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脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない、353人の意識障害患者で研究 / 守田憲二
 8月15日付のザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン、391巻7号に、イェレナG. ボディアン博士(スポールディングリハビリテーション病院)ほかによる“Cognitive Motor Dissociation in Disorders of Consciousness(意識障害における認知と運動の解離)”が掲載されました。
 日本語抄録はhttps://www.nejm.jp/abstract/vol391.p598

 複数国の6施設における意識障害患者353例を対象とした研究です。患者年齢の中央値は 37.9 歳、脳損傷から今回の評価までの期間の中央値は 7.9 ヵ月。

 8月14日付でNATUREは、この論文の紹介記事を
https://www.nature.com/articles/d41586-024-02614-z
に掲載しています。
 そのタイトルはOne-quarter of unresponsive people with brain injuries are conscious
More people than we thought who are in comas or similar states can hear what is happening around them, a study shows.
(脳損傷で反応のない人の4分の1は意識があります。昏睡状態や同様の状態にある人は、私たちが思っていたよりも多くの人が、自分の周りで何が起こっているのかを聞くことができることが、ある研究で明らかになりました)
 
 引用元の論文の英文抄録
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2400645
はApproximately one in four participants without an observable response to commands performed a cognitive task on fMRI or EEG
(指示に対して観察可能な反応がなかった参加者では,約 4 例に 1 例が fMRI または脳波上で認知課題を遂行した)
と書いているので、私はNATURE誌のタイトルは正しくは「脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない」とすべきではないかと思いました。
No.1444 - 2024/08/17(Sat) 09:26:57
Re: 脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない、353人の意識障害患者で研究 NEW / 守田憲二
桑山さんが書かれた「fMRIやEEGについては、(中略)こういった考え方が主流になっている訳ではないのでしょうね」についてですが、私は欧米における意識障害患者への治療の傾向については、継続的に文献を読んでいないため、このご質問にお答えする能力がありません。
No.1446 - 2024/08/29(Thu) 09:23:36
Re: 脳損傷で反応のない人の4分の1は、認知能力はあるが体を動かして反応できない、353人の意識障害患者で研究 / 桑山
 いつも情報ありがとうございます。fMRIやEEGについては、オーウェンの「生存する意識」でも紹介されていますが、まだまだこういった考え方が主流になっている訳ではないのでしょうね。
No.1445 - 2024/08/24(Sat) 11:06:32
救急・集中治療終末期ガイドライン改訂作業が進行中、「期限付きで救命治療を開始、治療終了する場合は緩和医療が必要、だから日本緩和医療学会が加わる」 / 守田憲二
日本医事新報が3月から毎月上旬に、伊藤 香(帝京大学外科学講座Acute Care Surgery部門病院准教授、同部門長)による「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」の改訂作業に関する文章を掲載しています。点線以下に、各回記事が掲載されたURL、記事のタイトル、記事の抜粋を貼り付けます。


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https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=23842
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?@─キックオフ」伊藤 香
No.5212 (2024年03月16日発行) P.60

・2014年に日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会の「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン〜3学会からの提言〜」が発表されてから10年が経過し、現在、当ガイドラインの改訂作業に取り組んでいる。
・当ガイドラインは、「終末期の例」として4つのパターンを例示し、適切な意思決定のプロセスを経れば、延命治療の終了も問題ないと明記している。
・今回、当ガイドラインの改訂に着手するにあたり、集中治療終末期患者によりよい医療を提供できるように、終末期の定義を見直し、適切な意思決定支援の方法を改めて強調し、緩和ケアに関するガイダンスを明記することを改定のポイントとし、従来の3学会に日本緩和医療学会を加えた、「4学会のガイドライン」に発展させることを目標としている。


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https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=23958
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?A─『終末期』の定義」伊藤 香
No.5215 (2024年04月06日発行) P.61

・前稿で宣伝させて頂いた通り、3月16日に第51回日本集中治療医学会学術集会のシンポジウム15「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン〜3学会からの提言〜改定のポイント」にて座長を務めてきた。当シンポジウムでは、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会、日本緩和医療学会のガイドライン改訂コアメンバーと終末期の定義に関して議論した。
・「終末期の定義の案」を出し合った。そこで最も多かった意見は、「終末期を定義しない(できない)」だった。このガイドラインが果たすべき最大の役割は、それが患者にとって最善であると判断された場合、延命治療の差し控え(withhold)/終了(withdraw)を医療者と患者・家族双方にとって安全に行うことができるようになるための指針となることである。
・人の生き方の「多様性」を尊重するようになった現代において、集中治療室での終末期が個々の患者の価値観を反映した多様なものとなることは自然な流れであるように思う。

