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掲示板 DC

こちらは、陸内(くがない)なるみのDeepCollectionの掲示板です。
2022年4月から作品発表をピクシブに移行しておりますので、この掲示板では近況や更新情報などを載せていくことになります。
 pixiv:80426221 です。

放さない / なるみ




 ずっと近くにいた。
 当たり前だと思っていた。
 俺にとって若島津はそういう存在だった。
 情けないことに、自分では意識していないところで俺は奴に依存していたのだ。
 だから、中学卒業を期に東邦学園から去るという話を聞いたときは、ショックを受けた。
 そして俺は気がついてしまった。
 若島津を手放してはいけない。
 奴は俺の横にいなければならない。
 そうだ。
 お前は俺のものだ。
 俺は恐ろしいほどの執着で若島津を見つめる。
 なぜ今まで平気でいられたのだろう。
 いくらでもチャンスはあったはずなのに。
 自覚がなかったのはまったく馬鹿な話だ。
 だが、遅くない。
 すんでのところで俺は気づいたのだから。
 若島津を手に入れる方法を。
 自分ながらに引くほどの強欲さで、俺は奴をなじった。
「どうして東邦を離れるんだ。どうしてサッカーを辞めるんだ」
 どうして俺から離れるんだ。
 本当は正直にそう聞きたかった。
 だが俺の戸惑いやプライドが邪魔をした。
「そんなことは許さねえぞ」
「許さないって……、あんたにどういう権利があるっていうんですか。俺は自分のことを自分で決めちゃいけないんですか」
 生意気な言葉が俺の怒りの炎に油を注ぐ。
「お前は間違ってる。お前の居場所は東邦だ。俺と一緒に高校でも戦うんだ」
「もうそんな気はなくなりました。中学の優勝でもう満足なんです。俺は空手の世界に戻ります」
「若島津」
 そんなことは許さない。
 お前の居場所はここだ。
 俺の横だ。
 お前は俺のものだ。
 狂気さえ孕んだ心が雄たけびを上げる。
「俺は許さない。どんなことをしてでも阻止してやる」
「どんなことって、いったいどうする気なんですか。もう俺に構わないでくださいよ」
 あからさまな拒絶。
 俺の頭は沸騰していた。
 考える前に手が伸びていた。
 若島津の腕を引きその身体を胸に抱く。
 唐突ないざないに驚いた瞳は黒くて、夜のように濡れて見えた。
「な、なにをするんですか」
「放さねぇ」
 俺は若島津の唇に唇を押し当てる。
 途端に、抱きしめた身体から力が抜けた。
「お前は俺のもんだ。どこにも行かせない」
「日向さん」
「今からお前を本当の意味で俺のものにしてやる」
 怯えた視線が心地よかった。
 口元をひき歪め、いっそ清々しいまでに悪辣な笑いを乗せる。
「身体使って、言う事きかせてやる」
「なにを言って……」
 綺麗な顔に焦りが見られた。
 こめかみに汗が浮いている。
「これからお前を抱いてやる」
「………」
 若島津は俺の口から飛び出した言葉に衝撃を受けたようだった。
 口元が戦慄いている。
「犯して、俺の言う事をきかせてやる。俺から離れられないようにしてやる」
 どうかしてる。
 自分でも分かっているのに止められない。
 驚愕している若島津をベッドに押し倒すのは、思いのほか簡単だった。
「日向さん!」
 蝶の羽を無残に引きちぎるように、俺は若島津を力で圧倒した。
 二人分の重みにベッドが軋む。
「やめてください。やめて……」
 抵抗は弱く、そこに若島津の戸惑いが見えた。
『大切な日向さんを傷つけることなど出来ない』おそらくそんな風に考えているに違いない。
 愚かなことだ。
 もう一度唇を奪い舌を吸った。
 震えが直に伝わってくる。
 若島津は俺の手を拒めないのだと確信した。
「お前、俺とこういうのまんざらじゃないだろ」
 カッと綺麗な顔に朱が浮く。
 俺はその頬にくちづけた。
「かわいがってやる。おとなしくしてろ」
 脅すように言ってから、もっとも感じやすい部分に手を押し当てる。
 若島津が呻いた。呻いたがまともな抵抗はない。
 お前は俺には敵わないのだ。
 ずっとそうだったのだ。
 俺が鈍かった。
