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【掲示板】短編小説【趣味】

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短編小説 / GIL
* グレート・ジャイアント * 武井信夫/土屋水子 共作

−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文化大臣賞受賞作品−

「 怪物が見つからないな 」
と、バコス公国第8戦闘指揮官ソルが言った。

部下「 畑を荒らした跡がみられます 」

ソル「 ふむ。大量の野菜を持って行ったか。国からの命令なのだ。何としても倒して息の根を止めなければならない 」

そのとき、下着姿の黒い髪の女が首をもたげて手縄を両手首につけられて兵士に一列に行列されて歩かされていた。

兵士「 敵国の貴族の女、バシュと申しております 」

ソル「 バシュ、野菜を食う怪物はお前の国に生存すると聞いた 」

バシュ「 はぐれたのでしょう。自由気ままに暮らして害はない生き物です。私たちの国ではごはんをあげて畑を荒らさぬようにしつけております 」

ソル「 兵器としては使えぬのか 」

バシュ「 そのような性格の生き物ではないのです。私の友達として一匹いましたが、今はどこかへ消えてしまいました 」

ソル「 お前を我がバコスへ運び尋問する。それなりの覚悟をしておけ。少々手荒なこともせねば白状しないこともあるだろう 」

バシュは立ったままうつむいて絶望に身を震わせた。

ソル「 森を抜ける。皆、気をつけて行進しろ 」

バシュは素足で歩かされ、それはこれから始まるであろう拷問の一環と言えた。

しばらく森を一行が進むと、巨大な樹木の影で身の丈4メートルの赤い巨人がこちらをうかがっていた。

ソル「 見つけた! 」

その巨人には顔に大きな傷跡が右上から左下に走ってあった。右目は潰れていた。

バシュ「 あっ! 」

一行は一斉に矢を放つ。
巨人はぐわんと跳躍して縛られたバシュのもとへ飛んだ。
そしてバシュを大きな両手で掴み、剣と槍を持った兵士たちを散らしてバシュを持って逃げた。

バシュ「 お前はチロ! 」
ソル「 怪物を殺せ!女は捕らえろ! 」

****************************

どこかの崖の裏まで逃げたチロとバシュ。
チロはバシュを自分のあぐらの上に載せていた。

バシュ「 20年ぶりくらいね、チロ…、お前たちは長生きだから 」

静かにチロがバシュに指先で顔や頭をくりくりする。

バシュ「 私が10才のときもこうして遊んだわね 」
バシュ「 傷も随分増えて…、何で私たちの所から居なくなったのかしら。お前たちは自由で好きな所へ行くわね。でも、こんな所に迷い込んではいけないわ 」
バシュ「 ふたりでどうにか私の国に帰れないかしら 」
バシュ「 私の国の船団が全滅して海を渡らなければ 」

チロとバシュはバシュ用のイカダをつくり始めた。
木をチロが集めて運び、バシュはしっかりと木のつるで縛り付けてゆく。
やがて四角いイカダができた。
帆をつくりたかったが、その暇はなかった。

とうとうソルたちに見つけられたのである。
矢をチロに打ち込みぶすぶす刺さった。

チロは海までイカダを担いで走って運ぶ。
左手にイカダ、右手にバシュを胸に抱いていた。

槍で武装した兵士が追いかけてきて、その後ろから矢がチロに飛んでくる。

下に海の見える崖まで来て矢ぶすまを受けているチロはバシュとイカダを海に投げた。

海へ落ちたバシュは上で槍に刺されているチロの姿を見てとった。
ソル「 女が逃げるぞ!ここはお前たちに任せる。半分ほど崖下へ回れ! 」

動いたソルたち一行にチロは跳躍して壁になった。

バシュは一部始終を見ていた。
チロは命を捨ててでも私を逃がすつもりだと解った。


月明かりの遠い海にイカダにつかまったバシュは流され、そのうち見えなくなった。

* グレート・ジャイアント (完) *

No.32 - 2026/03/08(Sun) 22:08:33
短編小説 / GIL
* マカロニ物語 * 武井信夫 作

−西暦2026年1月20日(火) 文化厚労賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 喜劇部門大賞受賞作品−

厚田 昇「 おい!またマカロニグラタンかよ! 」
厚田 順子「 おいしーわよ? 」

ノボル「 俺は働いてるんだ。いい加減にしろ!大体、なんでゴロゴロ人参ばかり入れるんだ? 」
ジュン「 だって、体にいいもの。 会社に遅刻しちゃうわよ。 早く食べて行ってらっしゃい 」

ノボル「 もう食った。弁当! 」
ジュン「 ハイ 」

ノボルは営業の平社員であった。真夏なので実に暑い。

ノボルは自分の勤める会社である、日の丸石鹸に外回りから戻ってきて書類を整理し、
パソコンや紙を使って書き込んでいく。

午後2時。

「腹が減った。弁当があるな」
マカロニがぎっしり詰まっている弁当だった。粉チーズがふりかけてある。

中田部長「 何だね。なんで君は弁当にマカロニを入れてくるのだ 」

ノボル「 いや、ウチの女房がね。これが得意で 」

中田「 わしのように普通の弁当を持ってこれんのかね。
あと、マカロニより蕎麦のほうが美味いよ。一体、どういうカミさんなんだね 」

ノボルは腹が立った。ジュンのドレスアップした写真を見せた。

中田「 むう、なんだね、この 」

ノボル「 ジュンです。俺の女房 」

中田「 なぜわしにこれを見せた? 」

ノボル「 馬鹿にするからです。俺たちふたりを。大体、人の弁当を馬鹿にしないでもらいたい。つくってる女の顔まで想像できるのですか 」

中田「 キミは…あれだな…今度係長にと考えていたのだが 」

ノボル「 何ですか 」

中田「 ちょっとな、別の人にしようか 」

ノボルは部長の背広の胸ぐらを両手でつかんだ。

中田「 何をする! 」

ノボル「 俺は人一倍仕事をしてるんだ。平の成績トップだ! 」

中田「 クビだ! 」

ノボル「 出て行ってやるとも 」

ノボルは家に戻りジュンに相談した。

ジュンが中田部長へ電話をかける。

「 じゃあ、私手製のマカロニ料理を食べてもらって不味かったらクビにしてもらって、美味しかったら取り消しでいいわね! 」

部長「 ああ、俺は蕎麦好きだが自信があるなら持ってきてもらおうか。( この声の先があの写真の女か ) 」

ジュンはチーズマカロニをつくり、固まってくっつかないように油をまぶして塩を少しふった。
そして高級瓶タバスコをノボルに持たせた。

ノボルが お昼に、皆の注目の的になっている前で、でかいアルミ製の弁当箱を部長に差し出した。

ノボル「 どうぞ 」

部長「 むう…、俺は蕎麦好きだが、この匂いはなかなか…、イヤ、まずそうだ! 」

ノボル「 フォークです。あとタバスコ 」

ノボルも自分のを食べ始めた。

部長「 うむ。塩が効いてチーズの良い香り…、( 認めるワケにはいかない。こいつのヨメは美人で…、俺のヨメはブスだ。絶対にクビだ。なんたって俺の胸ぐらをつかんだのだからな! ) 」

