学校生活を送っているかなんて、正直、皆目、見当がつきません。(^^);; 多分…ですが、教養科目はとうの昔に単位を取り終えて、天文学と電子工学を突き詰めながら、義務教育の続きでは触れ得なかった、少し広い社会を感じているのかも?
学問の長が集まる同校でどこまで世界情勢が語られているのかはわかりませんが、少なくともジョンは、環境的にも本人の性格的にも、大いに気にしているのでは。 宇宙開発に対して自国に並び立つ彼の国は、言葉もわかるし、知り合いもいる。いずれはがっつりと組んで仕事をすると思っていた矢先に起きた事態に、ジョンは折に触れて気持ちが波立っていると思います。 そして、それが将来活動する際の、彼なりのコンセプトにも関連するのかも、とふと思いました。。。
そういう意味で、今年は正直、ハッピーなお誕生日ではないかもしれません。 ただ、彼は情報分析に長け、それゆえに物事を多角的に見られる人物です。今の彼なりの思いを胸に、思う道に邁進してくれればと思います。
めでたい日に重た暗くてスミマセン!
いろいろあるけれど、 Happy birthday, John. あなたの誕生日を迎えられて、私は嬉しい。 |