 とろんとした眼で俺を見上げる様子からすると、若島津は俺に求められて感じているのは間違いなかった。
 もしかしたら、俺はお前を苦しくさせていたのだろうか。
「嫌だ……。こんなの正気じゃない。女扱いするなっ」
「口先だけだな。こっちは硬くなってきたぜ」
 俺の手の動きにこたえて、確かな熱さが伝わってくる。
「やめてくれ。こんなの違う」
「なにが違う?お前の身体はこんなに素直なのに……」
 ジャージの中に手を突っ込み直接刺激した。
 若島津は激しく身震いする。
「ダメ、……そんなの、ダメだ」
 俺の手を押さえようとする手が震えていた。
「気持ちいいか。気持ちいいだろ。声、聞かせろよ」
「や…っだ、……こんな…の………」
 俺は唇を奪いながらCENSOREDを激しくまさぐる。蜜が溢れてきて、もう若島津は拒絶できない。
「あ、あ、あああ!」
 一回抜いてやると酷くおとなしくなった。
 茫然自失という有様か。
 造作もない。
 俺は若島津の下肢の衣服を奪うように脱がせた。
 脚を抱え上げ腰に絡ませるように促す。
 もはや諦めたのか奴はおとなしくその通りにした。
 従順な贄。
 お前はやはり俺を受け入れるべきなのだ。
 俺は残酷な心と体とで若島津を辱める。
「い、痛い」
 悲痛な声を上げ、下肢の狭間は血を流し、若島津は身悶える。
 かわいそうと思いながら俺の腰は止まらない。
 わざと傷を与えるようなやり方で、俺の激情を刻むような熱心さで、若島津を抱いた。
 いや、犯したとうほうが正しかったのだろう。
「ひっ……もう、もう。……あああっ」
 立て続けにくる絶頂に若島津は息も絶え絶えだ。
「かわいいぜ、お前……」
 俺は陰部を濡らす血にさらに欲情して、心地よい肉穴の中で大きく弾ける。
 滴った液体の感触に押されて、若島津もまた射精した。
「………」
 放心したような数秒を置いて、壊れかけた若島津は涙を見せた。
 逃げ場のないことを思い知ったのだろう。
 とつとつと話し出す。
「俺はもうあんたの元にはいられないんだ。もう俺は……」
 言葉が詰まった。
「俺はサッカーが出来なくなったんです」
「若島津」
「肩が、もうダメなんです」
 告白は重かった。
「俺はもうあんたの後ろを守れない……」
 若島津はその絶望を隠して東邦を去ると言ったのだ。
 空手に戻るなどと嘘をついてまでごまかそうとしたのだ。
 そうと知って、それでも俺の激情は収まらなかった。
「許さねぇ。サッカーが出来ても出来なくても、お前は俺の元にいるべきなんだ」
 そうしたら俺はもっと強くなれる。
 速く走れる。
 高く飛べる。
 お前が一緒なら勝てる。
「うまく言えないがとにかく俺にはお前が必要なんだ」
 お前がいないとダメなんだ。
 それに気づくのが遅かったのだ。
 手ひどく扱ったことに申し訳なさを感じはしたが俺は強欲だった。
「俺はお前を放さない」
 凶悪な宣言を放つ。
 若島津の口から観念したようなため息が漏れた。
 憎まれてもいい。疎まれてもいい。嫌われてもいい。
 どうしても俺はお前を放せないんだ。
「若島津」
 ぬめる白い肌に再び伸し掛かると、憐れな生贄の肉の蕾に猛った欲望を突き立てていた。
No.1165 - 2021/10/12(Tue) 23:28:44
/ なるみ




 男同士なんて不毛だ。
 そう思っていても彼は逃れられないでいる。
 日向の熱情に焼かれている。
 ギラギラとした獰猛な視線に射抜かれて、彼はあっさり捕まってしまったのだ。
 不意に握られた手が熱かった。
 それに気を取られたとき唇を奪われた。
 男なのに押し倒されて、男なのに犯されて、もう元の自分には戻れないと思い知らされた。
 日向は彼を破壊する。
 彼のモラルを壊す。
 彼を滅茶苦茶にする。
 一度でも男に抱かれた男は変容せざるを得なかった。
 そうでなければ精神が持たなかった。
 男の肉で身体を裂かれる。
 その無体な扱いを彼は受け入れてしまう。
 女のような声が漏れる。
 虐げられて得る快感は海のように深い。
 深くて濃い。
 彼は歪みだしていた。
 残酷なことに、日向の要求は日々エスカレートしている。
 その執着の度合いが恐ろしかった。