ノボル「 うまい! なんてうまさだ。信じられない。みんな食べてみろよ 」

女子社員たちがハシで取り分けてたべる。

「 このタバスコ、高級ね 」

ノボル「 ああ、ワザワザ取り寄せてるんだ 」

「 ノボル君がいつも奥さんのマカロニ弁当なのも…、うなずける。でもマカロニばかりねぇ。ご飯ないの? 」

ノボル「 マカロニがうますぎて米なんか食べる気しないね! 」

部長「 そ…、そうだな。確かに悪くはない!しかし俺は蕎麦好きだ。蕎麦のうまさに勝てるわけない! 」

女子社員たち「 あら、おいしいわよねえ。人の奥さんのお弁当を認めないなんて 」

部長の眉間に青筋が浮かび上がってきた。

部長「 これは不味い!不味いのだ!冷えたマカロニ弁当がうまいわけない!こいつの女房は美人だ!認めん! 」
女子社員「 アラ 」
部長「 だいたい、穴にチーズを詰める!!これは馬鹿の発想だ!!詰めりゃうまい!?蕎麦を知ってるだろう!!蕎麦の中になにか詰め込むか!?不味いだろう!! 」

女子社員「 蕎麦団子にチーズ詰めたら不味いわ。きっと 」

女子社員「 そう考えると蕎麦っておいしい食べ物かしら。うどんのほうがバリエーションが多くて 」

部長が口からタバスコマカロニを吹いた。机が汚れた。

「 何を言うか!俺は蕎麦畑を所有している!脱サラして蕎麦屋になるのが夢なのだ! 」

女子社員「 お店のお蕎麦って少しでものびると不味いのよねぇ。みどりのたぬきで十分って感じ 」

部長の顔が真っ赤になりスジだらけになった。

部長「 俺の夢を馬鹿にするのか! 」

ノボルの持ってきたマカロニ弁当の上を机ごと飛び越え、弁当が足に引っかかってバラバラに飛び散った。

部長は女子社員に掴みかかった。

「 俺の女房はブスだ!せめてお前くらい綺麗なら許せる!ブスと蕎麦屋をやるのが俺の夢! 」

女子社員たち「 やめなさいよ、部長!これじゃノボル君と一緒にクビね。社長にみんなで言いつけるわ 」

部長「 待て!まだカネを稼がなくちゃならん!あと十年…節約に節約を重ねて蕎麦屋に… 」

女子社員たち「 じゃあ、ノボル君のクビ、やめてあげる? 認めなさいよ、その散らばったマカロニ弁当が美味しいことを 」

部長「 仕方ない!そうだな。蕎麦屋の夢には代えられん! 」

女子社員達がこそこそ話す「 ”美人の奥さんがつくったマカロニ弁当”は言っちゃだめよ。この中田部長、そこにこだわっているわ。奥さんで負け、蕎麦がマカロニに負けじゃあ、妬み骨髄よ 」

中田部長が席に着いた。
「 オホン!マカロニ弁当美味しかったぞ!クビはとりやめる! 」

女子社員「 ノボル君の係長の件も 」

中田部長「 そうだな!成績トップ。考えておこう! 」

ノボルはどっと疲れが出た「 ホ――… 」(「俺もアパートの家賃。将来は家のローン」)

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ノボル「 ただいまー 」
ジュン「 おかえりー 」

ノボル「 マカロニ弁当美味いと言わせてきた。無罪放免だ!危なかった。中田部長、馬鹿でな 」
ジュン「 やったーー! 」

エプロンを付けたジュンが ノボル にフライ返し持ったまま抱きつく。

一部始終をノボルはジュンに話した。

ジュンが強気になって「 これからはパスタでいくわ。バリエーションが上がるわ 」

ノボル「 バカ! 今度はパスタか! 弁当箱にパスタ入れて行くわけか俺は。 お前、何で1種類しか料理しないんだ 」

ジュン「 文句ある? 」

ノボル「 イエ、ありません 」

そうしてノボルは常に1種類の料理を食べて馬車ぐるまのように働いていくのだった。

* マカロニ物語 完 *

No.31 - 2026/03/08(Sun) 22:02:42
短編小説 / GIL
* 宇宙船ハルカ * 武井信夫 作

−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文化大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部文学賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部大臣賞受賞作品−

杉本 学(マナブ) と 花村 りん 宇宙航海士 は 4つ目の銀河を調査していた。

この頃の人間の体ーー特にこの職に就いた者は長大な寿命が生物細胞科学により与えられ、体力・気力とも萎えず、一定の強弱を持つ体になっていた。

宇宙探査船ハルカには2人の航海士が搭乗し、すでに船内時計1億年以上を旅してきた。

記憶は調整され、ふたりの信頼関係で成り立っていた。

反物質反重力エンジンを備えるハルカ。
そこを起点エネルギーとして超物質粒子砲2基、超空間バリヤーを持ち、空間をずらすことで宇宙空間を進んでいた。

大きさは長さ2.6キロメートルの小型船であるが、その性能は信じがたい高さと品質であった。

ふたりの男女の超エリートにふさわしい船と言えた。

コンフードと呼ばれる物質から機械で食べ物をカタログから生成し、水も再利用し、今日はビーフステーキとライスをこのふたりは食べた。

ふたりはそろそろ旅に終止符を打とうと思っていた。地球人類の文明も終わっているだろう。

4つ目の銀河「 ハナモクセイ 」ーー
乱れた形の銀河で、超巨大ブラックホールを観測し、そこで二人の結婚式とお葬式を行おうと決めた。

花村 りん隊員は大きな花飾りネックレスを用意し、側に置いた。

マナブ「 ハナモクセイ・ブラックホール503へ直進経路設定。後は眠っていてもいいわけだ 」

りん「 ハナモクセイは綺麗な銀河ね 」

ハルカコンピューター「 オフタリサン。コレデサヨナラデス 」

マナブ「 ハルカ。今までありがとうな 」
りん「 結婚式の音楽を流して ハルちゃん 」
ハルカコンピューター「 ハイ 」

教会で流れるような曲が静かに流れ始めた。

りん は花飾りネックレスを首から下げ、マナブと抱き合い、深くキスをした。

その後、スリープシステムで二人は眠りについた。
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急に緊急の警報が流れ、マナブ と りん は 眠りから覚まされた。