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https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=24191
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?B─Shared decision makingのための技術」伊藤 香
No.5220 (2024年05月11日発行) P.62

・Shared decision making(SDM)とは、患者・家族とのコミュニケーションを通じて、患者の価値観や選好を医療上の意思決定に取り込んで、治療のゴールを決めていく過程のことである。
・今回のガイドライン改訂のハイライトの1つは、「救急・集中治療医療従事者に対するSDMのためのコミュニケーションスキルトレーニングの推奨」を盛り込むことである。
・米国では、医療従事者向けのコミュニケーションスキルトレーニングがいくつか存在する。その1つである“Vital TalkTM”は、もともと腫瘍内科医が患者にがんの告知などの「悪い知らせ」を伝えるときの会話のトレーニング法として開発されたものだ。筆者は2019年以来、“Vital TalkTM”の日本語版である「かんわとーく powered by Vital TalkTM」の開発に携わってきた。

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https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=24309
【識者の眼】「救急・集中治療終末期ガイドライン改訂?C─期限付きの根治的治療(TLT)」伊藤 香
No.5223 (2024年06月01日発行) P.64

・よくあるのは、医療従事者側からみると患者にとって無益であると懸念される治療の継続を家族らが望んでいるような場合である。
・救急・集中治療の現場では、しばしば、事前意思表示やadvance care planning(ACP)の不明な重症患者を目の前にした医師が、「この患者さんに挿管したら、抜管できなくなり(集中治療をやめることができなくなり)、無益な延命治療を続けることになってしまうのではないか」と葛藤することがある。このことが、医師が救命可能な患者の治療開始を差し控える原因になるのではないか、と懸念する声が以前からあった。そのような場面では、TLT(期限付きの根治的治療:time limited trial)の考え方は役に立つ。予後や患者の治療の選好が不確実な場合は、根治的治療を開始し、ひとまず命をつなぐことができたらその先のことを考えればよいのである。
・今回のガイドライン改訂では、TLTの明記もハイライトの1つである。ただし、ここで問題なのは、適切な医学的判断とSDMのもと、TLTが試行され、根治的治療の終了(withdraw)が選択された後に必要となる緩和ケアが、日本の集中治療の医療現場で十分に浸透しているとは言いがたい点である。今回のガイドライン改訂が、従来の3学会に日本緩和医療学会が加わり「4学会のガイドライン」となった経緯はそこにある。


・・・・・・・・・・・
 以上で日本医事新報記事の紹介を終わります。

 なお、3番目の記事のなかでバイタルトークに言及されています。この掲示版では、5つ下に「バイタルトーク=医師が患者にとって最善のゴールを提示する。シナリオ症例では3日間で遷延性意識障害と判断、治療継続の選択肢なし! 」という投稿があります。
No.1443 - 2024/06/18(Tue) 13:53:20
延命治療を続けたら、生存患者の4割が6カ月後までにある程度の自律性を回復すると予測 / 守田憲二
 Journal of Neurotrauma誌に5月13日、マサチューセッツ総合病院の医師らによる論文
Recovery Potential in Patients Who Died After Withdrawal of Life-Sustaining Treatment: A TRACK-TBI Propensity Score Analysis
(仮訳:延命治療の中止後に死亡した患者の回復の可能性:TRACK-TBI傾向スコア分析)
が掲載されました。抄録は
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/neu.2024.0014
に公開されています。

 デザートニュースが伝えた記事のタイトルは
Study says 72 hours not long enough before removing life support
Brain injury patients seldom remain in vegetative state, research says. They die or recover to some degree
(研究によると、生命維持装置を外すまでに72時間は十分ではない 
脳損傷患者が植物状態のままであることはめったにない。死ぬか、ある程度回復する)
https://www.deseret.com/lifestyle/2024/05/24/pulling-plug-removing-life-support-study-says-slow-down/