 暴君が見せる彼への欲望は果てしない。
「お前が自分でしてるところ見たいな」
 命令口調ではないだけ厄介だった。
 無理やり望まれたなら日向を悪人に出来るのに。
「そんなの嫌だ」
「もう散々恥ずかしい真似してきたろ。なに初心な顔してんだよ」
 今日も犯された。
 しかも中に精液を出された。
 嫌なのに、身体が泣いた。
 中を潤して欲しいと、もっと辱めて欲しいと、彼の淫肉は日向のモノを締め付けた。
 身体は正直だ。
 最上級の快楽を手放したくなかったのだ。
 抱かれ続けていたかった。
『いかないで……』
 あられもないことを口走った唇を、肉厚な唇がふさいだ。
 眩暈がした。
 それは心地よくて罪深かった。
「なにぼーっとしてんだよ。よく見えるように足開け」
 日向の手が両膝を無造作に割った。
 そして彼の手を取り股間へと導いて行く。
「あ」
 若島津は抵抗しなかった。出来なかったのだ。
 SEXの余韻に濡れたCENSOREDは敏感になっている。
 日向の手は彼の手のひらを性器に押し付けた。
 感じる。
「いつもどんなふうにやってるんだよ」
「そんな……。嫌だ」
 興味津々で舌なめずるのに圧倒される。
 彼は顔を背けた。
 手の上から覆っている日向の手が、明確な作為を持って動く。
「手伝ってやんねぇとダメか」
 少しうれしそうに日向は言った。
 そして彼の股間を嬲る。
 二人の手が絡まり卑しく動く。
 歪んだ共同作業。
 蜜が伝う。
 粘着質な音がする。
「ひゅう…が……」
 若島津は日向の檻から逃げ出せない
No.1164 - 2021/10/12(Tue) 00:25:27
誇示 / なるみ



 俺の手は魔法の手だ。
 他の誰でもなく若島津にだけ作用するスーパーマジックハンド。
 そのエロさ、いやらしさは、触られる若島津だけが知っている。
 身体の中心を直に手でまさぐると、太腿が戦慄いた。
 白い肌に汗が光る。
 俺はさっきからずっと、虐めるような愛撫で若島津を翻弄していた。
 イきそうになると手を放し、じっと視線で犯す。
 息の乱れが落ち着きそうになると、また握り込む。
 人差し指の先で鈴口を嬲る。
 先走りの蜜でそこはぬるぬるする。
「あぁ」
 程よい筋肉の付いた胸が派手にのけ反った。
 美しい眺めだ。
 俺の眼はその扇情的な光景に釘付けだった。
「日向さん、もう……」
 若島津は恥ずかしそうな視線で俺を見上げて来る。もじもじと肩を揺らす。
「もう、……いい加減に…して……」
「なにを」
 意地悪な問いかけに非難の視線が返ってくる。
「放したかと思うと……、また……触ってくる」
 切ない声。かわいらしくて甘くって、俺の欲情を引きずり出す最高の音階。
「けっこう素直だな」
「だって、だって今日は……」
 恋人の綺麗な瞳は涙でうっすらと濡れていた。
 ベッドの中で、こいつは本当にいい顔をする。
 喰らいついて骨までしゃぶりつくしたくなる。
 そんな猥褻な顔を晒しておいて、構うなというほうが無理なのだ。
 俺は若島津の性器を一度きつく揉み上げてから、無造作に放した。
「あ」
 また突き放される。
 そのことに絶望したのだろうか。
 若島津の息が荒かった。
 もういい加減高まり放出したいのだろうが、今日の俺は新たな試みに燃えている。
 いつも俺のほうが急いて前のめりな行為になりがちなのだ。だからたまには若島津のほうから生々しく誘って、乱れて欲しかった。
 だから煽っては引いて、引いては煽って、ということを繰り返していた。
 勃起しているのにイかせない。
 生殺しの愛撫。
「まだイかせねぇよ」
 今度はソフトなタッチで一撫で。愛撫というには優しすぎる感触で若島津を焦らす。
 簡単にはイかせない。
 快楽を引き延ばしてやる。
 お前が切羽詰まって乱れ狂うのを見るまで、自分からいやらしく腰を押し付けて誘ってくるまで、たっぷりと、手酷く優しい愛撫を繰り返してやる。
「あっ……日向さん。いつにも増して、……ん。凄く……しつこくて……。俺、腰が…っ」
「腰がなんだよ」
「………動いちゃう」
 キュッと眼を閉じて白状する。
 なんとも言えない風情に俺の胸は高鳴った。
「動かしてみろよ。見ててやるから」