ハルカコンピューター「 オフタリサン。オフタリサン。異星人を発見しました 」

マナブ「 初めてのことだ! 」
りん「 異星人なら、友好的だといいけれど 」

前方の船外窓には星に囲まれていっぱいになって見える。
マナブ と りん には 美しく見え、感動した。

ハルカコンピューター「 ブラックホール503引力圏にはもう引っ張られてイマス 」

ハルカコンピューターは可愛い顔文字を大パネルへ表示し、大パネルを上下2分割して下に異星人の船団を遠視投影した。

巨大な細長い船が3隻。

ハルカコンピューター「 交信をココロミますか? 」
マナブ「 やってくれ 」

ハルカコンピューターがしばらく計測し、駆け引きを試みた。

ハルカコンピューター
「 
オフタリサン。
キケンです。
攻撃型異星人と判明シマシタ。
ツカマッテ、生体実験の可能性。
コチラを見ツケラレマシタ。
追ってクルヨウデス。
ヤツラのアタマ、思考、ワケがワカリマセン
 」

マナブ「 使ってみるか 超物質粒子砲を 」
ハルカコンピューター「 リョウカイ 」

物凄い光が左右を輝かせメイン・ウインドウが真っ白になった。
球形の光が二つ、先頭の戦艦めがけて曲線を描いて飛び去った。

ハルカパネルに映し出された遠視映像に先頭の大戦艦が真っ二つに折れ砕け散った。

マナブ「 先制だ。戦いは避けられないよ、りん。少しでも敵の戦力をそがなければいけないんだ 」

りん「 捕まるくらいなら、安楽死という手もあるけれど 」

マナブ「 戦うさ。その選択は最後の手段だ 」
マナブ「 相手の武装は? ハルカ 」

ハルカ「 未知の武装ですが、我々より下のものです 」

ハルカ「 猛スピードで、ミサイルがコチラへ飛来してイマス 」
マナブ「 オートメーションで超物質粒子砲を 」

ハルカ「 OK 」

連続発射される超物質粒子砲の光球の圧景は物凄いものであった。
戦争という言葉がふさわしい。

ところどころで火花が散るように爆発の光がキラキラと閃く。

マナブ「 ブラックホール503へ進め、ハルカ。勝負だ! 」
りん「 追いかけてくる。相当頭にきているわ。一応 安楽死製剤と注射のボックスを用意して持ってくる 」

宇宙探探査船ハルカはブラックホールへ全力で進んだ。
”暗黒宇宙種族”と名付けた連中に、逃げながら、後方へ向かって光球を打ち続ける。150年ほど過ぎ、ブラックホールの重力が増してきた。

りん「 限界よ。マナブ。このままだとブラックホールから逃げられない 」

マナブ「 奴ら 2隻 ミサイルが尽きないな。 よし、ブラックホールの外縁を進む 」

宇宙探査船ハルカは方向転換し、ブラックホールの重力の外縁を海を進む船のように進みながら、宇宙探査船ハルカと暗黒宇宙種族の大戦艦2隻は一列になって進む。

マナブ「 すこし、ブラックホール503に近づいてやる 」

宇宙探査船ハルカは角度を変え、だんだんとブラックホール503に距離を縮めていった。

りん「 怖い… 」

それから何十年も過ぎ、暗黒宇宙種族の大戦艦が角度をずれ始めていった。
ブラックホール503中心方向へと吸い込まれ、逃げられなくなったのである。

マナブ「 よし!脱出!ハルカ! 」

グ・グ・グ・と宇宙探査船ハルカはブラックホール503外縁方向へと距離を開いていった。

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マナブは花でできたネックレスをつくっていた。

マナブ「 りん。これを 」
りん「 うれしい 」
 
ふたりは宇宙探査船ハルカの先端の大きなウインドウの星空を眺めながら肩を抱き合い、次の銀河を目指した。

* 宇宙船ハルカ 完 *
No.30 - 2026/03/08(Sun) 21:56:58
短編小説 / GIL
* 彩と鬼田君(1) * 武井信夫 作

−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品−
−西暦2026年1月9日(金) 文化大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部文学賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 旭日殊勲賞受賞作品−

「 彩、給食は残さず食べなさい 」

中学二年、十三歳の中井彩は母親に背中からそう言われ、
自宅である団地の四階から学校へと向かう。

彩は納豆が苦手だったが今日の給食の納豆は食べようと
決心する。

学校の生徒たちがだんだんと増えて合流してくる。
彩は嫌だなと思う。ひとりきりならいい、と思った。

彩は人の心が読めた。
若松という同じクラスの男子が後ろから近付いてきたのがわかる。

若松の心を読んでみた。
彩の体を見て欲情していた。

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彩は175センチの長身と完璧な美貌を備えていた。
髪は腰のあたりまでさげ、黒髪だった。
体は薄い。セーラー服の胸のふくらみは可愛らしく、清潔感に溢れている。

髪の長さが なぜ教育指導に引っかからないのだろうかと思う人間もいた。

若松の情欲が強すぎたので心を操作する。
若松はよくわからなくなって彩の思うとおりに歩き、通り過ぎて彩の前方を歩き去っていく。

彩は母からこの技を教わった。

父は普通の人だったが、理解があり、優しいだけの人だった

校門まで来た彩は男の監視教師をループ操作し風貌を胡麻化す。
彩だけの髪の長さについて心を触れさせないのである。

彩は自分がエスパーの中でも相当な手練れで強力であり、自分に敵う存在などいないと信じていた。

いつも通り教師をループ操作して術にかけながら教室へとむかう。

最近、気になる男の子がいる。

同じクラスにエスパーらしき存在を見つけたのである。
その男の子は彩の席の右ななめ前方に座っている。
そのまま前は黒板である。

不思議な男の子であった。
目が白く輝き、心地の良いサイキカルな波動を感じた。
だが、その男の子は自分自身の力について全く気が付いていないのである。

彩は、これはもしかするとサイコキネシス( 念動力 )なのではと期待する一方で、自分より強いのではないか、不安や好奇心が入り混じった気持ちになった。

もしかしたらそういう体質なだけで超能力などないのかもしれない…。
でも、こんな人が何もないわけがない。

彩は研究を続けた。
記憶を探る。
家庭環境は普通であり、その男の子の両親に何かある様子はなかった。

そして彩はその男の子の優しい心に深く触れるうちに恋をした。
精神感応がもたらすその恋の強さは究極とも言えた。

彩たちの席六人で長方形に机を並べ給食を食べる。
食べ終わったらジャンケンで食器の片付けの人を決める。

彩はそのジャンケンで負けたことがない。
恋をした男の子は鬼田哲郎と言って、普通にジャンケンで負けることもあったので、彩と哲郎以外はチョキが出せないように心理誘導して哲郎にはパーを出させて勝たせた。

