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リハビリテーション医学会誌に掲載された3例 NEW / 守田憲二
 2024年に開催された第61回日本リハビリテーション医学会学術集会の抄録号と思いますが、「The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine」61巻,Supplement号がJ-STAGE内
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrmc/61/Supplement/_contents/-char/ja
で公開され、以下の3点の遷延性意識障害からの回復例、リハビリテーション例が掲載されています。(抄録のため掲載ページがP・・・ではなくS・・・と書かれています)

 掲載されているPDFファイルそのもののURLは
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/61/Supplement/61_61.S977/_pdf/-char/ja


S1193

遷延性意識障害に対して高頻度rTMSを施行し意思疎通が可能となった一例

1 河野臨床医学研究所品川リハビリテーション病院リハビリテーション課,
2 河野臨床医学研究所品川リハビリテーション病院医局
朴木 裕樹1,吉田  臨2

【はじめに】遷延性意識障害における非侵襲的脳刺激療法の報告が近年増加している。最小意識状態(MCS)患者において背外側前頭前野への高頻度の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は有効と報告がある一方で、無反応覚醒症候群(UWS)患者の改善した報告は少ない。今回、脳幹梗塞および右被殻出血術後の遷延性意識障害患者に対して、背外側前頭前野に高頻度のrTMSを行い、意思疎通が可能となった一例を経験したので報告する。

【症例】40歳代女性、発症前ADL自立、会社員、脳幹梗塞および右被殻出血にて脳室穿破の診断、緊急開頭血種除去術を施行。

【経過】第41病日に回復期病院転院、入院時Glasgow Coma Scale(GCS)E1VTM1、CRS-R:0、FOUR score:E0M0B1R4、四肢体幹の筋緊張弛緩、FIM18点であった。
第48病日電気刺激による感覚入力を開始、第51病日頸椎カラー作製し立位練習開始するも変化なし、第121病日目に高頻度rTMSを左背外側前頭前野に開始、CRS-R:1、FOUR score:E0M1B1R4、第 183 病日目に高頻度rTMS再度開始、GCS E3VTM6、CRS-R:4、FOUR score:E3M4B1R4 となり、FIM18点のままだが右手でスイッチを使用して簡単なYes/Noが可能となった。

【考察】感覚刺激入力や立位練習の効果が乏しく変化はなかったが、背外側前頭前野に対し高頻度rTMSを開始後数日で変化が認められた。しかし、1クール終了後はわずかな変化のみであった。再度rTMSを実施後、簡単な意思疎通が可能となった。UWS患者に対する高頻度rTMSの効果が刺激時間や頻度だけでなく、複数クール実施することで改善に寄与した可能性がある。


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S1212

慢性期病院からの転院後積極的なリハビリテーション治療により自宅退院に至った症例

1 日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科,
2 竹川病院リハビリテーション科,
3 日本大学医学部リハビリテーション医学分野
土屋  航1,安達 明完1,鳥沢 伸大1,藤澤 知弘 2,新見 昌央1,3

【背景】
遷延性意識障害からの回復には数カ月の期間を要すると報告されている.本邦では意識障害が遷延している患者はケアのみで,リハビリテーション治療を受けられない病院へ転院することが多い.今回,転院後の継続した評価で意識障害の改善を認めた症例を発見し,積極的なリハビリテーション治療を行ったことで自宅退院に至ったため報告する.

【症例経過】
症例は右被殻出血を認め,開頭血腫除去術及び外減圧術が施行された40代男性である.day2にリハビリテーション科医師の指示の下,端座位訓練より早期離床を開始した.開始時Japan Coma Scale(JCS) ?V-200 であり基本動作は全介助を要した.気管切開を施行し人工呼吸器離脱後day16に一般病棟へ転棟した.その後も意識障害は遷延し,day81に慢性期病院へ転院となった.転院後,継続した評価により意識障害の改善を発見したためday170に当院へ再入院した.再入院時JCS?T-2で従命可能であったが,長期臥床による四肢の痙縮及び拘縮を認めたため,ボツリヌス療法を併用したリハビリテーション治療を実施した.当院での最終評価時はJCS?T-1であり従命や疎通が可能となった.しかし,拘縮は残存し,基本動作は全介助であった.day197に回復期病院へ転院後,day366に自宅に退院した.