「やだ」
「足開いて、腰浮かせて、俺を誘ってみろよ」
「誘うなんて……、できないっ」
 つつましやかな言葉を裏切る濡れた声。
 俺は唾を飲み込んだ。
 眼下の身体は小刻みに震えている。
 艶めかしい。
 ここまで出来上がってたら、もうマジックハンドなんて必要ないだろう。
「このままひとりでイけよ」
「そんなの、やだ」
 放っておかれて、一人で勝手にイけだなんて、酷い話だ。
「日向さん……」 
 涙声。これもそそる。
 俺は慈悲ぶかそうな声を出した。
「もう触んねぇよ。見てるだけだ」
「見てるだけ…って、……あっ、ああ……」
 熱くねっとりとした視線が若島津を追い込む。
 俺のマジックアイズが引き金となって、若島津は腰を突っ張らせて性器を前に突き出した。
「あ、ああ、……あああ」
「いい眺めだぜ」
「ああ……見ないで!」
「見せつけてるのはお前だろ」
「……」
 まるで自分の恥ずかしい格好を誇示したいかのように、腰を浮かせて激しく前後させている。
 そして俺を無視して若島津は一人で達した。
「イく、イちゃう………ああああ!」
 若島津のそれは誰も触れていないというのにピクピクと震えて白濁液を滴らせる。
 みっともなさそうにうずくまった身体を抱いて、俺は興奮しきったCENSOREDを身体の奥の小穴に押し付けた。
No.1163 - 2021/10/11(Mon) 00:24:55
キスマーク / なるみ





 風呂上がりの一杯。日向は腰に手をあててコーラを飲んでいる。まだ熱いらしく上半身は裸だ。
「おう、お前も風呂入っちまえよ」
「はい」
 若島津は着替えを持って立ち上がる。
 最近彼は何かにつけて日向と距離を取ろうと努力している。
 どうしても意識してしまうからだ。
 いけない妄想。
 消せない欲情。
 彼は同性の日向が大好きだった。
 でもその気持ちを押しCENSOREDいたのだ。
 いま、目の前の日向のあらわな姿は、彼を苦しめさえする。
 目を逸らしたい。でも逸らしたくない。
「……日向さんの肌はよく陽に焼けてますね。褐色っていうのかな。男らしくてうらやましいです」
 あえて自分から話を振って、こんなの全然大丈夫なのだと思おうとする。
 実際には胸が早鐘を打っていた。
「そうか」
「俺もそういう風になりたいです」
 コンプレックスが言わせた言葉に、日向は目をぎょろっと動かした。
「お前が? お前はそのままでいいぜ」
「でも……」
「そのままでいろよ。俺はお前の白い肌が好きだ」
「好きって……」
 意外な反応に若島津の言葉が詰まる。
 彼の肌は白い。日に焼けても、赤くなった後ですぐ冷めてしまうのだ。
 日向は近寄って来ると彼の腕をきつく掴んだ。
 そして自分のほうへと抱き寄せる。
 尊大な態度。
 しかし似合っていた。
 嫌味な感じもしない。
 当然の行動と言えた。
 若島津はびっくりして固まってしまう。
 なんだ、これは。
 顔が間近過ぎてなんだか怖い。
「白いと目立つだろうな」
『なにが』と聞こうとして、眼前の日向が顔を傾けるのを彼は見た。
 耳下に鼻先が突っ込んできて首筋に妙な感触を覚える。
「やっぱ似合うな」
 悦に入った笑顔を見せ日向は満足の声をあげる。
 視線が意味深だ。
「な、なんですか今の」
 とっさに意味が分からず聞き返すのに、日向は上機嫌のくちぶえを吹いて彼を促す。
「風呂場で見てみろよ」
「……」
「お前の白い肌は卑猥で赤が似合う。俺は好きだぜ」
「な、」
 なんて言いようだ。
 けれど怒ることも出来ない。
 だってこの首筋の感触は……。
 若島津はこの後、洗面所で声にならない悲鳴を上げたのだった。
No.1162 - 2021/09/30(Thu) 22:39:08
二本同時更新 / なるみ
「洗面台」と「ボクサーパンツ」二本同時更新です。
どちらもシモのほうのお話でなんかごめんなさいですが、振り返って見ればうちはいつもこんな風でした。
進歩がないというか。極めてるというか。
楽しんでもらえればと思います。
No.1159 - 2021/08/21(Sat) 00:07:43
ご馳走様です! / S
2本同時更新ありがとうございます!