そうしているうちに哲郎はパーを出せば最後まで勝てることに気が付き、食器を片づけたりしなくなった。

席替えの時期がやってきた。
彩は教師を操作して哲郎を隣の席にする。

そして研究の成果を出す時がやってきた。もし哲郎の力がサイコキネシスならばと狙いをつけたのである。
「 哲郎君。意識を窓の外へ向けて集中してくれない? 」
「 集中って? 」
「 うんと念じるの。そう、それでいいわ 」
彩は哲郎と精神感応した状態で二階にある教室から節のある蛇のようなイメージの力を地面へと集中して誘導してぶつけた。

真っ白な稲妻が地面へとぶつかり、音はせずに教室が雷の落ちた時のような暗転をした。
授業中の教室の教師と生徒、学校中がざわめいたのを彩は感じ取った。

******************************

哲郎は日曜日に家にいた。
彩とは割と距離の離れた団地の2階である。

勉強が手につかずに自分の4畳半の部屋でテレビゲームで遊んでいる。
母親と父親も居間でテレビゲームをしている。

哲郎は頭が痛くなってくる。
びっくりして居間へ行き、痙攣しながら気を失う。

******************************

哲郎は目が覚めると白っぽい部屋で頭に何かつけられていた。

手で触るとベチャベチャと粘土のようなものでつけられたコードが伸びていた。
コードは機械に取り付けられていて、気味が悪かった。

母と父が離れたところにいて、医者二人が機械をみている。

親の話によると体に異常がなく村木病院という国立ではない個人の大型精神病院の脳神経内科に運ばれたそうだ。

今後しばらく学校を早引けして帰りに毎日通うようにと指示が親に出た。

通うたびに、医者から薬を飲まされたり注射を打たれたりして気が遠くなったり覚めたりで哲郎には訳が分からない。

哲郎は自分の眼が白く光り輝くのを人から言われて知っていたし、何かそれが消されるのではないかと不安だった。

脳波が異常だとか、眼はいつから白く光るのかとかしつこく聞かれて困ってしまった。

青木という医師長は哲郎のことに対して執着していた。

哲郎が超能力者ではないのかと興味を持ち、毎日通うようにと重度の病気の疑いを哲郎に言い聞かせ脅かして毎日通わせ続けた。

*************************

彩は今日、哲郎に社会の教科書を持ってこさせるのを忘れさせた。

哲郎は彩に対し勇気を出して教科書を見せてくれと言った。

哲郎は机を寄せてくっつける。

彩は白い陶器のような手でゆっくりと自分の教科書を哲郎に半分差し出す。

開かれた厚い教科書が重みで閉じそうになったのを哲郎が右手で防いで広げる。

手をどけるとまた閉じてしまうので哲郎はそのまま手を置き続けた。

すると、彩が哲郎の右手の上に左の手のひらをのせた。

少し硬い陶器の感触であった。

そして彩が力を込めてぎゅっぎゅっと押してきた。
精神感応のできる彩にしてみればセックス以上の愛情表現である。

オナニーをして射精することをおぼえたばかりの哲郎であるが、それ以上の幸福感だった。
緊張と幸福感と恥じらいの感覚に襲われて哲郎は痺れて動けなくなった。

彩のほうに顔を向けられずに教科書の文字だけ目で追い続けた。
なにしろ中井彩は鬼田哲郎にとって高嶺の花である。

なぜか静寂な教室であった。

次の日もまた次の日もやはり何かしらの教科書を持ってくるのを忘れてしまうのである。

そのたびにこれを繰り返し、恋愛に鈍い哲郎でもまさかと思いはじめ、一体どういう意味なのであろうと、彩の顔を哲郎は見た。

彩は上機嫌であり笑顔であった。
茶色い陶器のような目を確認してから更に緊張して顔をそらした。
彩は( なんで何も言わないの? )とは思ったが、哲郎との仲は絶対に維持しようと決心していたのだ。
哲郎のサイコキネシスを最大限に引き出すのには二人の恋愛感情が大事だからだ。
不仲では精神感応などしたくない。