 この記事の中で研究者のコメントとして以下が引用されています。
「生命維持装置を外した後に死亡した患者のかなりの割合が、生命維持装置を継続していたとしても、いずれにせよ死亡している可能性があることがわかりました(We found that a significant proportion of patients who died after life support was removed may have died anyway, even if their life support had been continued)」「しかし、注目に値する予想外の発見は、生命維持装置を外さなかった場合に生存したと推定される患者のうち、40%もの患者が、受傷後6カ月までにある程度の自律性を回復すると予測されたことです(But the remarkable and unexpected finding was that among patients who were estimated to have survived if life support was not withdrawn, as many as 40% were predicted to recover some level of independence by six months after injury)」

 今回は原文を読めていないため、執筆者が所属するMass General Brighamのニュースリリース
https://www.massgeneralbrigham.org/en/about/newsroom/press-releases/study-reveals-patients-with-brain-injuries-who-died-after-withdrawal-of-life-support-may-have-recovered
Study Reveals Patients with Brain Injuries Who Died After Withdrawal of Life Support May Have Recovered
(生命維持装置の離脱後に死亡した脳損傷患者が回復した可能性があることを研究で明らかにした)
から概要を紹介します。

・・・・・・・・・・・・
 米国の18の外傷センターの集中治療室に入院している1,392人の外傷性脳損傷患者について7.5年間にわたって収集されたデータを使用して、人口統計、社会経済的要因、傷害特性などの特性に基づいて、延命治療の中止の可能性を計算する数学的モデルを作成した。次に、延命治療を中止しなかった個人(WLST-)と、モデルスコアが類似しているが延命治療を中止した個人(WLST+)をペアにした。
 ペアの片方である延命治療を中止しなかった群の追跡調査に基づくと、延命治療中止群のかなりの割合の推定6カ月アウトカムは、死亡または日常生活における少なくともある程度の自立の回復だった。生存者のうち、延命治療非中止群の40%以上が少なくともある程度の独立性を回復した。さらに、研究チームは、植物状態のままでいることは、受傷後6か月までに起こりそうにない結果であることを発見した。重要なことは、この研究で死亡した患者は誰一人として脳死と宣告されていなかったため、この結果は脳死には当てはまらない。
 著者らは、この知見は、臨床医が患者の成績が悪いと想定するという、自己実現的な予言が起こっていることを示唆している。この仮定は生命維持装置の離脱につながり、その結果、転帰不良率が増加し、生命維持装置を中止する決定がさらに増える。
 責任著者であるYelena Bodien博士は、「我々の研究結果は、生命維持装置の離脱に関する早期決定を下すためのより慎重なアプローチを支持する。外傷性脳損傷は慢性疾患であり、患者の転帰を理解するには長期的なフォローアップが必要です。生命維持に関する決定を遅らせることは、状態が改善する可能性のある患者をより適切に特定するために正当化されるかもしれない」と述べた。
No.1441 - 2024/06/01(Sat) 15:46:49
Re: 延命治療を続けたら、生存患者の4割が6カ月後までにある程度の自律性を回復すると予測 / 桑山
 外傷性の患者の場合は、比較的若年性が想定されるのですが、アメリカでは命があっさりと捨てられているような印象を受けてしまいます。日本でもACPで高齢者は入院や入所するときに、延命治療をしない同意書のようなものを書かかないと入院・入所が出来ないようなことを聞きます。
 私たちの知らない所で、比較的若い世代も同じように捨てられているようなことはあるのでしょうか?
No.1442 - 2024/06/07(Fri) 09:30:26
NHKラジオで「交通事故後遺症 専門療護センターの取り組み」 / 守田憲二
 5月28日の午後7時40分頃からNHKラジオ第一放送の番組、Nらじセレクトで「交通事故後遺症 専門療護センターの取り組み」が約12分間放送されました。

 自動車事故対策機構 岡山療護センターでは過去30年間に503人が入院し、おおむね3年後に36%にあたる185人が意思疎通の能力(会話ではなくアイコンタクトや手の動きによる意思疎通を含む)や運動能力を回復して、入院の必要が無くなり退院した。多くの人が障害者支援施設などに移ったこと。兵庫県下の56歳女性が自宅退院した症例、そして他に宮城県、千葉県、岐阜県にも同種施設があることを紹介していました。


