下弦の月が浮かぶ夜 車道は静かに滑っていく 星屑たちはうまく見えず 暗い空の色はどっしりと佇んでいた
赤信号はじっと見下ろして 何かを問いかけているよう 小さな車たちは後続車にテールランプで伝言ゲーム 自転車が追い越していった時 道端に忘れられた片方の靴を見かけた 青色か緑色 もしかしたら灰色や茶色かもしれない そんな色合い
芝生から海水は溢れ出し 次第に僕を沈め 家の屋根を上り 街路樹を包み 月より高いところまで満ちていった
たゆたう身体でやっと気づいた 暗闇の空は明日で 信号機は現在までの今日 忘れられた靴は今日までの数日で 月は遠い過去だったんだ
僕は無駄な空気を吐き続け 気泡は空へと連なっていく
あの人はもういない 僕は僕のための生活を歩み 多くものも消えていった
静かな夜 時々思い返してした |
No.117 - 2018/09/16(Sun) 06:57:42
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