彩は給食を残さない。
自分より背の低い哲郎にそれを見せて感化させるなどの面倒見ぶりだ。

哲郎に変化が生じた。
彩はすでに知っていたことだが、哲郎は学校を早引けして精神病院へ通っていたのである。

彩は医学にはまだ疎く、傍観し見過ごしていたのだが、やっと決心した。
「 鬼田君、病院通ってるんだって?昨日も早引きしたでしょう。今日も行くの? 」

哲郎「 うん 」

************************

夕方、西日の差しているなか、中井彩はタクシーに乗っていた。

私立病院にしてはずいぶん大きい建物が見えてきて大勢の入院患者を収容できそうなものだった。

タクシーを降り、午後は休診なのか彩ひとりだけであった。

強い西日の差す中、背中から光を受けて彩はゆっくりと歩いて受付に向かう。

両手を前に下げて行儀よく鞄を持つ光景は非常に情緒的な光と影のコントラストで際立った。

彩は眼鏡をかけた受付の中年の女性に声をかけた。

彩「 鬼田君のクラスメートです 」

中年女性「 鬼田君の? どうかしましたか 」

彩「 あなたたち鬼田哲郎君になにをしてるの? 」

のぞき込んだ長身の彩の顔を西日が薄暗くしていて、彩は不敵な表情をしていた。相まってやや壮絶だ。

中年女性「 ……、 あなたのお名前は? 」

「 中井 彩 」

明るく快活に不敵な表情ではっきりとした大きい声でそう名乗ると、受付の横の診察室の鉄製のドアが開いて二名の男の看護師が出てきた。

受付の中年女性まで出てきて三人で彩を取り囲む。

三人「 帰りなさい 」

***************************

意識操作で中年女を受付に戻らせた彩は、男性看護師二人を同じく意識操作で縦に並ばせ一番後ろに立ち、三人で歩いた。

道案内をさせるのである。

途中必要がないので男性看護師を一人外して入り組んだ複雑な迷路を進んでいく。

そのうち脳神経内科の文字と道標のラインに踏み当たった。

ほかの看護師に棒立ちになるようにループ操作をかけながら歩く。

彩は行儀よく鞄を両手で前に下げ歩き進んだ。

前を歩かせていた男性看護師が重い鉄扉を開いた。

鬼田哲郎がいた。ベッドに寝かされている。

頭には半球形の形をしたヘルメット状の被り物がかぶせられている。

その半球形からはハーネスが取り付けられていて、機械装置に伸びて取り付けられている。

傍には水の入った大きなコップと封の切られた薬の袋がいくつか散らばっている。

そして女性看護師が鬼田哲郎の左腕に注射をしようとしている。

奥にはカルテを持った、眼鏡をかけたしもぶくれで白い顔の医者が入口に立った彩を見ている。

彩は強い声で
「 何をしてるんですか? 」
と、室内に向かって言った。

しもぶくれの医者が驚いた様子で
「 君は? 」
彩の道案内と鉄扉の開錠とドアを開いて抑えているホテルマンのごとき男の看護師に腕を伸ばして指を差し、
「 なぜ部外者を通した!? 」と怒鳴った。

ホテルマンのドアボーイの意識が戻り始めた。まだ呆けた顔だ。
「 ……、え? 」
顔をしもぶくれに向けてぶつりと言う。

彩が鞄を床に落とし、哲郎に駆け寄り、半球形を両手で持ち上げて取り払った。

しもぶくれが言う。
「 こ…、この子は風邪気味で 」

彩はこの青木という医師長の頭の中に風邪薬などないと読み取った。
毒だらけだ。デポ剤まである。

「 風邪じゃあないわね。その薬 」
彩は両膝を床につき哲郎の頭を両手と胸で抱えてかばいながら言う。
「 目を覚まして鬼田君 」
彩は哲郎に気付けの力を送る。
彩の胸の中で目を覚ました哲郎。
哲郎は彩の背中に回りしがみついてかばわれながら意識を回復しだし、自力で立てるようになるのを待った。

彩「 今お前を死なせてもいいけど、今度やったら絶対に死なすから 」
青木に指をさして彩が言った。

「 帰りましょ 」
歩けるようになった哲郎を彩は確認し、青ざめた顔のしもぶくれを残して病院を後にした。
外はすっかり暗くなっていた。天気は良い。

村木病院そばに大型スーパーマーケットがある。
出入り口に人がたむろして店内からのLEDライトの光がその人たちを明暗に彩る。
乗用車や貨物トラックのライトが通り過ぎていく。

「晩御飯何か食べよう。おごるわ」
二人は大型スーパーマーケットへと向かう。

哲郎はメロンパンとオレンジジュース、
彩はアップルパイと牛乳を選び一つの買い物かごに放り込みレジでよれよれの千円札を出した。

駐車場になっている屋上へ二人は階段で登った。

大型スーパーマーケットの看板を照らし出す大型ライトを横にして、フェンス近くのアスファルトに二人は横に並んで座り込み食事をした。

二人は晴れた夜空を一緒に見上げ、大型旅客機が通り過ぎるのを見た。

* 彩と鬼田君(1) 終 *

No.29 - 2026/03/08(Sun) 21:50:17
短編小説 / GIL
* 彩と鬼田君(2) * 武井信夫 作

−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品−     
−西暦2026年1月9日(金) 文化大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部文学賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 旭日殊勲賞受賞作品−
              
背広の男たちが教室に入ってきた。
校長と一緒に入ってくる。

背広の男たちは彩と鬼田を取り囲んだ。
「 今日、お二人に話したいことがあります。今からご同行よろしいですか? 」

校長は青ざめている。
「 そうですね、この子たちは、ハイ 」

彩「 私たち?なんで? 」
彩は男たちの思考を読み取った。が、読み取りにくい。
彩はあせった。< 何らかの訓練を受けている! >
彩「 行きません!! 」

「 いえ、あなたたちに選択権はないので…。国からの要請です 」
ギョロ目が眼を彩と鬼田に動かしながら言った。 

彩が強く念じた。意識操作を仕掛ける――
ギョロ目の眼がピクリと動いた。
が、上手く効かない。

彩はあせった。鬼田のサイコキネシスを頼った。

寄り集まってくる背広男たちの動きが止まり、後ろへ背中から吹き飛んだ。
頭を打ち、割れて脳しょうがバケツでまいたように飛び散った。

************************

彩は早く鬼田哲郎を訓練しなければと思った。

暴発は困る。

少しずつ解除するやり方にしてみることにした。
こんな連中に目をつけられている――
一刻も早く!

もうこの前の様な精神病院騒ぎは御免だ――
どうして平和に暮らしている私たちのことが…、と思うが、ふと。

< 青木 >

そう思い当たった。
あのしもぶくれの医者だ。
あそこから、何か得体の知れない機関に漏れたのだ、と思い当たった。

鬼田が自力で力を使えるようにトレーニングすることもしなければ。
10円玉が動かせれば後は簡単。
コントロールを上手にしていって――

それから常に二人で行動をすることにした。
彩の家に鬼田を連れてきた。
鬼田を自分の自宅にいさせてはまずい。
あの親は理解がない――
そう知っていた。

彩は鬼田に電話をかけさせる。
  「 友達の所にしばらくいるから 」
  「 だれの? 」
  「 クラスメートの家だよ 」
  しつこい親にしぶしぶ名前を教えた。
  「 中井さんて女の子の家だよ 」

*************************

夜、鬼田と彩は一緒の部屋で10円玉を動かすトレーニングをした。
鬼田にイメージを教える。
「 ずらすの。少しずつ 」

やっと動いた。
10円玉が、机の真ん中から机のはじまでずるずると動き、床に落ちた。

「 やった! 」
彩は声をあげた。

「 なるほど。この前の光も、あの大人の男たちも僕なの?彩ちゃんなの? 」
「 両方なの。あれは。今はあなただけで動かしたのよ 」
「 鬼田君、あの教室の光の時、初めて力を使ったからかな。
 病院なんかへ運ばれたの。私の家にいれば大丈夫。もし、なにかあっても。
 私たち、危ないかもしれないの。私ね、人の記憶を読んだり、コントロールできる。
 でもね、あの人たちには中々通用しなかった…。
 怖いの。初めてよ、あんなの。
 鬼田君の力ね、凄いの。
 サイコキネシスなのよ、あなたの力。
 それを私がコントロールしてたのね 」