 NHKラジオの聞き逃しhttps://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=4774_22_4001574
で6月4日(火)の午後7時55分まで聞くことができます。放送開始から約10分後からの部分です。
No.1440 - 2024/05/28(Tue) 20:46:50
死の前、「意識がはっきりする時間」の謎にせまる・・・脳フィルター理論が意識障害治療にかかわる可能性 / 守田憲二
 KADOKAWAから3月21日にアレクサンダー・バティアーニ著
“死の前、「意識がはっきりする時間」の謎にせまる 「終末期明晰」から読み解く生と死とそのはざま“
が発行されています。出版社サイト内
https://www.kadokawa.co.jp/product/322310000829
では試し読みもできます。

 Terminal Lucidityについて、本書では「終末期明晰」と訳していますが、日本語の定訳がなく、他の訳語は「終末期寛解」「終末期覚醒」。
 この本で私が注目したのは、終末期明晰が発生する仕組みについての仮説「フィルター理論」、認知症治療にかかわる可能性、そして生まれながら言語を話せるようにならなかったはずの人が終末期に独り言を喋ったというエピソードです。


・フイルター理論は、人は潜在的には多くのものを意識できるが、普段は生存するために脳および神経系が減量バルブとして遮断・抑制している。その抑制が深い瞑想や祈り、生命の危機時に抑制作用が低下する、という仮説(p323〜p327)。

・「ベセスダの国立老化研究所(NIA)が、その後、終末期/逆説的明晰の研究に数百万ドルというたいそう気前の良い資金獲得機会を提供した理由のひとつが、この認知症治療にかかわる可能性だった」(p236)

・アンネ・カタリーナ・エーマー、通称ケーテの事例(p89〜p92)
 1895年に生まれ、生後6週目からテンカンの発作で言葉はついに話せるようにならなかったが、1922年に亡くなった時に辞世の歌を歌ったという事例。「いずこにありや、魂のふるさとは。いずこにありや、魂の安らぎは。安らぎ、安らぎ、天のやすらぎよ!」と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
 以上で単行本に書かれていたことの紹介は終わり、以下は守田の注記および感想です。

注記
・医学中央雑誌で終末期明晰は、「お迎え(現象)」「お迎え(体験)」で検索すると、2002年以降に19件のデータあり。

・日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が2018年に行った
「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究4 (J-HOPE4)」
https://www.hospat.org/practice_substance4-top.html
のなかに
46.緩和ケア病棟で終末期がん患者にみられる
  「故人やあの世をみた体験」などの終末期体験に関する研究
が掲載され、「死の直前に一時的に意識状態が清澄になるTerminal lucidityや,その場にいない家族などが死を感じとったりするTerminal coincidence について,共に10%の家族が体験していることが本調査で明らかとなった」としています。


感想
・脳が外界からの大量の情報に対する減量バルブ、フィルターとして機能しているという側面は、視力を失った人が見えるようになる手術を受けた後に眩しくて眼で外界を認識できなかったという経験談、意識を回復する過程で混乱した状況を書いた闘病記(新井 智:魂のリハビリテーション 植物人間からの生還、筑摩書房、1984年)、そして意識障害患者の中に中枢神経抑制剤が投与され効いている時間だけ覚醒する、という現象を共通して説明しているようで興味深い。

・生まれながら言葉を話せるようにならなかったと見込まれるのに終末期に話したというケーテの事例は、類似のことは國學院大学・柴田保之研究室による介助つきコミュニケーションでもあったように思います。



以上
No.1438 - 2024/04/21(Sun) 15:08:54
Re: 死の前、「意識がはっきりする時間」の謎にせまる・・・脳フィルター理論が意識障害治療にかかわる可能性 / 桑山
 守田さん、いつも情報提供ありがとうございます。大阪府立図書館に書籍があったので、早速予約の手続きをとりました。
 全員とは言いませんが、一見、意識がないように見えて、実は意識があるという現象は、私たちはよく感じているところです。
No.1439 - 2024/04/22(Mon) 17:17:33
令和6年3月のアンケートについて / 牛島 健吉 [関東]
電子メールでも返答は可と有りますが、
その方法は?
No.1436 - 2024/03/29(Fri) 17:31:29
Re: 令和6年3月のアンケートについて / 桑山
 3月24日(日)の全国会ML:3649で福田さんから送信されていますが、どうでしょうか?
No.1437 - 2024/03/30(Sat) 14:44:29
バイタルトーク=医師が患者にとって最善のゴールを提示する。シナリオ症例では3日間で遷延性意識障害と判断、治療継続の選択肢なし! / 守田憲二
 医療科学研究所が編集・発行する「医療と社会」33巻1号が2023年5月に発行され、J−STAGE内では7月6日から
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/iken/33/1/_contents/-char/ja で公開されています。