【結語】
意識障害の回復過程を適切に評価しなければ,改善のタイミングを見落とし,必要なリハビリテーション治療が受けられず,拘縮などの二次的合併症が生じてしまう.これは,本来のパフォーマンスの発揮を妨げるだけでなく,ADLを大きく低下させる要因となりうる.


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S1233

遷延性意識障害を呈した若年びまん性脳損傷者に対して歩行練習を実施した回復期の理学療法経過

千里リハビリテーション病院
上野 奨太,吉尾 雅春

【症例紹介】
20 代男性。交通外傷によるびまん性脳損傷。5週目に当院回復期リハビリテーション病棟入院。意識はGCS:E3V1M1、Coma Recovery Scale-Revised(CRS-R):4 点で無反応覚醒症候群に属した。膝関節伸展可動域は左右とも-10度の制限を有した。

【経過】
介入は関節可動域練習に加え、入院1週目は立位までの離床、2〜13週目は両下肢に長下肢装具を装着した立位・後方介助歩行練習(60~100m/日)を聴覚刺激も加えて実施。4週目に追視がみられ、CRS-R:8点で最小意識状態へ移行するも、両膝関節屈筋の筋緊張はMAS:2と亢進した。しかし、歩行練習後は即時的にMAS:1に抑制し、膝関節の拘縮は進まず経過した。10週目に言語表出がみられ、対話が可能となり、CRS-R:20点で最小意識状態から脱却したが、記憶障害や易怒性を認めMMSE10点であった。NIHSS運動は左右上下肢全て3で、動作全てに介助を要した。13週目まで長下肢装具歩行練習を継続。徐々に易怒性は抑制され、運動に積極的になった。14週目から基本動作練習を中心に介入した。

【結果】
24 週目にGCS:E4V5M6、CRS-R:21点、MMSE23点、NIHSS運動(右/左)は上肢(1/2)、下肢(1/1) となった。食事・起居、病棟内車椅子移動は自立し、移乗軽介助、歩行中等度介助で障がい者病棟へ転院となった。

【考察】
意識障害例に対する歩行練習は単なる立位練習よりも荷重および筋紡錘の伸張刺激が強く、大脳皮質を賦活し、意識改善に寄与した可能性がある。また、痙縮抑制、拘縮予防に寄与し、意識改善後の動作能力向上に有益であった可能性がある。    
No.1454 - 2025/12/04(Thu) 12:13:33
高圧酸素療法と脂肪幹細胞の脊髄注入による回復例 / 守田憲二
 2018年にロバート・ボイティムちゃん(当時8歳)は溺れて1時間近く心肺停止し脳死とされ、父親はヒューストンの2つの病院から、息子を手放して臓器を提供するように言われた。発症37日後からニューオリンズメテリーのハーチ高圧のポール・ハーチ博士(Dr. Paul Harch of Harch Hyperbarics in Metairie)のもとで高圧酸素療法を40日間以上実施したところ、最初の週にロバートちゃんは会話が理解可能になり笑うようになった。その後、数年間にわたり自宅で酸素室を使い、脊髄への脂肪幹細胞の注入も行った結果、現在は歩き、話している。

 「ハーチ博士は1989年以来外傷性脳損傷、脳震盪、脳卒中、溺死の人々を治療してきたが、FDAは未認可、医療保険は依然としてこれに対して払い戻しをしていない」とのことです

出典:2025年9月11日付WWL-TV記事
Fighting for breath: A father’s battle to save his son from brain death
https://www.wwltv.com/article/news/health/fighting-for-breath-fathers-battle-to-save-his-son-from-brain-death/289-4c0c6692-4929-43fc-a418-f929b77571d9
No.1452 - 2025/09/17(Wed) 23:49:28
Re: 高圧酸素療法と脂肪幹細胞の脊髄注入による回復例 / 守田憲二
誤植訂正、年齢は(当時3歳)です。
No.1453 - 2025/09/17(Wed) 23:52:40
10年間以上植物状態が持続した2症例、言語刺激に対する脳内プロセスを確認 / 守田憲二
「高次脳機能研究」45巻1号がJ-STAGE内https://www.jstage.jst.go.jp/browse/hbfr/45/1/_contents/-char/ja で公開され、このうち第48回日本高次脳機能障害学会学術総会講演抄録 一般演題はhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/45/1/45_45.20/_pdf/-char/ja です。p23に「長期植物状態患者の脳内言語プロセスの検討」が掲載されています。以下は同文です。