彩による鬼田のトレーニングの日々。
ついに彩が自信を持つ。

鬼田自身がテーブルや椅子を持ち上げて自由自在に動かし始めたのだ。
鬼田「 やった! 」

彩「 そうね。でも、なんだか建物が揺れているわ 」
彩は恐ろしくなった。彩の団地自体も揺れているのである。

彩「 鬼田君、ごめん。私がね、あなたの力を縛る。縛れるの私。それは私たち二人で使わないといけないわ 」

彩「 あとね、もう時間がない。ここを出るのよ。なんだか うじゃうじゃとね 変な人たちに 包囲されているの。お金はママにうんともらった。私のうちね、外部から電話も何も繋がらないようにされているの 」

そのとき、玄関のチャイムが鳴った。しばらくするとドアを叩き始めた。さらには 鍵を開け始めた!

「 ママ!私たち逃げるわ! 」
ママは意識を殺しながら紙にメモで書いた。【ママは普通の人ということにしておきます】
そしてそれをライターで火をつけて灰皿で燃やした。

中学生の逃避行が始まった。

玄関に来た背広の大男3人を彩が鬼田の力を使い弾き飛ばしながら逃げる。タクシーもなかなか捕まらない。

やっと一台安全な運転手を彩が心を読み取り見つけた。
「 どうしたんだね!? 」

彩「 うんと遠くへ行ってください!関西のほうに! 」
運転手「 後をつけられているけれど…、厄介ごとは俺は… 」と運転手が言った。

そこで彩の意識のループ操作が運転手を操作開始した。

鬼田「 彩ちゃん 」
彩「 こうやって、移動しながら考える 」

いっかな、大包囲は解けない。( 一体どんな規模の… )
3時間走った。

海沿いに差し掛かっているとき建物が少なくなってきた。
そこで急に車が増えて前後片側を大量の車に囲まれた。

車を止める運転手。

ばらばらと凄い勢いで武装した大男たちと赤いミニスカートのタイトドレスの美女一人が止めた車の群れから降りてきてマシンガンと遠くからスコープライフルを構えて、ライトで鬼田と彩を照らした。

彩はまだ女子中学生であった。完璧な包囲網の銃と意識の訓練された武装集団に鬼田のサイコキネシスのみでどうやって戦えばよいのかわからずに両手を差し上げた。鬼田はそれにならった。

*******************************

二人は巨大船の中にいた。
遠い別々の部屋で鉄製の手錠を後ろ手にかけられている。

彩が鬼田の力を借りて船の構造を完全に把握した。
鬼田にテレパシー( チ カ ラ ヲ ダ サ セ ル )( ワ タ シ ノ テ ジョ ウ ヲ コ ワ シ テ )

パンッ 彩の手錠が壊れて外れた。

次に彩は鬼田の手錠を鬼田の力を用いて、スッと壊して外した。

鬼田は彩から送られてきた船の内部構造を読み取り、グニャリと”曲げ”て( 90度。曲がった先で更に90度 )、大型船の内部構造を滅茶苦茶にした。

毒ガスの機械装置があり、彩が機械を遠隔操作してバルブを開いたり、破ったりして船中に毒ガスを噴流させた。

扉をお互いに壊しあい、警備兵を血みどろの肉塊に変えながら二人は互いに合流しようとしていた。銃などを使う警備兵もいたが、二人には通じなかった。

緊急サイレンの音が鳴り響く。

ウォーン!ウォーン!ウォーン!

ものすごい量の毒ガス。白紫色であった。
二人は合流し、ゆっくり歩いていた。毒ガスは縦に楕円をユラリユラリと描いて二人に届かない。

宇宙服のような毒ガス防護服を身につけた大きな体の武装兵士たちと小柄な兵士 ―あの美女であろう― が火炎放射装置を背中に背負い、 ドウドウ と音を立てて、噴射してきた。

が、二人は物ともせず宇宙服兵士のほうへ歩いていく。

突然、宇宙服兵士の体が四散した。バシッ! 鬼田の攻撃であった。
次々と四散する中、宇宙服がブシュッと切れ目が入り破れ、猛毒を吸い、のたうち回って動かなくなるものも次々と出た。
彩の鬼田の力を借りた高度な攻撃であった。

鬼田は敵の進入路を次々と操作していく。
敵の退路をバンバンと塞いでいく。
そうやって、逃げる敵の動きをコントロールする。

彩は問い詰めようと、あの赤いミニスカートのタイトドレスのリーダー格の美女を死体で塞ぎながら歩み追いかけていった。
鬼田も承知済みだ。

美女が大男の死体を片手で掴んで投げ飛ばすさまを見て、(魔物)と彩は思った。

何十人もの死体で美女の道を塞いだが、すべて 腕一本で掴んで投げてどかして逃げていく。

だれかが「 菊花さん 」「 きっかさん 」と呼ぶので呼び名であろう。
船上の外へ出た。

菊花と兵士二人が船の先端のほうへじりじりと逃げていく。

菊花の片膝がグ…、と落ちた。
彩が歩かせないように足の動きを止めた。

菊花の頭の中を彩の持つあらゆる技術を使い読んだ…。
なかなか読み取れず、菊花の体を鞭打つように鬼田のサイコキネシスをもちいて痛めつけその隙をついてすべて読み取った。

彩「 わかりました。石井菊花さん。自分で死になさい 」

船のアラートサイレンが凄い音を立てている。

ウォォーーン!!ウォォーーン!!