 私が注目したのはp53〜p66に掲載されている「救急医療における対応」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/33/1/33_33-53/_pdf/-char/ja
です。著者は帝京大学医学部付属病院高度救命救急センターの伊藤 香。

 米国では20年前から、集中治療従事者が患者家族に「悪い知らせ」を伝える際のコミュニケーションスキルトレーニング法「Vital Talk」が行われており、伊藤らはその日本語版を開発したとのこと。

・シナリオ症例では、路上で心肺停止した80歳代男性について「集中治療室に入室し、人工呼吸器管理を、体温管理療法施行するも、72時間後になっても意識は回復しなかった。頭部CTと脳波検査し施行したところ、低酸素性脳症による遷延性意識障害と判断された」「入院1週間後、患者の循環動態は安定していたが、意識は戻らず、呼吸は人工呼吸器に依存していた。脳波と脳CTを再検したが、脳浮腫は進行しており、神経学的予後は極めて不良であると考えられた。担当医は家族に病状を説明し、今後の治療方針について話し合うこととなった」としている。

・「Vital Talk」のスキルを用いた会話例の最後に、示される治療方針は「治療の差し控え」「抜管以外の治療中止」「抜管を含めた治療中止」の3つのみ。「治療を継続する」は書かれていない。

p65のまとめは以下
「救急・集中治療医に対するVital Talkのようなコミュニケーションスキルトレーニング手法は、患者の価値観を重視し、医師が患者にとって最善のゴールを提示する手法(physician as a perfect agent)であり、患者に情報を与えて選択させるだけの“informed consent”とは一線を画する。心の患者中心の医療を目指した“shared decision making”の手法であると言える。実際の患者や家族との対話では、常に患者の価値観を引き出し、医療のプロとして、患者の価値観を最も反映させたゴール設定をすることに心がけるべきである。超高齢化社会を迎える日本の救急・集中治療の現場では、コミュニケーションスキルトレーニングを受けた医療者が院給仕でもACPを行うことによって、本当は患者も家族も望んでいない無益な延命治療を避けられる可能性がある」

・・・・・・・・・・・・・
以上で伊藤論文からの引用を終わり、以下は守田の感想です。

・米国で超重症患者に対する医療現場を取材した記事の中で、「医師から患者家族への説明は、日本とは比べ物にならないほど時間をかけて行われている。しかし医師が治療を止める方向で患者家族に対応していることが多かった」という趣旨の記事を読んだ記憶があります。このような治療打ち切りを実現しようとするコミュニケーションの背景には、上記と類似したスキルトレーニングがあったのでしょう。

・話し方、相手の応答から相手の理解度を図るなど、コミュニケーションスキルそのものは人間心理の理解にもとづく有用なスキルのように思います。しかし、医師が患者や患者家族を心理的に操作する用途で用いると悪用になる。マニュアル対応となり気持ち悪い。

・YouTube動画「【新型コロナウイルス vol.4】電話越しに最後の別れを述べる」
&t=0s
は医師が患者家族に最後の別れの言葉のアドバイスまで行っている。

・2022年に医学書院から単行本「緊急ACP(キンキュウエーシーピー) VitalTalkに学ぶ悪い知らせの伝え方,大切なことの決め」も発行された。

・日本脳神経外科学会は遷延性意識障害の定義(1976年)は、意識障害が3カ月以上の持続としている。シナリオ症例は「1週間後も脳浮腫が進行」という仮定のため重症例という設定であることはわかるが、治療打ち切りに誘導したいがための説明との疑いを生じる。