長期植物状態患者の脳内言語プロセスの検討

河野寛一1,本田美和2,苅安誠3,下堂薗恵4
1 潤和会記念病院リハビリテーション科,
2潤和会記念病院リハビリテーション療法部,
3ヒト・コミュニケーションズ科学ラボ,
4鹿児島大学大学院医歯学総合研究科リハビリテーション医学

【はじめに】発症後500週を越える植物状態にある2症例の言語機能についてfMRIとMEGを用いて解析した。

【対象】症例1:70歳,男,右利き。心筋梗塞による心停止,蘇生後脳症。仕事中に発症し,低酸素脳症による遷延性意識障害となった。発症4週後に当院へ転院。気管切開,経鼻経管栄養。57週目に胃瘻造設。59週目以降は医療療養型病床に転棟した。その後肺炎や尿路感染を繰り返した。MRIでは徐々に脳萎縮が進行し,568週目に死亡した。
症例2:53歳,男,左利き。右被殻出血。自宅で発症して入院した。同日減圧開頭血腫除去術を受けた。気管切開,頭蓋形成術を受けて,28週から医療療養病床へ転棟した。507週目の現時点で経鼻経管栄養,気管切開状態で,意識障害が持続している。

【方法】fMRI:メロディーのみと歌詞有り音楽,日本語童話の聴き取りを計測した。また安静閉眼時fNRI(rs-fMRI)を検索して評価した。MEGの検査法:音刺激は純音(100Hz,65db),言語音は合成単音,ヒト言語音(3 mora)の聴き取りを行った。MEG解析はMNE法を用いて解析した。MEG-MRI 皮質領域mapにはDesikan-Killiany(Brainstorm)を用いた。

【結果】症例1。MRIでは徐々に脳萎縮が進行した。452週目のfMRI検査では左側頭葉〜前頭葉に反応が認められた。566週目のMEGで3モーラ音の聴き取りでは200〜400msで両側前頭前野,下前頭回にシグナルが観察された。
症例2。MRIでは徐々に脳の萎縮が進行した。rs-fMRIでは507週目,視覚認知,注意,小脳機能のネットワーク低下を認めたが,他のネットワーク機能は保たれていた。3モーラの言語音刺激では300〜400msで右前頭葉のシグナルが観察された。

【結論】10年間以上植物状態が持続した2症例の言語刺激に対する脳内プロセスを検索した。脳萎縮は徐々に進行したが,言語音刺激に対する側頭葉〜下前頭回,前頭前野のモジュール間のシグナルの推移が観察された。
No.1451 - 2025/08/01(Fri) 11:54:31
「死体からの臓器摘出に麻酔!」は4月末で消滅、「作られる意識障害者そして死体」を開設 / 守田憲二
 プロバイダーの「ぷらら」がプライベートホームページサービスを2025年3月31日で終了することにともない、私個人のサイト「死体からの臓器摘出に麻酔!」http://www6.plala.or.jp/brainx/index.htmは4月末に消滅の予定です。

 代わりに本日、「作られる意識障害者そして死体」https://brainx.web.fc2.com/を開設しました。

 新サイトはスマートフォンで見てもストレスなく読める体裁です。

 トップページ内の見出しは
1,死亡予測の誤りは57例当たり1例
2,患者家族の承諾なく救命治療を打ち切り 、臓器提供を見据えた管理を開始
3,医療従事者が作る意識障害者そして死体
4,臓器摘出時の麻酔、移植医は国会で否定したが嘘だった!
5,死亡宣告の誤り、臓器摘出手術の中止
6,その他の参考情報
旧サイト消滅、当サイト開設にともなうお知らせ

 
 サイト移転の完了は夏頃の予定です。旧サイトの文章をそのまま移すページがある一方で、移さない予定のページもあります。遷延性意識障害からの回復例は、すべて最低限の修正で移しますが、サイト移転が完了するまで一時的に読めなくなるページも生じることをお断りします。

 その他の移転予定のページ、移さない予定のページの区別はhttps://brainx.web.fc2.com/の下部をご覧ください。

以上
No.1450 - 2025/03/27(Thu) 17:41:11
仮想現実技術を用いた在宅訪問リハビリテーション / 守田憲二
 2024年10月に発行された「訪問リハビリテーション」14巻4号に、田丸麻子氏(mediVRリハビリテーションセンター大阪)ほかによる「仮想現実技術を用いた在宅訪問リハビリテーション 遷延性意識障害例を通した検討」が掲載され、
mediVRリハビリテーションセンター大阪のサイト内のエビデンスページ
https://www.medivr.jp/evidence/
でもpdfファイルにて同文が公開されています。