「洗面台」こういう神経質な若島津、大好きです。そして日向ってきっとこうだよな〜と納得(笑)
どちらも楽しく拝見させていただきました(^^)
No.1160 - 2021/08/21(Sat) 14:40:04
S様 / なるみ
S様こんにちは。書き込みありがとうございます。
なにげに下品な内容かもと思いながらのアップでしたので、好意的な感想に救われました。神経質な若島津には無頓着な日向が似合ってますね。
S様も日向誕頑張ってらして楽しませていただきましたよ。先日はプレッシャーかけちゃってごめんなさい。こちらこそ素敵な萌えをありがとうございました。
これからもお互い無理せずこじけんを楽しんでいきましょう。
No.1161 - 2021/08/22(Sun) 21:41:00
ボクサーパンツ / なるみ




 日向さんはブリーフ派だ。
 履き込みの大きい、プロレスラーのパンツを想像させる形が好みらしい。
 そりゃあでっかい一物を持っているのだから、おさまりがいいほうがいいに決まってる。
 でもちょっと色気がない。
 それで俺は日向さんにパンツをプレゼントすることにしたのだ。
 タイプはボクサータイプ。
 色は黒。
 きっと日向さんの肌の色と同化してワイルドな雰囲気を感じさせてくれるだろう。
 今日は日向さんの誕生日。喜んでくれるだろうか。
「誕生日おめでとうございます。プレゼントです」
「おう、すまねぇな」
 さっそくガサガサと袋を開け中身を手に取り出す。
 顔の前に翳し、しげしげと眺めて日向さんは言った。
「小さいな」
 さすが、自分の性器の大きさに自信のある男。
 でもこの俺がサイズを間違えるはずがないのだ。
 なにしろ俺は日向さんと懇意の仲だから。
 つまり恋人なのだから。
「はいたら伸びますから」
 きっとちょうどいいはずだ。俺は自信を持って進めた。
 日向さんはばばーんと思い切りよく下肢の衣服を脱ぎ捨てる。そして目の前でボクサーパンツをはき込んだ。
 このてらいのなさがかっこいい。
「よく似合ってます」
 にこにこしながら見つめる俺の視線の前で、日向さんはなぜだか困ったような、照れくさそうな顔をした。
「お前さ、着るものをプレゼントに送る男には下心があるって、聞いたことあるか」
「え」
「送ったものを脱がしてことに至ろうって心づもりだってことだ」
 日向さんの股間が眼に見えるほど大きくなっていく。
 まさか。
「お前からそんな熱烈なプレゼントがもらえるなんてな。男冥利に尽きるぜ」
 嬉々として笑顔を見せるのに俺は自分の失敗に気づく。
 まるで自分から欲しがったみたいじゃないか。
 恥ずかしい。
 身の内が熱くなって声も出せなかった。
「『今日は俺がプレゼントです』なんてはっきり誘えばいいものを。ホントまだるっこしいな」
「そんなつもりじゃ」
「いいから、いいから。取り繕わなくてもお前の気持は分かってるぜ」
 ほら、と腰を前に出し股間を誇示する。
 さっきよりも大きい。
 見ている俺の顔は真っ赤だ。
 自問する。はたしてプレゼントに下着を選んだのは無意識だったのだろうか。
 日向さんの衣服を脱がしたい願望?
 あられもない行為をしたいという欲望?