(鬼田君、機械をむき出しにして)

いっせいに床の扉が開いて沢山の毒ガス装置がばかばかと開いてむき出しになった。
彩「 私たちを殺そうとした毒があるわ 」

彩は機械を指差した。

菊花は宇宙服を脱ぎ始めた。

左膝を下げられているが、見事なプロポーションの立ち姿であった。
化粧をしていないが、30歳くらいの大人の美女で非常に美しかった。
赤いミニスカートのタイトドレス姿は背も大きすぎず、瘦せすぎず、ファッションモデルとは別次元の現実的肉感的美しさであった。
どんな男でも傍にいたいと思うだろう。

菊花は這いずって床の毒ガス装置に近寄り、ホースとマスクを取り出して、豹のように部下の大男に襲い掛かった。

大男に馬乗りになり、宇宙服を破いてちぎり取り、毒ガスマスクを押し付け、された下の大男は菊花の髪の毛をむしるのでその男の手をプロレスの指四つにしてメキバキと折る。2秒で死ぬ。
もう一人の大男は失禁して座り込んでいて、同じように菊花にやられた。

菊花は彩と鬼田に正面を向き立ち上がり、神経性ガスの流れる毒ガスマスクを自分の顔にかぶせて10分かけて死んだ。

サイレンはけたたましく鳴り響き、彩はこの巨大船の構造をすでに知っていた。
信じられないような量の爆発物を積み、自爆消滅できることを。

煙が立ち上ってきて、小規模の爆発が起き始めた。
白紫の毒ガスの噴流がもの凄い。

晴れた夜空に見渡す限りの海。
巨大な船上で海にも飛び込む暇はなさそうだ。
この爆発物の量なら仮に飛び込んでも同じだろう。

菊花の頭の中には、通常爆発物、原子爆弾、水素爆弾、びっしりとデータがあった。

彩が「 鬼田君、頑張ってね 」と背の高い彩が鬼田を抱きしめ、自分のおでこを 鬼田のおでこに つけた。

( ア ナ タ ノ チ カ ラ ヲ ゼ ン ブ ヒ キ ダ ス  )

宇宙からはっきりとおおきく観測できる丸い光が地球にキラキラと光った。
それは 長く続き 美しかった。

* 彩と鬼田君(2) 終 *

No.28 - 2026/03/08(Sun) 21:40:00
短編小説 / GIL
* 彩と鬼田君(3) * 武井信夫 作

−西暦2026年1月9日(金) 文化厚労賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文化大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部文学賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 文部大臣賞受賞作品−
−西暦2026年1月20日(火) 旭日殊勲賞受賞作品−

彩が菊花から読み取った情報は非常に入り組んで、絶望的なものであった。

パパやママは大丈夫だろうか―

港で彩は考えた。
彩と鬼田はびしょ濡れである。

大量の海水の塊を防御シールドにして、放射能や爆発をガードし、日本東側に高速移動して辿り着いた名前も知らない港―

超能力開発部門・薬品部隊―警察と自衛隊が関係している。
要するに日本国が敵ということである。

世界各国―特にアメリカが、その日本近海での爆発を観測して関心を持った。
一体何事かと日本国に聞いてきた。

杉本総理大臣 「 この度はお騒がせして申し訳ありません。実験なのですが、爆発が大きすぎました 」

***********************************

彩と鬼田のふたりはタクシーを拾い、彩の自宅へ帰った。

ママと今回の件について話し合った。

ママは 「 もう覚悟をして戦い抜くしかない 」 と言う。

彩 「 私たちはこそこそせず堂々とふたりで街を歩く。何も悪いことしてない 」

ふたりは学校へは行かず、アイスクリームコーンを食べながら歩いていると、サングラスをかけ新聞を読んでいる帽子をかぶったグレーの背広の姿がよく目についた。

カフェテラスの外で、茶を飲んで、チラチラ二人を見ている。

お店で何か頼むと店の主人の頭の中に毒物を入れている情報があった。
毒が飲み物や食べ物に入っている!

仕方がないので水道水を飲む。

スーパーでカンパン、カロリーメイト、カップ麺を買い込む。

戦車と自衛隊員、警官が連携をとって街中で彩と鬼田を包囲にかかる。

彩は団地の自宅へ逃げ込む。
ここならまさか砲撃などはしてこないだろう。

鬼田は迫りくる戦車を団地から見下ろして吹き飛ばしたり、ペシャンコにしながら、彩のパパとママの逃げる時間を稼ぐ。
彩 「 パパとママは東北へ逃げてね、急いで! 」

親を逃がし終わった鬼田と彩はこんな存在を今まで知らなかった恐ろしい連中と戦う羽目になった。
自衛隊レンジャー部隊―

団地の四階での死闘―
こういう場所での格闘戦もプロ中のプロである。
さすがの彩でも、その動きには苦戦した。

下から梯子、上からヘリコプター、階段から―
レンジャー部隊には彩と鬼田に対してあきらかな殺意があった。
同じ日本人をためらわず平気で殺せる―そういうメンタリティーと教育、権限、命令を受けていた。

その殺意に腹を立てた彩は連中を肉塊に変えてやった―
裏返しというやり方である。
体の中と外が裏返って、それでも生きたままにさせるという技だ。

ここでは危ない―
彩と鬼田はレンジャーの裏返しの山を築きながら階段を駆け下りて団地を走り出た。

東京の市街地で戦車を吹き飛ばす鬼田。

しまいには機動部隊の連携の取れた動きに大包囲され追い詰められたふたり。

エスパーとは己が特別な人間であるという自覚により自我の肥大した連中で、ことごとく邪悪な者達である。
所詮、才能がない者がほとんどである。

彩 「 鬼田君の才能を信じる…、お願い…、限界を超えて…、鬼田君の力を私が大きくする… 」
彩の技が鬼田の意識を拡大化した。

青色の光の柱が立ち昇った。

それは世界最大の水爆ツァーリ・ボンバの一万倍の威力の青い柱。
円柱の形のサイコキネシスとして上にも下にも横にも大穴が空いた。

ふたりは青く縦に白線混じりの透き通った円柱の光の真ん中で宙に浮かんでいた。
蒼い光の中で彩は髪を揺らしていた。
ズームアウトするとふたりは点に見え、やがて認視できなくなる。

彩 「 蒼い力…? 」

東京圏は壊滅した。

**************************************

日本国はこのふたりには攻撃や研究を諦めた。

彩 「 学校も青木もみんな消えちゃった 」

関東平野に深い大穴が空き、海水がなだれ込んだ。
日本の地形と日本地図が変わってしまった。

海外、特にアメリカが注視していたが、日本の首都圏が全滅するとは、なんの騒ぎ、あるいは実験なのかと調査開始した。

日本の臨時政府はこれだけの被害と、アメリカの目は誤魔化せないと判断し、調査に協力した。

その大まかな内容は日本の軍隊が出動して中学生の男女のエスパーを超能力開発部門・薬品部隊、警察、陸自、海自が出動して研究目的で追い詰めた所、この大悲劇が起きたと認識、発表した。