 ヘッドマウントディスプレイを装着してもらって、仮想空間に出現する画像に対応して、上肢の動作をしてもらうものです。

 文献のタイトルに「遷延性意識障害例を通した検討」と書かれてはいますが、紹介されている事例1は一部の意思表示が介助下での筆談にて可能な方、事例2は簡単な声かけに応じられる時もある方です。周囲の状況を認識できる方に効く可能性のあるリハビリテーション方法と思いました。
No.1448 - 2025/03/06(Thu) 11:59:53
Re: 仮想現実技術を用いた在宅訪問リハビリテーション / 桑山
 いつもありがとうございます。事例1は私の息子ですが、VRの機器の貸し出し希望が多く、私のところは終了になりました。本人の訪問時の覚醒状態と、機器のセッティングに慣れた療法士など専門家の人件費の確保が課題です。
No.1449 - 2025/03/07(Fri) 11:39:26
最重症の遷延性意識障害患者10例、このうち6例では聴覚野に限定的な活性化、2例では言語野に有意な活性化を認めた:千葉県循環器病センター脳神経外科がfMRIと脳-コンピューターインターフェースで検査 / 守田憲二
 今回、紹介する2つ目の論文は2023年11月に発行されていますので、すでにご存じの方がいると思います。


1,2020年1月発行の「The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine」57巻1号は、J-SAAGE内
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrmc/57/1/_contents/-char/ja
で公開されており、p23〜p28に千葉県循環器病センター脳神経外科の岡原陽二氏らによる「意識障害慢性期の無反応覚醒症候群患者に向けたBMI応用」が掲載されています。著者抄録は以下の点線間です。
・・・・・・・・・・・・
 遷延性植物状態と呼ばれていた最重症度の遷延性意識障害は,現在では無反応覚醒症候群(unresponsive wakefulness syndrome:UWS)と呼ばれる.その定義は,覚醒しているが自己,外界に順応した反応が欠如し,持続的な意思疎通徴候が認められない状態を指す.しかし,UWS患者は運動,言語反応の外部出力が障害されているため,外部刺激に対して本当に内的に無反応なのかということに関する明確な答えを得ることは難しい.ブレインマシン・インターフェイス(BMI)は,筋出力に頼らず,脳波などの脳からの信号を検出することによって,環境制御や文字入力などを可能にする技術である.本稿では,定常状態視覚誘発電位を利用したBMIによる,UWS患者を対象とした意識状態評価研究から得られた知見に関して述べる.
・・・・・・・・・・・・
 この論文は、無反応覚醒症候群の患者5名のうち、1名で95%信頼区間の上限を超えた正答率を記録した被験者が1名で観察されたことにより「無反応覚醒症候群とされた患者群の一部に意思表出機能が保持されている可能性をあらためて示唆する結果であるといえる」と考察しています。



2,2023年11月発行の「Neuroscience Research」196巻p23〜p31に岡原陽二氏らによる「Detecting passive and active response in patients with behaviourally diagnosed unresponsive wakefulness syndrome(行動学的に無反応覚醒症候群と診断された患者における受動的反応および能動的反応の検出)」が発表されていました。
「Neuroscience Research」196巻は
https://www.sciencedirect.com/journal/neuroscience-research/vol/196/suppl/C
で公開されています。

要旨
 無反応覚醒症候群と診断された患者10例(男性6例、年齢20〜81歳)を対象に2課題(受動的リスニング課題、能動的反応時間課題)を実施し、受動的反応おび能動的反応を評価した。受動的リスニング課題では、fMRI解析中に受動的リスニング課題を実施した。能動的反応時間課題では、定常的視覚誘発電位を用いた脳-コンピューターインターフェース(BCI)を適用し、ベッドサイドで注意調節課題に対する能動的反応を引き出した。
 その結果、患者2例は、ベッドサイドでの認知神経生理学的検査では「無反応状態」と診断されたにもかかわらず、外部聴覚刺激を含む受動的課題でも能動的課題でも反応することが分かった。10例中2例は有意な活性化を示さなかったが、6例では聴覚野に限定的な活性化が認められた。残りの患者2例では言語野に有意な活性化が認められ、BCIを信頼できる精度で制御することができた。
 受動的・能動的アプローチを併用することで、能動的・受動的な神経反応を示す無反応型覚醒症候群患者を同定できた。「本複合的アプローチは、最小意識状態と無反応型覚醒症候群とを生理学的に区別するのに有用であることが示された」としています。