 だっていつもせっかちな日向さんは自分で脱いでしまうし。
 器用な夜のストライカーは俺の衣服もするりと脱がせてしまうのだ。
 かなわない。
「ほら、早くしろよ」
「なにをですか」
「脱がせてくれよ。きつくなってきた」
 脱いだらなにをするかは明白だ。これでは日向の思う通りではないか。
 俺だって日向さんとしたくない訳じゃない。ただ、いつも突然で強引で、気持ちが整ってないままはじまることが多いのだ。
 それに自分から欲望を晒すのは苦手だった。
「日向さん。あくまでプレゼントはパンツであって……」
『俺じゃない』と言いかけた鼻先に軽いキスが触れる。
「誕生日のプレゼントには相手の欲しがってるものを送るもんだろ」
 そう言われて見れば逃げ場はなかった。
「お前が脱がせろよ」
 堂々と権利を行使されて、とうとう俺は跪いて日向さんのパンツに手をかけた。
No.1158 - 2021/08/21(Sat) 00:03:50
洗面台 / なるみ



 
「そんな恰好でなにやってんですか」
 どこか不愉快そうな掠れ声が俺の背後からかかった。
 素肌にガウンを羽織った若島津が洗面所の入口に立って俺を見ている。
「いやちょっと歯磨きを……」
 左の奥歯がちょっと痛むのだ。ずっと気になっていた。昨夜は食事の後すぐにSEXになだれ込んでいたので、暇がなかった。今さら遅いかもしれないが磨いておこうと思ったのだ。
「俺が気になっているのはその格好ですよ。鏡の前でフルチンだなんて余程自信があるんですね。ナルシストですか。それとも俺に見せたいんですか」
「おお、見せてやるぜ。自慢のちんちんをよ」
 笑って言ったが、鏡に映る若島津の不機嫌は変わらない。
「洗面台」
「へ」
「洗面台についてます」
「なにが」
「だからそれが」
 若島津の視線は俺の股間に向かっている。
 洗面台の角についているのは俺のちんちんだった。
「汚いですよ」
「なにおうっ」
「こすりつけてないでください」
 若島津は俺の大事な息子を汚いと言ってるのだ。
 腹が立つ。
「しょうがねえだろ。高さ的にちょうど当たるんだから。第一お前、昨夜は俺のこれでアンアン啼いてたくせによ。汚いとはなんだ」
「すいません。ベッドの上と洗面台の側面じゃ事情が違うんです」
 神経質そうに眉を顰めて若島津は言った。
 洗濯機の横から雑巾を手に取る。
 今にも掃除を始めそうだ。
「細かいこと気にするなよ」
「気になります」
「すぐに風呂入るからさ」
「順番が逆でしょう」
 ああ言えばこう言う。
 俺は頭をひねって切り返した。
「お前さっき言ったよな。ベッドの上と洗面台じゃ事情が違うって」
「言いましたけど」
「ベッドの上での俺のちんちんはお前にとってはどうなんだよ」
「え」
 虚を突かれたように若島津がひるむ。
「どうって」
「ベッドの上じゃ汚くはないんだろ」
「あの、それは……」
 言いよどみ、黒い視線を魅力的に揺らした。
「どうなんだよ」
 鋭い追及にしどろもどろになる。
「た……大切です」
 気恥ずかしそうな顔だ。
「ふん、いいこと言うな。他には?」
 俺は若島津をどんどん追い込んでいく。いつだって、どんな場面だって、強気で図々しいほうが勝ちなのだ。
 俺は顎をくいっと上げて促した。
 若島津は観念して唇を噛む。
 その顔は、昨夜の行為の際に見たものと重なった。
 声を殺そうと閉ざす唇。
 俺は逆にお前の声を聞きたいってのに。
「どうなんだよ」
 尊大な俺の態度に押されて、若島津は吐息のような儚さで白状した。 
「……すごく大事で、愛おしいです」
 誠実で心のこもった答えだった。
 素直にうれしいと感じる。
「そうだよな。昨夜はサービスして咥えてくれたもんな」
 調子に乗り過ぎた。口が滑った。
 若島津は顔色を変えて震えている。
 あんまり赤裸々なのは好きじゃないらしいのだ。
 でも俺はいつも言ってしまう。
 だって事実なんだからさ。
 言い訳を考える短い間に、俊敏に若島津は動いた。
 雑巾で俺のちんちんを包んで上から力を込めて来る。
「痛いぞ!」
 汚れを拭うというよりは鉄槌のような一撃。
 俺は洗面台の前で激しく悶絶した。
No.1156 - 2021/08/20(Fri) 23:03:36
副反応 / なるみ
皆様はお元気でしょうか。こんにちは、陸内なるみです。
私はワクチン接種の二回目の副反応でやられてました。
熱と倦怠感でヘロヘロです。
でも早く打てたのはラッキーだったと思おう。
今は落ち着いてるし。

夏真っ盛りで、夏と言えば夏男、日向の出番だ。
