2024年に開催された第61回日本リハビリテーション医学会学術集会の抄録号と思いますが、「The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine」61巻,Supplement号がJ-STAGE内 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrmc/61/Supplement/_contents/-char/ja で公開され、以下の3点の遷延性意識障害からの回復例、リハビリテーション例が掲載されています。(抄録のため掲載ページがP・・・ではなくS・・・と書かれています)
掲載されているPDFファイルそのもののURLは https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/61/Supplement/61_61.S977/_pdf/-char/ja
S1193
遷延性意識障害に対して高頻度rTMSを施行し意思疎通が可能となった一例
1 河野臨床医学研究所品川リハビリテーション病院リハビリテーション課, 2 河野臨床医学研究所品川リハビリテーション病院医局 朴木 裕樹1,吉田 臨2
【はじめに】遷延性意識障害における非侵襲的脳刺激療法の報告が近年増加している。最小意識状態(MCS)患者において背外側前頭前野への高頻度の反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は有効と報告がある一方で、無反応覚醒症候群(UWS)患者の改善した報告は少ない。今回、脳幹梗塞および右被殻出血術後の遷延性意識障害患者に対して、背外側前頭前野に高頻度のrTMSを行い、意思疎通が可能となった一例を経験したので報告する。
【症例】40歳代女性、発症前ADL自立、会社員、脳幹梗塞および右被殻出血にて脳室穿破の診断、緊急開頭血種除去術を施行。
【経過】第41病日に回復期病院転院、入院時Glasgow Coma Scale(GCS)E1VTM1、CRS-R:0、FOUR score:E0M0B1R4、四肢体幹の筋緊張弛緩、FIM18点であった。 第48病日電気刺激による感覚入力を開始、第51病日頸椎カラー作製し立位練習開始するも変化なし、第121病日目に高頻度rTMSを左背外側前頭前野に開始、CRS-R:1、FOUR score:E0M1B1R4、第 183 病日目に高頻度rTMS再度開始、GCS E3VTM6、CRS-R:4、FOUR score:E3M4B1R4 となり、FIM18点のままだが右手でスイッチを使用して簡単なYes/Noが可能となった。
【考察】感覚刺激入力や立位練習の効果が乏しく変化はなかったが、背外側前頭前野に対し高頻度rTMSを開始後数日で変化が認められた。しかし、1クール終了後はわずかな変化のみであった。再度rTMSを実施後、簡単な意思疎通が可能となった。UWS患者に対する高頻度rTMSの効果が刺激時間や頻度だけでなく、複数クール実施することで改善に寄与した可能性がある。
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S1212
慢性期病院からの転院後積極的なリハビリテーション治療により自宅退院に至った症例
1 日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科, 2 竹川病院リハビリテーション科, 3 日本大学医学部リハビリテーション医学分野 土屋 航1,安達 明完1,鳥沢 伸大1,藤澤 知弘 2,新見 昌央1,3
【背景】 遷延性意識障害からの回復には数カ月の期間を要すると報告されている.本邦では意識障害が遷延している患者はケアのみで,リハビリテーション治療を受けられない病院へ転院することが多い.今回,転院後の継続した評価で意識障害の改善を認めた症例を発見し,積極的なリハビリテーション治療を行ったことで自宅退院に至ったため報告する.
【症例経過】 症例は右被殻出血を認め,開頭血腫除去術及び外減圧術が施行された40代男性である.day2にリハビリテーション科医師の指示の下,端座位訓練より早期離床を開始した.開始時Japan Coma Scale(JCS) ?V-200 であり基本動作は全介助を要した.気管切開を施行し人工呼吸器離脱後day16に一般病棟へ転棟した.その後も意識障害は遷延し,day81に慢性期病院へ転院となった.転院後,継続した評価により意識障害の改善を発見したためday170に当院へ再入院した.再入院時JCS?T-2で従命可能であったが,長期臥床による四肢の痙縮及び拘縮を認めたため,ボツリヌス療法を併用したリハビリテーション治療を実施した.当院での最終評価時はJCS?T-1であり従命や疎通が可能となった.しかし,拘縮は残存し,基本動作は全介助であった.day197に回復期病院へ転院後,day366に自宅に退院した.
【結語】 意識障害の回復過程を適切に評価しなければ,改善のタイミングを見落とし,必要なリハビリテーション治療が受けられず,拘縮などの二次的合併症が生じてしまう.これは,本来のパフォーマンスの発揮を妨げるだけでなく,ADLを大きく低下させる要因となりうる.
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S1233
遷延性意識障害を呈した若年びまん性脳損傷者に対して歩行練習を実施した回復期の理学療法経過
千里リハビリテーション病院 上野 奨太,吉尾 雅春
【症例紹介】 20 代男性。交通外傷によるびまん性脳損傷。5週目に当院回復期リハビリテーション病棟入院。意識はGCS:E3V1M1、Coma Recovery Scale-Revised(CRS-R):4 点で無反応覚醒症候群に属した。膝関節伸展可動域は左右とも-10度の制限を有した。
【経過】 介入は関節可動域練習に加え、入院1週目は立位までの離床、2〜13週目は両下肢に長下肢装具を装着した立位・後方介助歩行練習(60~100m/日)を聴覚刺激も加えて実施。4週目に追視がみられ、CRS-R:8点で最小意識状態へ移行するも、両膝関節屈筋の筋緊張はMAS:2と亢進した。しかし、歩行練習後は即時的にMAS:1に抑制し、膝関節の拘縮は進まず経過した。10週目に言語表出がみられ、対話が可能となり、CRS-R:20点で最小意識状態から脱却したが、記憶障害や易怒性を認めMMSE10点であった。NIHSS運動は左右上下肢全て3で、動作全てに介助を要した。13週目まで長下肢装具歩行練習を継続。徐々に易怒性は抑制され、運動に積極的になった。14週目から基本動作練習を中心に介入した。
【結果】 24 週目にGCS:E4V5M6、CRS-R:21点、MMSE23点、NIHSS運動(右/左)は上肢(1/2)、下肢(1/1) となった。食事・起居、病棟内車椅子移動は自立し、移乗軽介助、歩行中等度介助で障がい者病棟へ転院となった。
【考察】 意識障害例に対する歩行練習は単なる立位練習よりも荷重および筋紡錘の伸張刺激が強く、大脳皮質を賦活し、意識改善に寄与した可能性がある。また、痙縮抑制、拘縮予防に寄与し、意識改善後の動作能力向上に有益であった可能性がある。 |
No.1454 - 2025/12/04(Thu) 12:13:33
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