以上
No.1447 - 2025/01/08(Wed) 08:32:49
脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない、353人の意識障害患者で研究 / 守田憲二
 8月15日付のザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン、391巻7号に、イェレナG. ボディアン博士(スポールディングリハビリテーション病院)ほかによる“Cognitive Motor Dissociation in Disorders of Consciousness(意識障害における認知と運動の解離)”が掲載されました。
 日本語抄録はhttps://www.nejm.jp/abstract/vol391.p598

 複数国の6施設における意識障害患者353例を対象とした研究です。患者年齢の中央値は 37.9 歳、脳損傷から今回の評価までの期間の中央値は 7.9 ヵ月。

 8月14日付でNATUREは、この論文の紹介記事を
https://www.nature.com/articles/d41586-024-02614-z
に掲載しています。
 そのタイトルはOne-quarter of unresponsive people with brain injuries are conscious
More people than we thought who are in comas or similar states can hear what is happening around them, a study shows.
(脳損傷で反応のない人の4分の1は意識があります。昏睡状態や同様の状態にある人は、私たちが思っていたよりも多くの人が、自分の周りで何が起こっているのかを聞くことができることが、ある研究で明らかになりました)
 
 引用元の論文の英文抄録
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2400645
はApproximately one in four participants without an observable response to commands performed a cognitive task on fMRI or EEG
(指示に対して観察可能な反応がなかった参加者では,約 4 例に 1 例が fMRI または脳波上で認知課題を遂行した)
と書いているので、私はNATURE誌のタイトルは正しくは「脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない」とすべきではないかと思いました。
No.1444 - 2024/08/17(Sat) 09:26:57
Re: 脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない、353人の意識障害患者で研究 / 守田憲二
桑山さんが書かれた「fMRIやEEGについては、(中略)こういった考え方が主流になっている訳ではないのでしょうね」についてですが、私は欧米における意識障害患者への治療の傾向については、継続的に文献を読んでいないため、このご質問にお答えする能力がありません。
No.1446 - 2024/08/29(Thu) 09:23:36
Re: 脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない、353人の意識障害患者で研究 / 桑山
 いつも情報ありがとうございます。fMRIやEEGについては、オーウェンの「生存する意識」でも紹介されていますが、まだまだこういった考え方が主流になっている訳ではないのでしょうね。
No.1445 - 2024/08/24(Sat) 11:06:32
救急・集中治療終末期ガイドライン改訂作業が進行中、「期限付きで救命治療を開始、治療終了する場合は緩和医療が必要、だから日本緩和医療学会が加わる」 / 守田憲二
日本医事新報が3月から毎月上旬に、伊藤 香(帝京大学外科学講座Acute Care Surgery部門病院准教授、同部門長)による「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」の改訂作業に関する文章を掲載しています。点線以下に、各回記事が掲載されたURL、記事のタイトル、記事の抜粋を貼り付けます。


・・・・・・・・・・・
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=23842
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?@─キックオフ」伊藤 香
No.5212 (2024年03月16日発行) P.60

・2014年に日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会の「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン〜3学会からの提言〜」が発表されてから10年が経過し、現在、当ガイドラインの改訂作業に取り組んでいる。
・当ガイドラインは、「終末期の例」として4つのパターンを例示し、適切な意思決定のプロセスを経れば、延命治療の終了も問題ないと明記している。
・今回、当ガイドラインの改訂に着手するにあたり、集中治療終末期患者によりよい医療を提供できるように、終末期の定義を見直し、適切な意思決定支援の方法を改めて強調し、緩和ケアに関するガイダンスを明記することを改定のポイントとし、従来の3学会に日本緩和医療学会を加えた、「4学会のガイドライン」に発展させることを目標としている。


・・・・・・・・・・・
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=23958
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?A─『終末期』の定義」伊藤 香
No.5215 (2024年04月06日発行) P.61