しかーし八月十七日の誕生日の更新は確約出来ません。
私あまり計画性がないらしく、書ける時に書くスタイルでやってます。そのほうが楽なので。
一か月に一二本発表出来ればラッキーという感覚で見守ってやってください。
No.1155 - 2021/08/05(Thu) 22:45:09
我慢できない / なるみ


 若島津は俺の恋人だ。
 かっこよくて、かわいくて、本当によくできた奴だ。
 頭もいい。
 顔もいい。
 性格もいい。
 感度もいい。
 およそパーフェクトと言っていい人間だ。
 そんな奴がサッカーしか能のない俺の恋人になってくれてはや数か月。蜜月は続いている。
「若島津。今夜SEXどうだ?」
 夕飯後の自由時間。はっきりと行為を求める俺の声に若島津は顔を赤くした。
 部屋の外からは消灯前の騒ぎが漏れ聞こえてくる。
「えっと……」
 言いよどむ唇が艶やかで俺は喉を鳴らす。
 もっとさりげなく誘って欲しいといつも若島津は言うのだが、俺はそんなの無視してどうどうと求めている。
 まどろっこしいことはしてられない。
 酷い時は力技だ。
 たまにやり過ぎてへとへとにさせてしまうこともある。
 悪いとは思っているが、光り輝くような素晴らしい恋人を前にしては我慢できないのだ。
「こう、なんて言うか……もっとムードってものを……」
 すでに夫婦のような関係になっているというのに、かわらず恥じらいのようなものを見せるのが、かえって溜まらない。そこも俺の好みだった。
「いいだろ。我慢できねぇよ」
「いつもそんなことばかり言って」
 ちょっと膨れて見せるのもかわいくて俺のエロ心は高鳴る。
 結局のところどんな顔したってどんなことを言ったって、とにかく若島津はかわいいのだ。俺を興奮させるのだ。
 俺はいつだって一直線。欲望の塊と言うなら言え。
 そこで俺はふと思った。
 若島津には、我慢できないほど俺を欲しいと思うことがあるのだろうか。
 まさかすべてが俺の空回りなんてことは……。
 複雑な表情になった俺の顔を不思議そうにのぞき込んで、若島津は言った。
「どうかしたんですか」
「いや、ちょっとな」
「日向さんらしくないですよ。はっきり言ってください」
 真剣な瞳。真っすぐすぎてごまかすことも出来ない。
「俺は毎日お前が欲しいのに、お前は全然欲しくないのかと思ってさ」
「え」
「俺、お前のほうから求められたことないんじゃないか」
 口にしてから絶望した。
 初めての時から今まで、常に俺の欲望ばかりが突っ走って来た気がする。
「俺さ。お前から求められたいんだ」
 寂しさを演出して背中を向ける。
 心配そうな声が俺を呼んだ。
「日向さん」
「ほんとはお前俺のこと好きじゃないんじゃないか。馬鹿みたいに毎日求められてほだされているだけでさ……」
 俺はいじけた振りをして背後の気配を伺った。
 若島津は深刻な沈黙を置いて白状してくれる。
「俺だって日向さんを欲しいに決まってるじゃないですか。でも多分日向さんのほうが欲望に忠実って言うか、正直って言うか、せっかちって言うか……」
 たぶんこの件に至っては俺は我慢強くないのだ。身勝手なのだ。
 俺は落ち込んだ声を作って言う。
「我慢できないほど俺が欲しい時って、今まで一度もなかったのかよ」
 隠せない不安と怒気が若島津を責める。
「日向さん。ない訳ないじゃないですか。俺だって凄く日向さんが欲しいです。愛してるんですから」
 おお、なんてありがたい言葉だ。
 シリアスな場面だというのにウキウキしてきたぞ。
「だったらお前のほうから誘ってくれよ」
「誘うって」
 俺の誘導に素直な若島津は導かれて行く。
「宣言してくれよ。『今日SEXしましょう』って」
 生々しい言いように若島津は固まった。そしてしばらくその場で佇んでいる。
 俺はやり過ぎを悟った。図々しすぎるお願いに引いているのだ。
「いや、若島津。それは、なんだ、その……」
 しどろもどろでごまかそうとする俺の背後から、若島津の手が肩を押さえて来る。
「前向いててください」
「え」
「日向さん。俺、我慢できません。日向さんとSEXしたいです」
 はきはきした活舌の良い声で、とんでもない言葉を発してくれる。
 そんなことを言ってもらえるなんて男冥利に尽きるというものだ。
 そして若島津の腕は俺の背中を抱いてくれる。腕は胸元でしっかりとクロスした。
「若島津」
 どんな顔をしているかを見たくて振り返ろうとするのだが、拘束はびくともしない。
「顔見ないでください」
