医学書院発行の「Neurological Surgery(脳神経外科)」の2015年8月号p705〜708に、嶋村 則人氏ほか(弘前大学 大学院医学研究科脳神経外科学講座)による“研究 青森県における遷延性意識障害患者の実数調査”が載っています。以下は主要部分です。
対象と方法 対象は、2011年2月15日時点で、遷延性意識障害の定義に合致する患者。 青森県内のA:病院・在宅療養支援診療所465施設、B:介護老人保健施設49施設、C:障害者支援施設・療護施設168施設の合計682施設に、郵送式アンケート調査を行なった。
結果 217施設(31.8%、A:121、B:19、C:77)から回答を得た。
青森県における遷延性意識障害患者数は1198人(男性381人、女性817人)。
年齢分布は19歳以下5人(0.4%)、20代28人(2.3%)、30代11人(0.9%)、40代15人(1.3%)、50代43人(3.6%)、60代96人(8.0%)、70代240人(20.0%)、80歳以上760人(63.4%)。
遷延性意識障害の原因は脳卒中771人(64.4%)、心疾患40人(3.3%)、転倒・転落24人(2.0%)、呼吸器障害23人(1.9%)、交通事故15人(1.3%)、頭蓋内炎症11人(0.9%)、その他(原因不明を含む)314人(26.2%)。
遷延性意識障害患者の所在は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設577人(48.1%)、病院415人(34.6%)、在宅100人(8.3%)、障害者施設・療護施設64人(5.3%)、その他42人(3.5%)。
人口100万人当たりの遷延性意識障害患者数は869人。
考察 人口100万人当たりの遷延性意識障害患者数が、宮城県の422人と比べて多いことについて、人口の高齢化と脳卒中の多さも要因とした。 青森県では公立病院の割合が高く、公立病院では在院日数の問題から長期入院は困難であること、さらに療護センターのような遷延性意識障害の基幹病院がないことで、特養・老健施設に入所する割合が高くなっていると考えられた。
今後ますます遷延性意識障害患者が増加することが予想される一方、受け入れ病院や施設が不足していることも判明した。医療だけではなく、早急な行政支援の必要性が示唆される結果であった。 |
No.1240 - 2015/11/03(Tue) 15:06:50
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