・前稿で宣伝させて頂いた通り、3月16日に第51回日本集中治療医学会学術集会のシンポジウム15「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン〜3学会からの提言〜改定のポイント」にて座長を務めてきた。当シンポジウムでは、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会、日本緩和医療学会のガイドライン改訂コアメンバーと終末期の定義に関して議論した。
・「終末期の定義の案」を出し合った。そこで最も多かった意見は、「終末期を定義しない(できない)」だった。このガイドラインが果たすべき最大の役割は、それが患者にとって最善であると判断された場合、延命治療の差し控え(withhold)/終了(withdraw)を医療者と患者・家族双方にとって安全に行うことができるようになるための指針となることである。
・人の生き方の「多様性」を尊重するようになった現代において、集中治療室での終末期が個々の患者の価値観を反映した多様なものとなることは自然な流れであるように思う。

・・・・・・・・・・・
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=24191
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?B─Shared decision makingのための技術」伊藤 香
No.5220 (2024年05月11日発行) P.62

・Shared decision making(SDM)とは、患者・家族とのコミュニケーションを通じて、患者の価値観や選好を医療上の意思決定に取り込んで、治療のゴールを決めていく過程のことである。
・今回のガイドライン改訂のハイライトの1つは、「救急・集中治療医療従事者に対するSDMのためのコミュニケーションスキルトレーニングの推奨」を盛り込むことである。
・米国では、医療従事者向けのコミュニケーションスキルトレーニングがいくつか存在する。その1つである“Vital TalkTM”は、もともと腫瘍内科医が患者にがんの告知などの「悪い知らせ」を伝えるときの会話のトレーニング法として開発されたものだ。筆者は2019年以来、“Vital TalkTM”の日本語版である「かんわとーく powered by Vital TalkTM」の開発に携わってきた。

・・・・・・・・・・・
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=24309
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?C─期限付きの根治的治療(TLT)」伊藤 香
No.5223 (2024年06月01日発行) P.64

・よくあるのは、医療従事者側からみると患者にとって無益であると懸念される治療の継続を家族らが望んでいるような場合である。
・救急・集中治療の現場では、しばしば、事前意思表示やadvance care planning(ACP)の不明な重症患者を目の前にした医師が、「この患者さんに挿管したら、抜管できなくなり(集中治療をやめることができなくなり)、無益な延命治療を続けることになってしまうのではないか」と葛藤することがある。このことが、医師が救命可能な患者の治療開始を差し控える原因になるのではないか、と懸念する声が以前からあった。そのような場面では、TLT(期限付きの根治的治療:time limited trial)の考え方は役に立つ。予後や患者の治療の選好が不確実な場合は、根治的治療を開始し、ひとまず命をつなぐことができたらその先のことを考えればよいのである。
・今回のガイドライン改訂では、TLTの明記もハイライトの1つである。ただし、ここで問題なのは、適切な医学的判断とSDMのもと、TLTが試行され、根治的治療の終了(withdraw)が選択された後に必要となる緩和ケアが、日本の集中治療の医療現場で十分に浸透しているとは言いがたい点である。今回のガイドライン改訂が、従来の3学会に日本緩和医療学会が加わり「4学会のガイドライン」となった経緯はそこにある。


・・・・・・・・・・・
 以上で日本医事新報記事の紹介を終わります。

 なお、3番目の記事のなかでバイタルトークに言及されています。この掲示版では、5つ下に「バイタルトーク=医師が患者にとって最善のゴールを提示する。シナリオ症例では3日間で遷延性意識障害と判断、治療継続の選択肢なし! 」という投稿があります。
No.1443 - 2024/06/18(Tue) 13:53:20
延命治療を続けたら、生存患者の4割が6カ月後までにある程度の自律性を回復すると予測 / 守田憲二
 Journal of Neurotrauma誌に5月13日、マサチューセッツ総合病院の医師らによる論文
Recovery Potential in Patients Who Died After Withdrawal of Life-Sustaining Treatment: A TRACK-TBI Propensity Score Analysis
(仮訳:延命治療の中止後に死亡した患者の回復の可能性:TRACK-TBI傾向スコア分析)
が掲載されました。抄録は
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/neu.2024.0014
に公開されています。

 デザートニュースが伝えた記事のタイトルは
Study says 72 hours not long enough before removing life support
Brain injury patients seldom remain in vegetative state, research says. They die or recover to some degree
(研究によると、生命維持装置を外すまでに72時間は十分ではない 
脳損傷患者が植物状態のままであることはめったにない。死ぬか、ある程度回復する)
https://www.deseret.com/lifestyle/2024/05/24/pulling-plug-removing-life-support-study-says-slow-down/