国民と世界から日本臨時政府へ非難が殺到した。

アメリカと日本臨時政府の仲裁、話し合いにより、この中井彩と鬼田哲郎ふたりに対して、何もしないことを決めた。

普通の子供と同じように扱い、同じように生活させる。

合流した中井家のパパ、ママ、彩、鬼田は飛行機で千葉の館山に向かった。

そこに移住することに決めた。

田舎で学校ものんびり、海も近く、潮風、グレーの海、蒼い空。
晴れると実に良い所だ。

所々、草地にマンホールが転がっている雑さも良い。

4人はこの田舎が気に入った。

********************************

ふたりの能力の調査をして、力の関係などの結果が出て、日本臨時政府及び国際機関は中井彩と鬼田哲朗のふたりを離れて暮らさせて、会わせないことに決まめた。

鬼田は北海道の児童保育施設に行くことになった。


空港―


彩 「 鬼田君、あなたの心の中を視たことがあるのよ。空と山々、綺麗な草木、沢山の雲、ジャンボジェット飛行機が飛んで、猫が映った画で、心が綺麗でいっぺんに好きになっちゃった。でも…、お別れね…、もう会えない… 」

鬼田 「 そう。うどんでも食べない? 」

彩 「 あはは! 鬼田君らしいわね 」

ふたりは空港でうどんを食べた。

鬼田 「 美味しい? 」

彩 「 うん 」

彩は涙を流していた。とめどなく溢れ出て、おさえるのに必死だった。


鬼田 「 さようなら、彩ちゃん 」

* 彩と鬼田君(3) 完 *

No.27 - 2026/03/08(Sun) 21:29:00
短編小説 / GIL
* 赤いパラソル * 武井信夫 作

−西暦2026年1月20日(火) 児童文化文学賞受賞作品−

井上由香( 14才 )は日差しの強い西日が差す日に青いチャイナ服と青いチャイナシューズを身に着け、赤いパラソルをさして散歩をしていた。

白ウサギが一匹、ぴょんぴょんと歩いていたので 後をついていった。

どんどんついていくと霧に包まれレンガの階段に突き当たった。
霧は広大だったので、レンガの階段を上り続けていった。

途中、階段が左に折れて、どれだけ上ったか見当がつかなくなっていった。
そのうち、草地に線路のあるレンガ造りの駅のホームにつながっていった。

由香はホームに立った。
大きな太陽の夕日。西日だろうか。

右側にあるレンガのトンネルから赤い列車が出てきた。
由香の立つホームに列車が停まる。

列車の中からは幽霊のような人々がぞろぞろと出てきた。
体は白い。背広やシャツでカバンを持ち口を丸く開いていて目と鼻は無い。

背中からさす日光に服が陰る。
さっき見かけたウサギが駅のホームにいて由香のほうを向いた。
そのウサギが にょき と大ウサギになり二本足で立った。

ワイシャツにネクタイを身に着けていてズボンを履き、足は大ウサギの素足。
長い両耳は片方が折れている。
大ウサギは由香を見た。

大ウサギ「 異次元に迷いこんだようだね 」
大ウサギ「 やあ。僕はイナバ。由香ちゃん。こんにちは! 」
大ウサギ「 この列車に乗ると すごい所に行くかもしれないよ。それでも行くの? 」
由香「 だって私、何が何だか。乗るしかないの 」
大ウサギ「 じゃあね、一緒に行こう 」

大ウサギと由香は4人席に向き合って二人で座った。

由香は進行方向に顔が向いた向きに座り、大ウサギは背中が進行方向である。

由香は左足の側に閉じた赤い傘を椅子によりかけて置いた。右側が大窓だ。

他に乗客はいない。
列車は走り始めた。

大ウサギ「 見てごらん。あれがアンドロメダ星雲。あっちが君の居た銀河 」

大きく光るアンドロメダ星雲が手前にきて、左遠くにぐしゃぐしゃの銀河が視えた。

由香「 この形の良いのがアンドロメダね 」

大ウサギ「 アンドロメダ星雲は大変です。重力地獄で。銀河系は機能的です 」
大ウサギ「 第11銀河と呼ばれる( ハナモクセイ )に着いたよ。中心近くに ブラックホールで御座います 」

大ウサギは指をさして言った。

四葉のクローバーのかたちの銀河に中心あたりが黒くなっている。
赤い列車はその中心あたりにどんどん進む。

大ウサギがちょっと気の入った顔で「 突入だよ!覚悟して! 」
由香「 えっ 」

列車の先頭から光球が短い尾を引いて発射された。

ボヒュ

大ウサギの眼が上下藪にらみになって言う「 次元を開いたよ。ブラックホールの異次元って、どうなってるのかな?由香ちゃん 」
由香「 わかるワケないわ 」

パアアアアアア 

光の裂け目が開いた。

その中にいろんな形の光が更に光踊っている。

大ウサギ「 それはね、君のイメージなのさ 」

列車はその光の中へ進んで行き、入った。

雲を突き抜け列車は降下していく。

ル・ル・ルル

深そうな海があり水面がキラキラと輝き小島がチラチラとあり、大きな木が島ごとに1本か2本生えている。

由香「 見渡す限りの青い海 」

大ウサギ「 なるほど、ここが君のイメージかい? 」

赤い列車はかなりの鋭角でキラキラと輝く海に突入した。

ジャボーン

大ウサギ「 窓を閉めよう 」
由香は席から立ち上がって大窓を両手で一生懸命に閉めた。

深い海の中を赤い列車が横に進んで行く。立派な太いごつごつ枝のようなサンゴ礁が見える。

そのうち列車の外が何もかも紫に光り輝いた。

光る星だらけで規則正しく並んでいた。輪になっていたり、直線だったり、遠近法を持った光景だ。

その光の洪水の中を列車は横に進んで行く。

大ウサギ「 光の海だ。君は凄いね 」

そのうち赤列車は降下していって電車の線路網が見えてきてその上を進む。
前方に大きな駅がある。緑で千葉駅と書かれている。

大ウサギ「 由香ちゃん 着いたよ! 」
由香「 元の場所? 」
大ウサギ「 保証はできないけどね 」

赤列車は線路に乗り、大ウサギと井上由香は足で降りた。

良く晴れた昼間だった。

由香は赤いパラソルをさして人込みを大ウサギと歩いた。

駅前のSEGAのゲームセンターに向かい、プリクラを一緒に撮った。

カシャ

大ウサギは右手で着ぐるみの頭を外し、人の顔が映った。由香は向かって右に映った。

由香「あっ武井君!」

実はこの二人、小学生時代のときの初恋の人同士であった。

* 赤いパラソル 完 *

No.26 - 2026/03/08(Sun) 21:18:15
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