Journal of Neurotrauma誌に5月13日、マサチューセッツ総合病院の医師らによる論文 Recovery Potential in Patients Who Died After Withdrawal of Life-Sustaining Treatment: A TRACK-TBI Propensity Score Analysis (仮訳:延命治療の中止後に死亡した患者の回復の可能性:TRACK-TBI傾向スコア分析) が掲載されました。抄録は https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/neu.2024.0014 に公開されています。
デザートニュースが伝えた記事のタイトルは Study says 72 hours not long enough before removing life support Brain injury patients seldom remain in vegetative state, research says. They die or recover to some degree (研究によると、生命維持装置を外すまでに72時間は十分ではない 脳損傷患者が植物状態のままであることはめったにない。死ぬか、ある程度回復する) https://www.deseret.com/lifestyle/2024/05/24/pulling-plug-removing-life-support-study-says-slow-down/
この記事の中で研究者のコメントとして以下が引用されています。 「生命維持装置を外した後に死亡した患者のかなりの割合が、生命維持装置を継続していたとしても、いずれにせよ死亡している可能性があることがわかりました(We found that a significant proportion of patients who died after life support was removed may have died anyway, even if their life support had been continued)」「しかし、注目に値する予想外の発見は、生命維持装置を外さなかった場合に生存したと推定される患者のうち、40%もの患者が、受傷後6カ月までにある程度の自律性を回復すると予測されたことです(But the remarkable and unexpected finding was that among patients who were estimated to have survived if life support was not withdrawn, as many as 40% were predicted to recover some level of independence by six months after injury)」
今回は原文を読めていないため、執筆者が所属するMass General Brighamのニュースリリース https://www.massgeneralbrigham.org/en/about/newsroom/press-releases/study-reveals-patients-with-brain-injuries-who-died-after-withdrawal-of-life-support-may-have-recovered Study Reveals Patients with Brain Injuries Who Died After Withdrawal of Life Support May Have Recovered (生命維持装置の離脱後に死亡した脳損傷患者が回復した可能性があることを研究で明らかにした) から概要を紹介します。
・・・・・・・・・・・・ 米国の18の外傷センターの集中治療室に入院している1,392人の外傷性脳損傷患者について7.5年間にわたって収集されたデータを使用して、人口統計、社会経済的要因、傷害特性などの特性に基づいて、延命治療の中止の可能性を計算する数学的モデルを作成した。次に、延命治療を中止しなかった個人(WLST-)と、モデルスコアが類似しているが延命治療を中止した個人(WLST+)をペアにした。 ペアの片方である延命治療を中止しなかった群の追跡調査に基づくと、延命治療中止群のかなりの割合の推定6カ月アウトカムは、死亡または日常生活における少なくともある程度の自立の回復だった。生存者のうち、延命治療非中止群の40%以上が少なくともある程度の独立性を回復した。さらに、研究チームは、植物状態のままでいることは、受傷後6か月までに起こりそうにない結果であることを発見した。重要なことは、この研究で死亡した患者は誰一人として脳死と宣告されていなかったため、この結果は脳死には当てはまらない。 著者らは、この知見は、臨床医が患者の成績が悪いと想定するという、自己実現的な予言が起こっていることを示唆している。この仮定は生命維持装置の離脱につながり、その結果、転帰不良率が増加し、生命維持装置を中止する決定がさらに増える。 責任著者であるYelena Bodien博士は、「我々の研究結果は、生命維持装置の離脱に関する早期決定を下すためのより慎重なアプローチを支持する。外傷性脳損傷は慢性疾患であり、患者の転帰を理解するには長期的なフォローアップが必要です。生命維持に関する決定を遅らせることは、状態が改善する可能性のある患者をより適切に特定するために正当化されるかもしれない」と述べた。 |
No.1441 - 2024/06/01(Sat) 15:46:49
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