 この記事の中で研究者のコメントとして以下が引用されています。
「生命維持装置を外した後に死亡した患者のかなりの割合が、生命維持装置を継続していたとしても、いずれにせよ死亡している可能性があることがわかりました(We found that a significant proportion of patients who died after life support was removed may have died anyway, even if their life support had been continued)」「しかし、注目に値する予想外の発見は、生命維持装置を外さなかった場合に生存したと推定される患者のうち、40%もの患者が、受傷後6カ月までにある程度の自律性を回復すると予測されたことです(But the remarkable and unexpected finding was that among patients who were estimated to have survived if life support was not withdrawn, as many as 40% were predicted to recover some level of independence by six months after injury)」

 今回は原文を読めていないため、執筆者が所属するMass General Brighamのニュースリリース
https://www.massgeneralbrigham.org/en/about/newsroom/press-releases/study-reveals-patients-with-brain-injuries-who-died-after-withdrawal-of-life-support-may-have-recovered
Study Reveals Patients with Brain Injuries Who Died After Withdrawal of Life Support May Have Recovered
(生命維持装置の離脱後に死亡した脳損傷患者が回復した可能性があることを研究で明らかにした)
から概要を紹介します。

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 米国の18の外傷センターの集中治療室に入院している1,392人の外傷性脳損傷患者について7.5年間にわたって収集されたデータを使用して、人口統計、社会経済的要因、傷害特性などの特性に基づいて、延命治療の中止の可能性を計算する数学的モデルを作成した。次に、延命治療を中止しなかった個人(WLST-)と、モデルスコアが類似しているが延命治療を中止した個人(WLST+)をペアにした。
 ペアの片方である延命治療を中止しなかった群の追跡調査に基づくと、延命治療中止群のかなりの割合の推定6カ月アウトカムは、死亡または日常生活における少なくともある程度の自立の回復だった。生存者のうち、延命治療非中止群の40%以上が少なくともある程度の独立性を回復した。さらに、研究チームは、植物状態のままでいることは、受傷後6か月までに起こりそうにない結果であることを発見した。重要なことは、この研究で死亡した患者は誰一人として脳死と宣告されていなかったため、この結果は脳死には当てはまらない。
 著者らは、この知見は、臨床医が患者の成績が悪いと想定するという、自己実現的な予言が起こっていることを示唆している。この仮定は生命維持装置の離脱につながり、その結果、転帰不良率が増加し、生命維持装置を中止する決定がさらに増える。
 責任著者であるYelena Bodien博士は、「我々の研究結果は、生命維持装置の離脱に関する早期決定を下すためのより慎重なアプローチを支持する。外傷性脳損傷は慢性疾患であり、患者の転帰を理解するには長期的なフォローアップが必要です。生命維持に関する決定を遅らせることは、状態が改善する可能性のある患者をより適切に特定するために正当化されるかもしれない」と述べた。
No.1441 - 2024/06/01(Sat) 15:46:49
Re: 延命治療を続けたら、生存患者の4割が6カ月後までにある程度の自律性を回復すると予測 / 桑山
 外傷性の患者の場合は、比較的若年性が想定されるのですが、アメリカでは命があっさりと捨てられているような印象を受けてしまいます。日本でもACPで高齢者は入院や入所するときに、延命治療をしない同意書のようなものを書かかないと入院・入所が出来ないようなことを聞きます。
 私たちの知らない所で、比較的若い世代も同じように捨てられているようなことはあるのでしょうか?
No.1442 - 2024/06/07(Fri) 09:30:26
NHKラジオで「交通事故後遺症 専門療護センターの取り組み」 / 守田憲二
 5月28日の午後7時40分頃からNHKラジオ第一放送の番組、Nらじセレクトで「交通事故後遺症 専門療護センターの取り組み」が約12分間放送されました。

 自動車事故対策機構 岡山療護センターでは過去30年間に503人が入院し、おおむね3年後に36%にあたる185人が意思疎通の能力(会話ではなくアイコンタクトや手の動きによる意思疎通を含む)や運動能力を回復して、入院の必要が無くなり退院した。多くの人が障害者支援施設などに移ったこと。兵庫県下の56歳女性が自宅退院した症例、そして他に宮城県、千葉県、岐阜県にも同種施設があることを紹介していました。


 NHKラジオの聞き逃しhttps://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=4774_22_4001574
で6月4日(火)の午後7時55分まで聞くことができます。放送開始から約10分後からの部分です。
No.1440 - 2024/05/28(Tue) 20:46:50
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