以上
No.1433 - 2023/10/27(Fri) 13:40:28
Re: バイタルトーク=医師が患者にとって最善のゴールを提示する。シナリオ症例では3日間で遷延性意識障害と判断、治療継続の選択肢なし! / 桑山
 紹介頂いた文献を読みました。高齢者医療で行われていると推定される事柄をマニュアル化したような形で、何ともやりきれない思いがします。
 あまり長くは書きませんが、発症から3日目で「判断」を行い、「スムーズに」治療を打ち切りたいという意図を感じてしまいます。
No.1434 - 2023/10/30(Mon) 09:21:26
「臓器移植の普及啓発・ドナー候補者家族への説明」の問題点 / 守田憲二
 臓器移植法を問い直す市民ネットワークは9月9日、ブログに
「臓器移植の普及啓発・ドナー候補者家族への説明」の問題点https://blog.goo.ne.jp/abdnet/e/c9caa150971179b36705a985bf649626
を掲載しました。
 法的脳死判定・臓器移植が1000件に届こうとしています。「脳死下及び心停止下での臓器摘出・臓器移植」の問題点を考えていただくために、特に事実の隠蔽や誤りに関する資料と共に提示しました。8つの段落で構成されており、それぞれの見出しは以下です。


「脳死となったら数日以内に心停止する」という説明は事実ではありません!
 脳死状態での長期生存例が数多く報告されています。

治療撤退で心臓死を早める、臓器提供目的で造られる「脳死」・意識障害患者

「救命努力を尽くしても脳死になった患者が臓器提供者になる」という前提の虚構

臓器提供の選択肢を提示する患者家族への説明文書が非公開にされていること

71分の1の確率で死亡予測を誤る、臓器提供の危険性が知らされていないこと

臓器摘出時にドナーに麻酔がかけられる場合もあることが知らされていないこと

「脳死下臓器提供とは別に、心臓が停止した死後の臓器提供」があるという虚構

臓器提供者の死亡を前提とする臓器移植を禁止すべき理由
No.1432 - 2023/09/09(Sat) 04:57:38
生命維持終了が検討された重症患者2例、抗てんかん薬を投与下に刺激、MRIで観察すると脳機能あり、治療継続し1例はコミュニケーション可能、1例は社会復帰 / 守田憲二
 2021年4月に米国・アリゾナ州でサンチェスさん家族は車同士の衝突事故に遭い、イライジャ・サンチェスさん(6歳)が昏睡状態となり、フェニックス小児病院の医師は生命維持の終了を検討したものの、その時は両親が入院中で生命維持の終了は保留。その後、両親に生命維持の終了・臓器提供の選択肢が提示されたものの、抗てんかん薬投与後に音声刺激を与えながらMRIで評価するなどにより脳機能がわかり、それにより両親は生命維持の終了を拒否した。イライジャ・サンチェスさんは現在、四肢麻痺はあるいが口頭でコミュニケーションをとることができ、通学しているとのこと。

 このケースは受傷時のニュース、募金募集、学会における家族インタビューYouTube動画、医学文献としての症例報告があります。

・受傷時のニュースは
2021年4月10日付のKAEFニュース A Major Accident In Dewey/Humboldt Easter Sunday Leaves A Young Boy With Life-Threatening Injures  https://gcmaz.com/kaff-news/kaff_news/a-major-accident-in-dewey-humboldt-sunday-leaves-a-young-boy-with-life-threatening-injures-2/?fbclid=IwAR29Kz8q-XmyNXNRAPiyQKlwqBZjKqX1FiB09qei31do-lVhMO2WJTiVt1M


募金募集はHelp Support Medical Expenses for Sanchez Family
https://www.gofundme.com/f/help-support-medical-expenses-for-sanchez-family


学会における家族インタビューYouTube動画 World Coma Day 2022 Patient Stories: Road to Recovery



医学文献としての症例報告「Frontiers in neurology」誌 2023年8月掲載
Treatable brain network biomarkers in children in coma using task and resting-state functional MRI: a case series
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fneur.2023.1227195/full#B2

 なお「Frontiers in neurology」には同様に医師が生命維持終了を検討したが回復した11歳男児例(後遺症はあるが日常生活は自立)とともに、回復せずに脳死に進行した2か月男児が掲載されています。



以上
No.1431 - 2023/09/04(Mon) 15:08:49
総会お礼 / 桑山
 6月4日に行われた総会に現地参加いただいた方、zoomにて参加いただいた方、YouTube配信をご覧になった方、どうもありがとうございました。
 翌日に厚労省との意見交換会も7名で行ってきました。2日間の詳細はまた次回の会報にて報告いたします。
No.1429 - 2023/06/06(Tue) 08:56:37
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