2018年、“Critical Care Research and Practice”誌に「Outcome in Patients with Isolated Moderate to Severe Traumatic Brain Injury」という論文が掲載され、全文(英語)がhttps://www.hindawi.com/journals/ccrp/2018/3769418/ で公開されています。
オランダのユトレヒト大学医療センターのレベル1外傷センターに、2011年から2015年に入院した中等度と重度の外傷性脳損傷患者179人の転帰を報告しています。 概要は ・55人(33%)が入院中に死亡し、そのうち45人(82%)が生命維持治療の中止後に死亡した。 ・生命維持治療を中止する決定は、18人の患者(40%)で入院日に行われた。これらの患者うち6人(33%)で、この決定は患者が救急科にいる間に行われた。 ・生存退院から3か月後にフォローアップを行った患者の71%(78人)はGOSスコアが4以上だった。無反応覚醒症候群(UWS)で退院したり、3か月後にUWSに苦しんだ患者はいなかった。
この報告は冒頭から Traumatic brain injury (TBI) remains a major cause of death. Withdrawal of life-sustaining treatment (WLST) can be initiated if there is little anticipated chance of recovery to an acceptable quality of life. (外傷性脳損傷(TBI)は依然として主な死因です。許容可能な生活の質に回復する可能性がほとんどないと予想される場合は、生命維持治療(WLST)の中止を開始できます) と書いています。
4. Discussionのなかで Furthermore, we speculate that people in the Netherlands find quality of life extremely important and therefore might feel that life with UWS has no quality. (さらに、オランダの人々は生活の質が非常に重要であると考えているため、無反応覚醒症候群の生活には質がないと感じるかもしれないと推測しています)
WLST can be appropriate after severe traumatic brain injury to prevent a patient from staying alive at the cost of being left in a state of disability that might be against his or her wishes. However, WLST should not deny patients their chance of a good recovery. (WLSTは、重度の外傷性脳損傷の後に、患者の希望に反する可能性のある障害状態のままになるという犠牲を払って患者が生き続けることを防ぐのに適している場合があります。ただし、WLSTは、患者が良好に回復する可能性を否定するべきではありません)
There is a possibility that patients might have shown clinical improvement if the decision to WLST would have been postponed. (WLSTの決定が延期された場合、患者は臨床的改善を示した可能性があります)
The Neurocritical Care Society therefore suggests delaying withdrawal of treatment and treatment limitations for at least 72 hours in cases of devastating brain injury to give the patient the chance to recover and reduce the risk of prematurely forgoing treatments that could provide clinical benefit. (ニューロクリティカルケアソサエティは、壊滅的な脳損傷の場合、治療の中止と治療制限を少なくとも72時間遅らせて、患者に回復の機会を与え、臨床的利益をもたらす可能性のある治療を時期尚早に中止するリスクを減らすことを提案しています) という記載もある。
ということは、著者らは生命維持治療の中止が早すぎたケースがあったと認識しているのか?
いずれにしても、私は「安楽」死あるいは「尊厳」死、そしてCENSORED幇助を合法化している所は、重症脳不全患者への対応が酷薄だ、と思いました。 |
No.1382 - 2020/12/20(Sun) 13:07:39
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