 恥ずかしがっているのが分かって俺はなんだかうれしくなった。
「今夜しような」
「……はい」
 恥じらうちいさな声。俺の背中を温める若島津の胸のぬくもり。吐息が乱れていて、とてつもなく色っぽい。
 俺はしてやったりと満足して、恋人との熱い抱擁ににやにや笑っていたのだった。
No.1154 - 2021/07/29(Thu) 00:19:55
欠陥 / なるみ




 日向以外の人間と肌を合わせたことがない。
 好きな人とだけ触れ合えるのは幸せなことなのだが、どうしても、男としてどうなのかと思ってしまう時があった。
 男の身で男に抱かれている自分に引け目がある。
 恋しい男の腕の中で女のように扇情的な声を上げてしまう自分を、恥ずかしく思う時があった。
 彼はずっと女性に興味が湧かなかった。
 友人との戯れでグラビア誌などを見せられたりしても、どうこう思ったことがない。
 若島津はそれで悩んでいたのだ。
「俺どっか欠陥があるんじゃないかと思って……」
 暗い雰囲気でため息をついているのを、彼の恋人である日向の鋭い眼が見つめている。
「またなにかややこしいことで落ち込んでるのか」
 若島津は唇を噛んだ。
 自分の嫌なところが出てしまっていると思う。
 意外に察しのいい日向は彼の落ち込みの理由を正確にとらえている。
「お前の論理で言うと俺も欠陥人間か」
「え」
 彼の言った台詞は、男同士で好きあっている彼らが人としてどこか足らないと、そう意味してしまっているのだ。
 そして、日向も自分と同じだと巻き込んでしまっている。
 失礼なことを言ってしまった。そう気づいて若島津は謝ろうと口を開く。
「あの、日向さん。それは……」
 しかしあっさり遮られた。
「俺はお前意外抱きたいなんて思わないぜ」
 お前が好みなんだから仕方ない。そう続けてから日向は眼を細めた。
 品定めするような、欲情を隠しもしない強い眼光。
 彼は恋人のこの目に弱い。
 思えば最初からロックオンされていたのだ。
 逃げられなかった。
 もちろん逃げたい訳でもなかった。
 彼を見つめたまま、日向は言葉を選ぶようにゆっくりと話す。
「俺だって女に興味がなかった訳じゃない。ただ、こいつだと思った人間がいた。そいつが男だった。一番大事な人間が誰か、俺には分ちゃんと分かったんだ」
 日向は手を伸ばし彼の頬に堂々と触れてくる。
 若島津は身動き出来なくなった。
「そいつ以外を抱きたいなんて思わない。俺はお前が好きだ」
 瞳を煌めかせて日向は言う。
 なんのためらいもない熱い告白。
 日向はいつもまっすぐだ。
「日向さん」
「そりゃあ、細かいところは違う。同じ男でも俺はお前に無茶を強いているからな」
 それは、彼が男の身で抱かれる側を担っていることを指している。
「俺に自分を譲ってくれたお前は、懐が深くてよっぽど男らしいと思うぜ」
 囁いた唇が彼の唇を掠め取った。
「感謝してる」
 そしてもう一度キス。それは濃厚さを帯びる。
 若島津は頬を染めたまま日向の舌技に翻弄された。
「お前は、いろいろ不満で不安な時があるんだろうが、俺はそれを許さない。落ち込むな。堂々としていろ。お前は強くて立派なひとりの男だ」
 励まし支える言葉に若島津は感謝の涙を零す。
 恋人の唇がその真珠の涙を吸い取った。
「それからな。お前俺を愛してるんだろ。お前は俺のためになら無理をしろよ」
 そこでニヤリと笑って見せる。
 若島津は日向の言う意味を悟った。
 日向は、自分が我儘で強引だからそのせいで受け攻めのポジションが決定されたのだと、同義づけているのだ。
 彼が雄を受け入れる立場なのは日向が強いたことなのだ。
 悪いのは自分だと日向本人が言っている。
 若島津にはなんの非もないことを示してくれる。
 シンプルなようで複雑な思考回路が若島津の心を救う。
「日向さん……」
「お前はずっと俺のものでいろよ。他の人間なんてその眼に映そうものなら許さないぞ」
 日向は彼の為に、嫉妬深い夫の役目を甘んじて演じてくれているのだ。
 さらに強欲な唇が彼のそれをふさいでくる。
 彼は蕩ける。
 日向の手が彼のジャージをたくし上げて素肌に触れてきた。
 抵抗出来ない。
 否、抵抗なんかしなくていい。
 日向に求められる幸せを嚙みしめていよう。
 唇だけでなく心も身体も極限までむさぼられ、若島津は満ち足りた幸せを感じていた。
No.1153 - 2021/07/19(Mon) 00:38:53
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